Hifiman HE-R9 ヘッドホンレビュー
Hifiman の HE-R9 を買いましたのでレビューします。
ダイナミックドライバを搭載したクローズド型ヘッドホンで、平面磁界型ヘッドホンをたくさんリリースしている Hifiman の中でも少々珍しい立ち位置となります。
国内ですと 7 万円オーバで売られておりますが、 AliExpress で安価に購入できまして、私もその経路で購入いたしました。
エージングは 100 時間程度。最初は低音が現在よりふくらんでおり、低音の見通しも現在より正面から見て高いところにあり安定がしていなかったように思えます。恐らくある程度エージングが落ちついたタイミングかと思います。
音質
まず第一に、低音も量が多いが、特にエレクトリックベースの音やリバーブの表現において量が非常に過多であるように感じる場合が結構の割合である。左右に広めの空間表現であるが、この低音が空間全体に異常なまでに支配的であり、結果曲を選びがちである。場合によっては、篭り感が強く、リードの存在感を無くしてしまうほど。
一方で空間としては密閉型とは思えないほど横に広く、パンで振られた位置をきちんと把握できる。全体として、低音のバランスが悪いものの、空間の広さが上手いこと調和しているように思える。この空間の広さがこのヘッドホンの一番の面白いところであろう。縦方向の立体感はそこまでない。普通。
全体的な表現としてはウォームでダーク。これは上記の通り低音によるものである。
音の分解能力は 1 万円台半ばとした場合はそれなりに高く、この点においてはコストパフォーマンスは良い。特に中音の明確で明瞭な鳴らしかたには「はっ」とさせられるときがあり、良い意味で個性が発揮されたときには他に無い魅力が出てくる。結局のところ、バランスの悪い機種としてしまうか、個性的と判断できるか否でこのヘッドホンの価値が左右される。
全体として、とにかくもう曲をどのように表現したかという総合力で戦ってくる。
いつもの課題曲。この曲においてはベースが見事であり、リバーブも適度であるかと思う。
ソリッドでエッジの効いたベースは曲全体を通して存在感があり、なかなかに楽しめる。それでもリバーブは確かに気になるものの、空間の広さもあり音がきちんと分解できているので破綻はしていない。
ボーカルもやや擦れのようなときがあるが、さらっとしており艶もある感じではある。埋もれておらずであるが、ただもうちょっと前に出て欲しいとは思う。
パワフルな女性ボーカルを聴こうと思い Amy Winehouse を選択したが、これは相性が悪かった。やはり全体的に篭りが気になる感じで、ぼやっと全体を覆う曇りが、もはや圧迫感にも感じる。
ただ、ボーカルの艶はそれなりに感じるし、ヘッドホンの素性の良さは感じるのでおしいなとは思う。
それでは男性ボーカルもので低音が強調がされているであろうと思い Sabaton を聴いてみた。篭り感は気になるものの、上手いこと曲のミックスにあっており、空間を広く使いつつパワフルな曲調を表現することに成功している。
ボーカルはやや引っ込むものの、パワーは感じる。やや歯擦音や、ざらっとしすぎている音は気になる。
全体を覆うリバーブが非常に気になるが、一方でこのリバーブがバッティングする帯域の音が少ないため、慣れると個性に聴こえる。これはこれで表現としてありだと思った。
途中の竹を叩いたような効果音も生々しく、音の粒もつぶさに表現できている。
横の広さを十分に生かしており、臨場感がよく聴いていて非常に楽しい。
シンバルなどの高音もさらっとした表現ではあるが、なかなかに鮮か。篭り感でやや潰されているものの、音の強弱もきちんと表現できている。見通しもよく、音もきちんと配置できており、団子になっていないのは非常に見事。
ブズーキやアコースティックギターの質感もよく、非常に立体感を感じる。やはり空間の広さを十分に感じられるし、曲調にあったゆったりさにマッチする。
フィドルは不快な鋭さはなく柔らかさと伸びを感じる。全体通してウォームな表現であり、非常に見事。
同じくアイリッシュフォークの Solas から。ドラムの立体感を感じる質感から、よくパンのふられたギターのストローク、アコーディオンが空間全体を広く使っており明瞭。聴いていて非常に楽しい。
別の曲で気になったリバーブの悪癖は一切気にならず、いつまでも聴いていられる。
低音
バスドラなどの音はソリッドに聴こえるのであるが、ベースのリバーブなどが異常に量が過多になる場合があり、時にはブーミーと言ってしまってもいいほど。バランスとしては悪いと言わざるをえない。
一方で、そこの帯域を除いてしまうと、輪郭としては明瞭さは感じるし、アタック感は聴き疲れしない程度で質の良さは感じる。
50 Hz 以下の量は普通。ソリッドさがもっとあれば、もう少し沈み込むような低音が出ていてもいいかなと思ったが、さらにバランスが悪くなるか。
中音
中々に明瞭で量も適度。アタック感はそれなりにあるものの、聴き疲れはしない。輪郭の見える表現力の高さがありつつも音楽的である。ただし、音の強弱の「弱」を表現するのがちょっと苦手なようだ。アタックが強い音に関しては上手いこと表現できているものの、静かな空間の中で小さい音を出すというのが難しいように聴こえる。ぼやっとボケる。これはやはり低音に引きづられているか。
ボーカルは引っ込み気味になりがちであるのが弱点。
バイオリンなどの弦楽器は適度な艶が乗っているが、鮮かという感じは薄くさらっとした表現に感じる。アコースティックギターは見事。
金管楽器の厚みはなかなか感じる。低音に埋もれる感じがあるものの鮮やかさもあり楽しめる。
高音
明瞭。分離もよく輪郭も明瞭。シンバルはさらっと減衰し、鮮やかさは薄いものの嫌味な感じは一切なく、聴き疲れしない。ただし、たまにボーカルの擦れや歯擦音などの不快になる音が気になるときがある。
作りと装着感
まあ、特徴的なフォルムと真っ赤な外装である。
プラスチック感は目立つものの、全体としてそこまでチープさは感じなかった。ただし、独特のとんがっており大きな筐体は悪い意味で目立つ。間違っても、これを付けて外には出歩けない。ただし 32 Ω で大きさにしては音量は取りやすいので、ポータプルアンプに繋げて外で使えなくはない。
筐体そのものの重量は軽く、装着感は良い。イヤーパッドも適度なクッション性があり快適である。また、筐体が軋むこともなく、リスニング時は非常に快適である。
交換可能な 3.5 mm ステレオプラグのケーブルが付属している。それなりに太さもあり、柔らかく使いやすい。6.3 mm ステレオプラグへの変換も付属している。 4.5 mm のバランスケーブルも利用できるとのこと。
付属品はケーブルと数枚の説明書やペーパーのみ。高級感はそこまでないもののしっかりとダンボールに梱包されており、好印象。
全体的には、定価の金額には見当っていないものの 1 万円半ばと思えば悪くはない。
遮音性と音洩れ
遮音性は密閉型としては普通。外の音は気にならない程度には遮断はされる。音漏れは密閉型としたら悪い。筐体が大きく、漏れやすくはある。
総評
これ一つあれば何でも万能に聴くことができる、というヘッドホンではありませんが、個性の強いオルタネイティブが欲しいという場合には良い選択肢なのかなと思いました。広い空間表現、マッチした場合に引き込まれるような魅力のある音を出すということで、個人的にお気に入りの一つです。
ただ、間違っても定価の価値はなく、あくまで AliExpress での実売価格とした場合となります。セールを狙ってのんびり到着を待つのが一興かと思います。
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