あなたはわたし(20)【ナツキの記憶】
ずーっと、ずーっと
「Yesなの?Noなの?」
がリフレインしています。
どうしよう。止めることが出来ません。
どうしよう。なぜ、こんなにメイが欲しいのだろう?
どうしよう・・・。
まぎれも無い欲望。
そして、欲望と同時に存在する、静かな癒しと期待。
握りしめるメイの手のひらは、また吸い付いたように離れません。
触れている事が、幸せであり、快感であり、癒しでした。
受け入れられている。
このとろけるような、甘美な快感は、語る言葉を失うほどの喜びでした。
それは、幼い頃、実の家族から引き離された事がある僕の痛みゆえの、喜びかもしれません。
すべての人、すべての男性が、こう感じるのか?
それはわかりません。
でも、僕にとって受け入れられることは、魂の喜びともいえる、とてつもない大切なことのようでした。
メイと歩いていた僕は、はっとしました。
ある建物の前にいたのです。
あそこだ・・・・。
ここは、11年前。
僕の人生を変えた場所。
僕の人生を変えた決断をした場所。
僕の本当の人生が始まった場所。
コーヒーロースターとして、ビジネスオーナーとして、自分の責任で世の中で生きていくことを決めた場所でした。
11年前。
この建物で行われていたビジネスセミナーの最中。
僕は、その決断をしたのです。
その大切な場所。
今、僕はそこにメイと手をつないで通りかがっています。
今度は、この人との人生を生きる決断をする時なのかもしれない。
僕は、この奇跡に静かに感動していました。
僕の右手は、突然現れた運命の人、メイと”融合”しています。
宇宙が、伝えてくれているのでしょうか?
「進め!」と