城下工業 SOUNDWARRIOR SW-HP300 ヘッドホンレビュー
城下工業の SOUNDWARRIOR というブランドで発売されている SW-HP300 を購入しましたのでレビューをいたします。最近の中華イヤホン・ヘッドホンのレビューからうって代わって、日本国内の企業による国内製造のヘッドホンです。
SW-HP300 は SOUNDWARRIOR ブランドではフラグシップに位置をしていると思われますが、金額も 2 万円前後と購入しやすく Amazon で手軽に購入ができます。音質や個性もよく、万人受けのする濃い音を出してくれます。オススメです。
エージングは 100 時間程度です。ただ購入当初からそこまで音の変化があったとは思えず、最初からパフォーマンスが出ていたかと思います。
音質
低音寄り。ローエンドから中音までよく出ており、耳の近くで音が出ていることもあり密度の高い鳴らしかたに聴こえる。
密度を上げた結果かと思うが、半開放型にしてはぬけが悪いようなやや篭り感が気になる。そのため全体的に膜がかかった感じを覚える。
ウォームであり、やや明るめな雰囲気である。やや余韻は長く、スピード感を求められるテンポの速い曲はやや苦手。
空間はやや狭く平面的で立体感はやや薄いが、音の配置は明瞭。音の分解もよく、金額から期待する能力はきちんと備えている。
アタック感はやや弱めであるが、音の輪郭は明瞭。ただ、どのような曲も明るめにしてしまうため、ハードな強い音を求めるロックなどには不向き。ある意味、コンセプトの一つでもある「長時間のリスニング」という観点からは理にかなっており、納得のある音づくりである。聴き疲れはしない。
いつもの。
ボーカルの位置は正面近く、艶がありブレスの生々しさやリップノイズまで鮮明に聴こえることながらノリもよい。ボーカルの存在感も適度で、大量の音に囲まれている状態であっても埋もれることはなく、位置もずっと明瞭である。
ベースも強く目立つというわけではないが、存在感はあり、厚みや量も豊かさを感じる程度には適当。エレクトリックベースとシンセベースも団子にならず表現しきっており、その上で音楽的な楽しさがある。シンバルなども、低音・中音にしたら存在感は薄まるものの、しっかりと鳴らしきっており、埋もれることはない。
音の分離や配置も楽しめるし、聴き疲れは全くせず厚みのある音を楽しめる。無理やりの難癖を付けるとしたら、もう少し広い空間の表現であるとよりマッチしたというところか。
Amazon の SW-HP300 の販促ページには「ジャズ、クラシック向け」と買いてあったので、届いたらすぐに聴こうと思っていた Ibrahim Maalouf について。実際に購入当初すぐに聴いたが、トランペットの表現がよく「当たり」であることを確信した一曲でもある。
イントロのギターの存在感から、トランペットの鮮烈で厚みのあり、きちんと強弱のある表現力の高さがよい。パッカーションの細かい音もつぶさに拾えており、ほどよいアタック感と曲調にあったスピード感を楽しめる。
まさにマッチする。
鮮烈なドラムからパッカーションもつぶさに捉え、鮮やかで厚みのある金管楽器、エレキベースと Moog も悪目立ちすることなく存在感ばっちり。中盤からのシンセリードの余韻や鮮かさも文句の付けどころがない。
後半の金管楽器が加わった高速パートももたつくことなく鳴らしきっている。会場の広さという立体感は表現できていないものの、密度の濃い中で粗なく分離ができているため、音を探すのが楽しい。是非、動画を大画面で観ながら聴きたい。
やはり音が柔らかくなり、曲調やギターのエッジをだいぶ緩和してしまう。不慣れ。
元々のミックスもセンターに寄って密度を上げているが、それをきちんと音の分離はできているのは素性が良い。
ディストーションの効いたシンセもそれなりには表現できている。音の輪郭もだいぶ丸められており、聴きやすく厚みは感じるものの、だいぶ明るめに表現してしまっているのが気になる。
低音
量はやや多めであるものの、明瞭。アタック感は弱めで、やや角の丸まった輪郭であり柔らかめ。他の音域とのバランスもよく、悪目立ちはしない。
50 hz 以下もそれなりに出ており、よく伸びていると感じる。主張はそれなりにあり、全体的に厚みを感じる音つくりの土台となっている。ただ、やはりタイトでアタック感を求められる曲にはマッチはせず、速度のあるバスドラのような音は苦手とする。
低音から中音にかけて、一部の帯域で量が少々多いように感じ、曲によっては全体的に篭り感を感じる場合もある。
ベースやドラムはファット。明瞭ながらノリよく楽しめる。
中音
明瞭。
繊細さもありながら、厚みのある音となっており、音の輪郭も分かる。こちらもアタック感はやや弱めで柔らかめの輪郭である。
ギターや弦楽器は繊細ながら厚みはあるので楽しめる一方、もう少しエッジが効いていると良いかなと思う。また、単体だと篭り感は気になるときがある。
ボーカルは得意。どのような曲でも埋もれることもなく、かつファットで生々しさを感じる魅力を出してくれる。
金管楽器も見事。ファットで鮮やか。厚みもあり、低音にかけての豊かであるが締まりのある音を楽しめる。
高温
明瞭で、低音や中音に比較するとやや落ちついた印象を受ける。自然に鳴らしているように感じる。
不快となるような音域は抑えられており、必要以上の音は出されていないように思う。少々、抑えられているようにも聴こえ、きらびやかさとは離れた音となっている。
余韻もさらっとしており、しつこさはない。
作りと装着感
外観はかなり無骨でプラスチック感は強い。前世紀の家電というイメージを覚える。個人的には好き。プラスチック部分がやや汚れや傷がつきやすいのが難点。
筐体自体はそれなりにコンパクトで軽め。装着感もよく、長時間のリスニングに全くもって耐えられる。
独特の外観に寄与しているイヤーパッドも見ためは薄めであるが、装着感のよさに繋っており、耳への違和感は一切ない。
デフォルトでは 3.5mm ピンのしっかりとした太さのケーブルが付属している。リケーブルが可能で、両側から 2.5mm モノピンを差せるジャックがある。公式からバランスケーブルなどがリリースされており、色々なヘッドホンプでの利用を楽しめる。40 Ω であるため、出力もそこまで必要としていない。
付属品はケーブルと標準ピンへの変換の他、(Amazon で購入しても付属してきたが)公式ストア経由で購入するとヘッドホンスタンドが付属として付いてくる。それなりに高級感があり、結構デカい。イヤーパッドも交換用のものが購入できるため、長く使用できるであろう。
遮音性と音洩れ
遮音性は通常の開放型と同様、ほぼ無い。音洩れも外側のベントも他の開放型に比べたら狭いほうであるが、普通に音洩れする。電車は無論、無理。
総評
最近買ったガジェットの中でもかなりのお気に入りです。末永く使っていきたいと思ってます。
気になる篭り感は弱点かなと思いますが Snarky Puppy のようなジャズバンドには非常にマッチし、曲を選ぶとデメリットが見えなくなるほど良さが際立ちます。ヘッドホンでもこの価格帯は激戦区であり、イヤホンという強敵も多い中ですが、ウォームで明るめのヘッドホンというよくよく万人に受ける音つくりかと思います。強くオススメします。