メタル野郎がプログレでトリップした話
ヘヴィメタルは大好きだが、プログレッシヴロックはそんなに好きじゃない。
僕は昔から分かりやすい音楽が好きなのだ。
ツインテールが4/4拍子の曲しかないのは僕のせいですごめんなさい。
Meshuggah大好きのテツロウは多分、変拍子の曲を作れるだろう。
すまん、それはソロ活動でやってくれ。
凄いギタリストの音に飢えていた20代前半、ギター名盤はとりあえず買って聴いていた。
ヤングギターの名盤を教えてくれる回と、ギターマガジンのストラトキャスター使いの特集の回に必ず出るアルバム。
それがピンクフロイドのThe Dark Side of the Moon(邦題:狂気)である。
売り上げでギネス記録を持っていて、プログレの世界ではキング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』と並ぶ超名盤である。
当時、伊藤政則氏のMUSIC GUMBO TUESDAYというラジオ番組を聴いているとピンクフロイドはよくかかるので名前と曲の印象は知っていた。
まったく好きになれなかった。
でも名盤は聴いておかねばならん。
そう思い、The Dark Side of the Moonを購入。
そして家のコンポで再生してみた。
ね、眠い。ひたすら眠い。
これが名盤?ウソだろ?ずっとお経みたいな音楽が鳴ってるだけじゃないか。
そこからプログレ嫌いに拍車がかかってしまった。
「プログレなんて、自称音楽通のジジイどもが無理して良いと思い込んで聴いている音楽だろ?お前らホントはBon Joviの方が好きなんだろ!?」
という印象に。
それから5年は経っただろうか。
休日ドライブする時のBGMを家で物色していた。
ところが、あるのは聴き飽きたCDばかりなのである。
今のようにストリーミングサービスも無いし、ipodを車でかけるなんて機能のオーディオも無かった。
そんな時にCDラックから見つかったのがThe Dark Side of the Moonである。
ケースはピカピカ、傷一つない。
一度しか聴いていないからである。
聴くもの無いし、これでいいか!とオーディオにセットしてドライブ開始。
ぶっ飛んだ。
ぶっ飛んでしまったのだ。
眠たいとすら思った旋律が緩い陶酔感すら思わせる。
シンプルな音楽が水のように体に吸収される。
曲単体ではなくアルバム1枚で1曲と感じさせる構成の見事さ。
もちろんその時はそんなことは感じていない。
トリップしてしまっているからだ。
頭の中は、ただひたすらの無心である。
大阪から奈良県の針テラスという道の駅まで行くはずが、ノンストップで三重県の伊勢神宮近くまで行ってしまったのだ。
もちろん道中の記憶は曖昧。
完全に音楽とシンクロしてしまった。
The Dark Side of the Moonは売り上げのギネス記録を持っている。
その理由が、あくまでウワサだがマリファナを吸いながら聴くと『とてつもなく美しい風景』が見えるらしい。
もちろん僕はやっていない。酒もタバコもやらないメタルヴォーカルである。
しかし、僕はあの時その片鱗を感じたのだろう。
『とてつもなく美しい風景』は見えないが、精神はあちら側に行ってしまっていた。
古来から名盤と言われるものには理由がある。
今は解らなくてもいつか解る。
人生経験を積まないと理解できない音楽は確実に存在するのだ。
これはThe Wallの曲だが、このデヴィッド・ギルモアのギターソロ聴いたら涙が出そうにならない?
これだけの人前でこの演奏できたら、もう死んでもいいよね。
5:05ぐらいにエアギターを弾いている客がいるが、めちゃくちゃ気持ちが分かる。
プログレはやっぱり今でも苦手だが、クリムゾンとフロイドは別格。
え、ベタだって?
ベタには理由があるのだよ。
俺もそんなバンドになるんだぜ。
ツインテール、今のうちに押さえておくべし。