第三十九回 捻りモデルから考える保守思想 (2022年12月10日)

選手を育てるノウハウについて考えてみようと思っていましたが、そうこうしているうちに気が変わり、以前経済について書いた時のように、中高生の読者も想定した、捻りモデルと保守思想をむりくり結び付けた記事にチャレンジしてみようと思いました。伝統的な丸坊主で試合に臨む高校球児たちは保守の卵に違いありません。
また保守としての考え方は、メディアが次々と垂れ流す偏った情報に振り回されず、ストレスを軽減してスポーツを楽しむ助けになるかもしれません。

1. 保守主義とは何か
多くの日本人は、伝統的な価値感を大切にするという観点から、自分は保守主義者だと考えていると思います。しかし具体的に保守としての考え方を意識していないと、容易にメディアが垂れ流す反保守的な情報、多様性であるとか新しい価値感とやらに振り回されて疲れてしまうでしょう。
そこで特にこの記事を読む中高生や大学生が、イデオロギーに振り回されることなく安心して野球に集中できるように簡単ですが保守の考え方を紹介しようと思い立ったというわけです。

保守主義を説明する時には、啓蒙主義と保守主義を対比して説明するのが一般的でしょう。もぎせかチャンネルでわかりやすい動画があったので貼り付けておきます。
啓蒙主義とプロテスタント/ ジェイソン・モーガン先生に聞く 01

私の理解ですが、人間の理性(頭で考えた思想など)を絶対に正しいとして他と違った意見を許さないのが啓蒙主義で、所詮人間の頭で考えたことなどどこか間違っているに決まっていると常に疑ってかかり、思想よりも伝統的な価値や慣習を重視するのが保守主義です。
そうであれば、マルクス共産主義もファシズムやナチズムも啓蒙主義に含まれると考えても私は良いと思いますし、中国や北朝鮮などの共産党国家が全体主義的な独裁国家であるのは当然のことでしょう。
そのように考えると、最近では2020年にオレゴン州ポートランドを占拠したBLM(Black Lives Matter)の無政府主義や米国メディア主導のポリティカルコレクトネス(いわゆるポリコレ)、絶対平和主義、地球温暖化、カーボンニュートラル、同性婚、LGBTのパレード、財政再建至上主義など、特定の思想に基づいた運動も、啓蒙主義の運動と考えて良いと思います。最近のメディアには様々な啓蒙主義思想が溢れかえっていて辟易します。

これに対して伝統的な保守としてはどのように対応すれば良いのでしょうか。全ての報道に「疑いを挟んで」いたら疲れてしまうでしょう。
そこで著名な保守思想家、西部邁の「実用的な」考え方を紹介します。

西部邁著「国民の道徳」から

この図は、自分という存在が対立する側面を同時に持っていることを示していて、この図が保守としてどのような価値観を重視して取捨選択し、またどのように振る舞うか判断するのに役にたちます。

縦軸を見てみましょう。例えばあなたが著名な野球選手だとします。人間ですから、私人として他人には見られたくないだらけた側面があったりするものです。しかし著名な野球選手であれば、公人として誰からも見られて理想的な振る舞いを期待されている側面もあるでしょう。この場合、どこまで自分のだらしない部分をさらけ出して良いのでしょうか?

本人が伝統、慣習あるいは歴史的価値観に基づいて判断してバランスをとって判断すれば良いというのが保守的な考え方で、どのようにバランスをとるか葛藤する中から「人間の尊厳」が生まれるというわけです。
なぜ「バランスをとるのに葛藤すると、その中から人間の尊厳が生まれるのか」については、横軸にある個人の利益か集団の利益かどちらを優先するかバランスをとることを迫られた例を、歴史を振り返り考えればわかります。個を犠牲にして集団を尊重した例としては、命に代えて家族や国を守ろうとした特攻隊員の心情を想像すればよいでしょう。
昔の王さんや大谷選手の日々の言動を思い出しても良いと思います。地を出してるだけかもしれませんが、大丈夫かと思うくらい公人としての姿を壊すことがありません。若いのに大したものです。

2. 保守の価値観とは
何を尊重しどのような選択をするのか「伝統、慣習あるいは歴史的価値観に基づいて判断してバランスをとる」というのが保守の考え方であれば、例えば伝統、慣習、歴史の違う米国の保守と日本の保守は、価値観は違うのが当然で上記で紹介したジェイソン先生の話は、そうした違いが見え隠れして興味深いものでした。

それにしても最近の米国では、左派啓蒙主義が行き着くところまで行き着いているようで、これなどはどうも「多様性の中に新しい美を見ることができるはずだ」という啓蒙主義の押し付けで、「伝統的な美しさ」という保守的な価値観への挑戦のようです。
日本から見ているだけでも疲れるので、米国保守層のストレスは相当なものでしょう。多くの米国保守層がトランプ大統領を支持する理由がよくわかります。

HUGE Trans Man Wins New Hampshire Beauty Contest - Weighs Twice as Much as Closest Competitor

By Jim Hoft Published November 9, 2022 at 11:45am

"Isn’t she lovely!
A HUGE trans man won a recent beauty contest in New Hampshire. Biological male ‘Brian’ won “Miss Greater Derry” a pageant under the Miss America organization."

ポートランド市内を選挙したBLMとトランプ支持者の対立も、人種差別などが問題ではなく、啓蒙主義(左翼全体主義)vs 保守主義の対立というのが本当のところだと思います。

ポートランド衰退!!「ホームレス急増化」が深刻な問題でやばい。

絶対的な正義と思われている、自由、平等、平和が一番という思想も人が考えた思想で啓蒙主義なので、極端に向かえば容易に反保守主義者に利用されてしまいます。
自分勝手に振る舞う自由、順位をつけない画一主義、自国の防衛を無視した平和主義、ポリティカル・コレクトネスを理由とした検閲、mRNA惑珍が絶対に良いものだと決めつけて非接種者を排除するパスポートの導入、思想に反する意見は科学的であっても陰謀論や変人のレッテル貼りをして排除するなども啓蒙主義的で、実に反保守的な活動です。

こうした「誰かの頭で考えついた思想を絶対視する」啓蒙主義者による保守主義者への攻撃は、一部の利権と結びついて更に激しさを増しているようです。このままでは、今日のポートランドは明日の日本ということにもなりかねないでしょう。そうなれば、またしても野球どころではなくなります。

Portland protests: Fence pulled down at federal courthouse, police declare riot

メディアから多様性とか新しい価値観などが一方敵に流される環境では、気づかないうちに変化にさらされ、伝統的な価値観は常に疑問を提示されることから漠とした不安を覚えることが多くなっているようです。
ストレスでスポーツや読書を楽しめない、学校や仕事に行けない、人生に希望が持てないなどとならないように、あっさりと「伝統、慣習あるいは歴史的価値観に基づいてバランスを取る」ことで良し悪しを判断してみればとおもいます。メディアが流し続ける「新しい価値観」を受け入れなければ、大いにストレスも軽減するでしょう。比較的容易な例から考えてみましょう。

・WBCで日章旗を掲げて侍ジャパンを応援したところ旗を掲げるなと言われました。悪いことをしたのかな?

・男女は平等だから女系天皇を認めて、愛子内親王を天皇にしてお婿さんをどこからか迎えよう。

・外国人にも参政権を与え、生活保護も適用しよう。

・LGFBT差別はいけない。同性婚を認めよう。

・個人の自由は絶対だ。個人を規制する政府や警察の存在は許せない。

・個人の平等は絶対だ。勝ち負けをつけてはいけない。徒競走では皆で手をつないでゴールしよう。

・平和は絶対だ。軍隊を持つのは悪だから自衛隊は違憲だ。

・ワクチンパスポートでワクチンを打たない人達を管理しよう。

・マイナンバーで全ての個人情報を管理しよう。

・メディアは報道しない自由を行使して良い。

まだまだありそうですが、書いてきるだけで疲れます。
これらの主義主張は、日本の歴史や伝統や慣習にもとづいて、どれほど違和感があるか考えれば、受け入れる主張であるかどうか容易に判断できるでしょう。
マーベリックのように「考えるな。感じろ。」です。そうすることで、いわゆる「日本文明の超システム」が発動し不要な思想を排除できると思います。

この「考えるな。感じろ。」こそ究極の反啓蒙思想、保守思想であって、文字による記録を残すことをしなかった神道の考え方なのだと思います。日本人は無宗教なのではなく、経典をもたないという究極の保守的宗教である神道に、自分でも気づかないうちに含まれているのでしょう。
私の理解では、神道の持つ超保守性、究極の反啓蒙思想の性質が、日本人のスピリチュアルな精神性や、そうした精神性をベースとした自然や土地、あるいいは祖先や集団を、自分と一体のものとみる感覚を育てたのだと思う。
これは西尾幹二氏の言う「神道とは、日本人であることそのこと」と言う解釈とも矛盾しませんし、日本人は早くから、恐らく西洋より1000年程早い時期に、国家を意識していたと考えるべきだと思う。白村江の敗戦の後に中央政府が対馬に巨大な砦を築き、防人についた兵士がいたというのが何よりの証拠でしょう。

日本の保守精神をもっと簡単に言うと、七人の侍のセリフ「己の事ばかり考える奴は、己をも滅ぼす奴だ。仲間を守ってこそ己を守れる」というなかに凝縮されていると思う。極端な啓蒙思想、科学的客観性を欠いた主義主張を押し付けて、一部の大企業や金融、一部政治家や官僚への利益を集中させるグローバリズム、啓蒙思想と合うわけがありません。

最近の啓蒙主義は巧妙で、思想が政治や特定の利得者と結びついて金儲けに使われる傾向が強くなってきたようです。我々がかなり実害を被ってから、違和感に気づくということが多くなってきたようです。
これらはどうでしょうか?

・二酸化炭素で地球は温暖化する。二酸化炭素を出すのは悪いことだ。カーボンニュートラルを目指そう。

・mRNA枠珍を打つのは良いことだ。年に何回でも子供にも打とう。

・財政再建は絶対だ。国債発行は悪いことだから防衛予算を増やした分を増税しよう。

・トリクルダウン理論は正しい。大金持ちを設ければ上から下に滴り落ちるように金が落ちてきて国民は豊かになるに決まっている。

これらは適切な情報がないとすぐに判断するのが難しい内容で、より正しい情報を発信していると思う人達を探して情報を集めて学ぶという主体的な作業が必要になります。

メディアの一方的な情報だけでは、保守としてバランスを取れないので、メディアが報道しない反対意見について幾つかリンクを貼ってみましょう。

「地球温暖化詐欺_武田邦彦 地球温暖化の不都合な真実」から

地球温暖化詐欺_武田邦彦 地球温暖化の不都合な真実

これらを比較してバランスをとるというわけです。
投資が絡むカーボンニュートラルやEV、 太陽光パネルなどのESG関連事業では、誰が利益を得ているのか常に考える必要があります。

【観ろ小池!東京都ジェノサイド知事の小池百合子!上海電力岩国メガソーラーの25万枚の太陽光パネルが全てジェノサイドパネルと判明!】

ビッグファーマも景気が良かったようです。公開情報によると、2021年のファイザーの売り上げは9.3兆円、モデルナの売り上げは2.1兆円とのこと。

ところで私が以前お世話になってた霞ヶ関の課長は、「声なき声の為にだな」と口癖のように話し、個と集団(国)の利益の間では明らかに自分の利益よりも集団を優先していた保守でした。尊敬すべき方で今でも多くの官僚はそうであると思います。しかしこれは、ちょっと情けない。

令和4年11月25日「新コロコロ輪苦珍と脂肪ぢ例の隠蛾関係を考える」勉強会

マスメディアやYouTube, Twitterなどのプラットフォームによる検閲は許されないと考えていますが、YouTubeが検閲した動画で他のプラットホームにアップ動画には、なぜ削除されたのかわからないものが多いように思います。

京都大学レジリエンス・フェスティバル2022

厚労省より困ったのは財務省。明らかに破綻している法律や経済理論を、国益を無視して推し進めているように見えます。

【三橋貴明×森永康平】黒田日銀vs財務省~2023年に世界金融危機は起きるのか?円安を招いた本当の原因

財務省は過去25年間もの間、デフレ対策としては間違った経済政策であるプライマリーバランス目標や財政再建を理由に、消費税増税や社会保険料など様々な国民負担を増やし国内経済を不況に保ち財政出動も十分行ってきませんでした。
日銀の金融緩和により保有国債を手放した銀行は、不況で投資先もなく利子収入もなくなった状態で、米金融から高リスク債権を買うように追い詰められ、金融バブルと中国経済の成長に寄与してきました。
さて、その銀行が買いためたジャンク債が不良債権化し始めているようです。「その他証券」というのが純資産よりも膨れ上がっている銀行もあるようです。このまま不良債権化が進めば、銀行が潰れて個人預金が吹っ飛ぶかもしれません。それが人災でないと誰が言えるでしょうか。

【米国債暴落】地銀大ピンチ!外債損失2.3兆円!半年で損失が6倍に拡大!

「官僚は法律に沿ってやっているのだから、政治の失敗は官僚の責任ではない」というのは、「日本文明」がトップダウンの文明ではないことを考えれば言い訳にはならないでしょう。

振り返れば、フランス革命、マルクス共産主義、ファシズム、ナチズム、グローバリズム、地球温暖化仮説、カーボンニュートラル、SDGsと、つぎつぎと名前を変えて蘇る啓蒙思想は、常に少数による利益の独占と大衆の管理に利用されてきました。

世相を見る限り、思想や個人の利益を重視することなく保守の立場で日本国という集団としての力を維持していかなければ、多様性という啓蒙思想に乗っ取られてしまうのではと危惧します。明治の元老や保守が欧化という啓蒙思想を恐れたのに似てると思う。
日本国民であれば誰もが、職場で家庭で、それぞれの203高地を登るものなのだと思う。

【日露戦争】ロシア兵が語った不死身の日本兵「白たすき隊」の勇姿|小名木善行

3. 捻りモデルから考える日本の保守思想
メディアから一方的に流される啓蒙思想の違和感を語ったところで、ようやく落ち着いて捻りモデルについて振り返ってみることができるようになりました。

プロアマ問わず捻りモデルの動作が多くの日本の選手に受け入れられたと思えるようになるまで、2014年の発表から随分と時間が経ってしまったと思います。
これまでの観察では、一部の選手が捻りモデルの動作を取り入れて打撃を向上させたとしても他のチームメイトと情報を共有することがなく、またあるコーチが率先して動作を取り入れてチーム全体の打撃が向上したように見えても、コーチが変わればまた元の打ち方に戻ってしまう、そのような繰り返しであったように思います。これは研究者としては忸怩たるものがありましたが、今振り返ってみれば良かったと思う。
NPBでは、50年以上にわたり回転モデルを受け入れて、さらに左手一本でダウンスイングをしてバットスピードを上げる練習をしてきた「伝統」がありますから、新しい動作を受け入れるにも時間がかかるのは当然で、これはむしろ保守としての日本文明の強さ・頑固さをうかがわせる良い面なのでしょう。

大陸から漢字が入ってきたのが紀元前3世紀〜紀元前1世紀頃で、縄文語に合うように音読み、訓読み、平仮名、片仮名を組み合わせて日本語にするのに1000年くらいかかったようです。それを考えれば「捻りモデル」が10年程度で広がってきたというのは非常に早いと考える方が妥当です。

メディアによる情報統制や検閲は、合理的思考を忘れた人々に対しては、容易に○○推進派や反○○派などのように分断させることができますが、回転モデル派や捻りモデル派といった分断は起きなかったのでしょう。
結局のところ捻りモデルは思想ではなく自然科学の問題ですから、どちらが理にかなっているか実験すればすぐにわかります。

実際のところ、今年の日本シリーズでは、オリックスとヤクルトの技術的な違いは、概ねオリックスの選手に翔平グリップ(アーロングリップ)が多く、ヤクルトの選手は誠也グリップ(ウイリアムズグリップ)というくらいの違いで、その他の動作は、バットの軌道も含めてこのブログで提唱している動作になっていたと思います。江本氏がこき下ろしていた杉本選手が、最終的にMVPになったのはご愛嬌でしょう。

来年3月にはWBCが開かれますが、栗山監督は史上最強のメンバーを集めることができるでしょう。他国も特に米国は豪華メンバーを集めてくるようです。
侍ジャパンのメンバーには、保守の精神を発揮してもらい、いずれはライバルとなるかもしれない選手同士であっても技術的な意見を交換し合いチーム全体の能力を高めてくれればと期待します。
そして大会が終わった後に、結果がどうであろうと聞いてみたい。

「そこから旅順港が見えるか?」


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