小さな店のほこり
入り口を抜けると、そこはカウンターだった。
商品はカウンターの向こう側。店内は3歩で一番奥までいけそう。それが伊部共同店だ。
ひと昔前のたばこ屋を少し大きくしたような広さだが、こちらは生活雑貨も扱っていると考えると驚異的なコンパクトぶりである。
商品にも驚きだった。
「そんなのかんけ〜ねぇ」島ぞうり。商品タグには沖縄限定の赤文字がはいっている。流行してから、もう干支がひと回りしている。いったい、いつから置いてあるのだろうか。まあ、そんなのかんけ〜ねぇ。スルーしよう。
島ぞうりよりも冷蔵庫が気になる。店に入る前からずっと開けっぱなし。店主はとくに気にする様子でもない。閉め忘れたまま気づいてないのか。
はたまた豪快な性格なだけなのか。
店主のスミ子さんに、たまらず尋ねてみる。あのー、開いてますよ。「あれは......」ほほえみながら答えてくれた。
息子さんが仕入れてくれた冷蔵庫なのだが、ひと月使ったところ電気代の請求を見て、はね上がっていた電気代にびっくりしたのだとか。それ以降は、小さな冷蔵庫を使うことに。
せっかく買ってきてくれたのだし、もったいないからと、大きな冷蔵庫は電気を入れずに、そのまま棚として使っているのだ。小さなことは、そんなの関係ねえの精神で乗り切っている。
とても小さな店ということで商品数は限られるものの、それはメリットでもあるそうだ。必要なものを厳選して仕入れているから、ほとんどロスが出ないし、商品の管理もしやすい。なるほど、ほこりをかぶった商品はまったくなかった。そう話すスミ子さんはちょっとほこらしげ。
天井には普通の扇風機。いい感じのサビ具合で、一般的なシーリングファンとは違った味わい深さになっている。
実はカウンターの向こう側に入って、商品を手に取ることができる。スミ子さんは、僕たちが歩き回っても動じない。そんなの関係ねえのだ。