Giftedのある子どもの感情/情緒及び行動特徴について
最近の気になることから…
臨床的にASD/ADHD等の神経発達症群の特徴を持ちながらもGifted「障害や病気といった医学用語ではなく、いわゆる“神が与えた才能(特別なギフト)”」のような「二重に特別」な要素を持った「2E(twice-exceptional)」のタイプなのか??とか感じる子どもに出会います。
そんな子どものことをもう少し知りたいなぁと思って、見つけた論文です。
Emotional and Behavioral Characteristics of Gifted Children and Their Families
Fatma Eren, Ayla Ömerelli Çete, Sibelnur Avcil, and Burak Baykara : Noro Psikiyatr Ars. 2018 Jun; 55(2): 105–112.
Published online 2018 May 4. doi: 10.5152/npa.2017.12731
Giftedのある子どもは、いわゆる定型発達児と比較し、認知的・身体的発達等の非同期性から生じる社会的・感情的ニーズの違いを多数抱えており、学業分野、自己認識、社会的スキル、感情/精神的健康などの問題は、その子どもの生活の質(Quality of life : QOL)に影響します。
対象は、
9-18歳のGifted児/者49例、TD児/者56例で以下の評価を基に比較検討されました。
・Strength and Difficulties Questionnaire(SDQ)
・Pediatric Quality of Life Inventory (PedsQL)
・State-Trait Anxiety Inventory for Children(STAI-C)
・Child Depression Inventory(CDI)および Children Depression Rating Scale Revised(CDRS-R)
・Family Assesment Device(FAD)
・Kiddie Schedule for Affective Disorder and Schizophrenia Present and Lifetime version(K-SADS-PL)
結果です。
状態‐特性不安尺度(STAI-C)、小児抑うつ尺度(CDI)及びCDRS-RはGifted群とTD群に統計学的な有意差は認めませんでした(p>0.05)。
しかし、CDRS-Rでは、Gifted群の男性は同群の女性よりも高い抑うつスコアを示しました(2x2 ANOVA, group I *gender, F=4.797, p=0.031, Partial η2=0.045)。
またSDQの領域別に比較すると「多動/不注意(Hyperactivity/Inattention:HI)」のみに有意な困難さを認めました。男女間の比較においては、「仲間関係の問題(Peer Problems:PP)」が男児で困難さが高く(F=4.821, p=0.004, partial η2=0.125)、女児は「向社会的な行動(Prosocial Behavior:PB)」が高いことがわかりました(2×2 ANOVA gender effect; F=12.024, p=0.001, partial η2=0.106)。
しかし、SDQの保護者記入における結果では全ての項目に有意差を認めませんでした。
次にPediatric Quality of Life Inventory (PedsQL)の比較検討では、Gifted群が有意に低い(p=0.037)ことがわかりましたが、性差は認めませんでした (2×2 ANOVA gender effect; F=0.395, p=0.531, partial η2=0.004)。
また下位領域であるPedsQL social functioning scoresに着目するとGifted群がより低い傾向を認めました(F=3.898, p=0.051, partial η2=0.037)。加えて、性差を確認すると 統計的に男児が有意に低いことが認められました(2×2 ANOVA gender effect; F=5.559, p=0.020, partial η2=0.052)。
FADの "Affective Involvement "では、Gifted群はTD群より統計的に有意に低いスコアでした(p=0.035)。意外な結果??
男女間の有意差もなく、その他のFAD下位検査においても、群間における統計的な有意差は認められませんでした。
個人的なポイントは、
自己記入式のSDQにおける「多動/不注意(Hyperactivity/Inattention:HI)」に困難さを抱えているが、保護者記入式では有意差がなく、認識に差異があることです。知能が高いが故に何らかの問題意識が働いているのか??
また男児において身体的健康QOLが低い、抑うつ的であるという認識は縦断的な観察を行う上で重要なことであると感じます。これらの要因については種々の可能性について言及されています。
FADの「Affective Involvement」という「お互いへの興味、関心、愛情等の情緒的関与」がGifted群の保護者に高いことがわかりましたが、考察としては性差もなく、他の下位領域で有意差を認めていないことから、ほぼ同等の家族の類似性である…という解釈のようです。
まぁ「自己認識/メタ認知が高い」ということが、逆にいわゆる通常の集団との違いを感じ取りやすく、疎外感をもってしまう…のか。