見出し画像

再び、メイのもとへ(4)【ナツキの記憶】


メイが好き・・・・。


僕は蚊の鳴くような声で、伝えました。それでも精一杯の声量でした。

なんて不思議な事でしょう。


8年前からの友人。

6年振りに再会したばかりの友人。

子供と旦那さんがいる人。

そして、この世に二人と無い手をもつ人。

触れた瞬間、分かってしまった人。


確かに口づけも交わして、

お互いの気持ちは他人とは思えない程に分かる。


それでも、この言葉を伝えていないうちは、まだ無かった事にできます。

それだから、この言葉を伝えてしまうと、

僕は、もうメイしか考えられない世界を選択してしまう。


そう、宇宙に宣言してしまうのだと、僕は自分の中でわかっていました。

だから、ものすごい葛藤の3日間でした。


そして、僕は決断しました。


それは昔。

僕が脱サラして、コーヒーロースターとして生きて行くことを決めた時、

そして同時に僕が離婚を決めた時、

僕が僕自身に誓ったのです。

これからは、「欲しいものは欲しい」と宣言する生き方をする。


すべての望むものが、

手に入らなくてもいい。
できなくてもいい。
伝わらなくてもいい。

でも、

手に入れようとしない。
試してみない。
伝えない。

ということを、僕は、
これからの人生では選ばない。


でも、僕は震えるような恐れの中にいました。

扉をたたくのは、怖いものです。

万が一の”NO”も。
そして予想どうりの”Yes”が進める人生の進展の両方ともが。

僕の蚊の鳴くような声を聞いたメイは、

僕を優しく見つめ、穏やかに応えてくれました。


ここから先は

602字

¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?