あなたはわたし(8)【ナツキの記憶】
もし駄目だったら誰からの邪魔が入るんじゃないかな?
よかったら行ってみたら?
僕がここで見守ってあげるから。
バリケードを持ち上げながら、僕はメイに話しかけました。
メイは目をまんまるにして驚いています。本気でびっくりしていました。
そんなことしていいの?と顔で訴えて来ます。
それでも、良識よりも思いが上回ったのでしょう。
周囲を見回しながら、おずおずと歩みだし、僕の持ち上げているバリケードをくぐり抜けて、祠の前にしゃがみ込みました。
熱心に祠にお祈りしています。
僕は周囲を見回しながら、メイの祈りの終わりを待ちました。
長い長いお祈りを終えて、メイは嬉しそうにおりてきました。
本当に嬉しそうでした。
いろいろ曰くを知っているので、その祠にお参りできたことが本当に嬉しかったそうです。
昔、昔の優等生の僕ならば、絶対にしないことですが、今の世間にもまれた僕には、立ち入り禁止を額面道理にとる人ではなくなりました。
笑顔のメイをみて、僕もうれしくなりました。
誰かを笑顔にすること。
それは僕のサービス業を選んだ、大切な理由でもあります。
明るく朗らかな気分で、僕らは歩き出しました。
前来た道ではなく、木々がトンネルのようになっている小道を進みます。
その時にはただそこをくぐりたい、その一心でしたが、今思えばトンネルを抜けて行くのは、何かの象徴のような気もします。
新しい、未知の世界に・・・。
外に出る直前に巫女さんの姿が見えて、隠れたり、
まるで僕らは子供のようにはしゃぎつつ、山の裏から一般道に出て、外周の
道を楽しく歩いていました。
よりメイ心がとても近く感じられて、それは楽しい気分でした。
一気に8年前の僕たちに、いや、それ以上のこれまで最高の親密さを感じていました。
二人で秘密(?)を共有したからかなぁと、僕は思っていました。
いよいよご飯に行こうということになり、メイのおすすめのお店に向かいます。
そこはオープンテラスのあるビストロで、有名なお店。
僕も一度、行った事があるお店です。
二人で楽しく話しながら歩くと、その直前に一軒のお寿司屋さんがありました。
心の中では、お寿司がいいなぁと思っていましたが、メイの希望が優先。
僕たちは、そのオープンテラスのお店に到着しました。
しかし・・・。