Nikon Z8 買った
を書いてから色々考えて、結局のところ Z8 を買った。
Z8 の値段も、大手カメラ専門店で実売で 54 万円程度、そこからキャッシュバックキャンペーンで 5 万円割引と、実質 50 万円を切る価格で Z8 が購入できた。
円安の煽りを受けた Z6III の価格と内容と比較し、費用対効果が高いのが Z8 だと判断した。
Z6III はセンサーシールドがなく、そこでガクっと購買意欲が落ちた。
Z6 を使っている中で AF の次くらいにストレスに感じる欠点が解消されていなかった。
初代 Z6 と比較しても、Z6III のカメラとしての画質は改善はしているものの進化はしておらず。
動画性能や「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」は面白いな、と思っても、カメラとしての普段使いする機能としては、あまり進化はしてしなかった。
あとチルトじゃなくてバリアングルになったのも、個人的には明確なデグレードであり、トータルで買う気が失せた
総論、 Z6III は「動画機だけど写真を撮るカメラではないな」と思った。
Z8 は、まぎれもなくカメラだったし買ってよかった。以下 3 ヶ月ほど経った後の感想である。
Z8 良かったところ
動画性能も高いことながら Z8 は「写真を撮るカメラ」だった。高機能とフィーリング、そして納得感のある筐体である。
画質と高感度耐性のバランス
Z6 の 2450 万画素でとても良いのは、暗所耐性だった。
普段ストロボも持たないし使えない中、暗い場面を撮ることを考えると、この画素数は個人的には非常に丁度よく RAW 編集でがんがんアンダーを上げられるのがよかった。
一方、 4571 万画素はノイズが乗るし、暗いところや微ブレには気を使う。だが、高画素という魅力が勝るギリギリのラインだと思う。
夜のお祭でも撮影してみたが、ちょっと明るい街灯程度の明かりかつ ISO 12800 でも補正でなんとかできるし、かつ RAW でアンダーを上げられるため高感度体制は及第点だった。
その上で Z マウントのレンズのシャープさを存分に楽しめる高画素数は、やはり編集していて楽しいしトリミング耐性も強いので、購入する前の懸念もなんのそのという感じだった。 Z8 のスペックであれば、思っていたより 4571 万画素はブレなく自由自在に使える。
フラグシップとしての AF
他社と比較し劣ると言われる Nikon の AF ではあるものの、たまに抜けることはあるもの非常に打率がいい。 3D トラッキングは想像通りの性能で、トラッキングしつつ構図を調整することがとてもやりやすくなった。とてもいいのが、瞳 AF への移行もスムーズであるということ。「ここで瞳 AF しないで欲しい」ということになったことはない。
Z6 の瞳 AF と比べても圧倒的に粘り強いし、合焦もしやすい。 AF-C + ダイナミック AF でシューティングゲームしなくてよくなったし。また、3D トラッキングのない Z6 と比べ、シャッターボタンを押す直前にサブセレクタを操作しなくてよくなったのが非常にデカい。 AF-ON 押しっぱで筐体をきちんとホールドしながら、シャッターボタンを押すことに集中できる。結果、高速で移動する子供を撮ったとしても、ブレた写真がかなり少なくなった気がする。これが結構デカい。
85mm F1.8 S で飛んでくる鳥を撮ってもバッチリ追従していたし、現像してバッキバキに解像している写真を見たときには非常に感動した。
Z8 の能力も凄いし、加えて S ラインであるものの F1.8 のレンズでもきちんと追従できるということであるのも凄い。レンズの方もあらためて手抜きをしていないことを実感した。
ブレも 6 段の手ぶれ補正はきちんと効果を感じており、 高画素であるのにも関わらずブレの写真は少ない。特に望遠ズームを使っているときにブレのなさは顕著。
シャッターレスとそのためのインターフェイス
シャッターショックによる微ブレの可能性や、シャッターがなくなったことによる高耐久性を確保できたのは非常に素晴しいことである。なんだかんだで Z9 が出てからも他社からシャッターレスで性能のよい製品は出ていないし、この点においてはニコンは他社からの追従を許していない。 Z8 使った後に Z6 使うと、それなりにシャッターの衝撃があることに気づきビビる。
もちろん、センサーを作っているソニーの技術力があってのものであるが、そのセンサーをチューニングして業界唯一となったのは素晴しい。
シャッターレスになった結果失ったカメラとしてのフィーリングをきちんとインターフェイス側で補完しているのが素晴しい。
シャッターがなくなったことでブラックアウトフリーになった訳であるが、そのままではシャッターを切ったときにフィードバックをユーザに返すものはない。しかし、シャッターを切ったときの「音」と「ショック」を Z8/Z9 は上手いことやっている。
音は、任意のサウンドや音量を選ぶことができる。特に古いカメラに愛着があるタイプではないのでデフォルトのままであるが、きちんとフィードバックを感じるし、必要に応じて完全な無音にもできる。
「ショック」の代替えのエフェクトは、個人的かなり気に入っている。「撮影タイミング表示」という機能であるが、デフォルトではシャッターを押したときに画面の隅の四辺が震えるエフェクトが発生する。邪魔にならず、一方でしっかりとシャッターを「切った」という感覚が残る。よく練られているなあ、と非常に関心した。
結論、シャッターレスにより無くなったカメラとしてのフィーリングを、上手いこと邪魔にならないように機能提供しているのが非常によかった。 Z8 はシャッターレスだけど「進化をした真にカメラ」である。画質や操作性以外のことをあまり褒めるのは、ある程度の期間で大幅に進化した次世代機が出現し、結果使い捨てのデジモノを購入している消費者としては『けったい』な話かもしれないが、シャッターという重要な部品がなくなったのにも関わらずカメラとしての『楽しさ』に繋がるフィーリングを維持しようとしているのはとても良いと思う。
4 軸チルト
これは全てのカメラで搭載すべきです。すくなくとも、現在バリアングルで文句を言われている中級機以上は、次の型で 4 軸チルトを採用すべき。
どのような体制からも「がこっ」とワンアクションでモニターを好きな位置に移動できるし、撮影までにやたらスムーズに移行できる。バリアングルは自分の任意の位置までモニターを移動させるのに時間はかかるし、そのためシャッターチャンスを逃がす結果にも繋がりかねないし、なにより面倒である。
Z6III は動画機を兼ねるという宿命上、チルトからバリアングルになったのは納得ではあるものの、 Z9/Z8 の機動性のお下がりをアピールするのであれば 4 軸チルトも搭載すべきだった。個人的には今後、バリアングルの筐体については購買意欲がかなり落ちる。
細かいところ
センサーシールドは大変ありがたい。センサーが汚れる可能性がぐっと減り、レンズ交換のストレスが非常に減った。 Z6III はなぜ搭載しなかったが非常に疑問である。シャッターが代わりにシールドになると思うが、落ちっぱなしの状態だと何か不具合に繋がる可能性がある?
画像は「高効率★」の RAW で保存しているが、特に「画質が落ちた」「ノイズが乗る」「アンダーが上がらない」というような感想を持ったことがない。 4571 万画素であるものの Z6 のときと同じくらいのサイズになるので、非可逆圧縮でも丁度いいトレードオフの設定かと思う。
連射も 8 枚/秒程度であれば 5 秒間くらいの連射は維持し続けてくれるし、運動会などは十分。もちろんばっちりと追従したし、ピンボケはゼロ。
Z8 欠点と思うこと
重くてデカい。ボディが重くてデカいことに何もメリットを感じないのだけど、 Z8 もそう。
普段使いには向いておらず、それでも普段使いをしないといけない身としてはそれなりに堪える。Z6 に比べずしっと首にはくるし、大きいから幅も取る。
それにボディがデカいことで相手に威圧感を与えないかな、と心配になる。
Z6 のデザインは悪いという人もいたが、個人的には Z8 の方がスリムではなく寸胴で外見としてはよくないと思う。
Z6 のペンタ部を侵食するような見た目も「他からはみ出している」ように見える結果、パーツがぎちっと詰まったコンパクトさは感じるし Z マウントの 55mm という大口径をアピールしている意匠を感じる。 Z8 はフロントもバックも、格子状に等間隔にきっちりとパーツを配置しているようで緩急がなく間延びをしているようにも見える。
もちろん、操作性は非常によく、理路整然としたエルゴノミクスであるのは幸い。
また、操作性はよいものの、無駄なボタンが多いのではないかと正直思う。
フラグシップとしても象徴である四葉ボタンも正直使わないし、フォーカスモードボタンもアクセスがしやすいかというと微妙。右側面も表面積が圧迫されている感じだし、右手に集中すべきように整理整頓してもよいのではないかと思った。いっそのこと、右肩の液晶は四葉ボタンの位置に移動してもいいのかもしれないと思う。
10 ピンターミナルも USB-C に移行できると思うし、プロが移行により混乱しないのはいいことかもしれないが、古いインターフェイスや互換性を少々意識しすぎの気がした。このあたり Nikon は過去のユーザの意見を尊重しすぎるあまり、インターフェイスを大きく変えることができないジレンマなのかなとも思う。四葉ボタンも、フラグシップの象徴であるだけで、実際あれを操作するのってそんなにないし無駄を維持し続けているのではないか。せいぜい連射くらい。年に何回触ってます? あのボタンのどれか。
サブセレクターはいい加減、もう少し押し心地や操作性の改善をして欲しい。固くて痛い。
一番よく操作するレバーでもあるので、操作しやすくてカーソルが狙ったところにピタっとはまって AF-ON にスムーズに移行できるようになってほしい。 64 のジョイスティックという最高のインターフェイスに子供のときから慣れた身としては、もっと進化できるでしょうと強く思う。マジでレフのときからサブセレクターに関しては、ハードウェアとしては全然進化していないのではないか。
まとめ
Z8 凄く良いカメラなんだけど、重いし大きい。
また、改めて 2400 万画素程度のカメラの汎用性というか便利さに気づいたし、なんだかんだで Z6 初代はサブ機として当分使いそう。おかしいな Z8 慣れたらすぐ売るつもりだったのに、なぜか Z8 買った後のほうが愛着が湧いたというか。
将来 Z6 の大きさでシャッターレスで AF が凄い低画素機が出たら、つまりこのシステムが小さくまとまったカメラが出たら、それは凄い名機と呼ばれるようになると思う。意外と Z5 とかそのポジションになるんじゃないかな、と勝手に期待しているが、もう何年かしないとほど良いコストでこれくらいの性能のカメラがコンパクトになることはないのかなとも思ってる。