はじまるふたり⑤【メイの視点】
その日、ナツキはお昼に用事が終わり
私のいる場所へと向かってきてくれる予定でした。
時折、ナツキからメッセージが届きました。
予定よりも少し遅れそうだというメッセージでした。
そのナツキのメッセージからは
早く行きたいのに、たどり着けない
焦りの様なものも感じ取れました。
わたしは、焦らなくて大丈夫だから、と返信をして
森の中のベンチに腰を掛けて、木々の間から見える
木漏れ日を眺めていました。
私のいた場所は、午前中用事をしていた近くにある
広い森のある公園でした。
その場所でナツキが来るのを待っていました。
気持ちのいい5月の晴れの日でした。
青空も、新緑も気持ちよさそうに輝いています。
その気持ちよさも感じつつも
心はナツキに向いていました。
もうすぐ、また逢えるんだ。
そして、今度は
ナツキから誘ってもらったことも
私にとってはとても嬉しかったのです。
ナツキに気が付いてもらうまでの1ヶ月半。
その間、私はただの片思いしている人として存在していました。
私は
子供の頃から、いつも片思いを長年やり続けるタイプでした。
想ったら
その人しか目に入らなくなるのです。
しかも、行動にでる勇気もない、という、
恋に恋していたような状態を常に、保ち続けていました。
告白して、その状態が終わってしまうのが
怖かったのかもしれません。
例え片思いでも、恋をしているということは
自分の中では続いている、ということなのですから。
でも、同じ片思いでも
ナツキとの場合は状況が異なりました。
今は私も年齢を重ねているのもありますが
ナツキが私の魂の片方なんじゃないか、
ツインレイなんじゃないか
どうしても確かめたい気持ちでいっぱいでした。
そしてそれ以上に、ナツキに恋をしている私もいました。
あとは
時間をかける必要性も無いように思っていました。
想ったら行動にどれだけ早くできるか
それが循環を生み出しているのを体感していたのもあったからです。
そんなわけで
その間の行動は滑稽ながらも
必死で突き進んでいたようにも思えます。。
そんなことを色々思い返しながら
ふと、身体を起こすと、
公園脇の道に紺色の車が通過していくのが見えました。
私は、ナツキが何の車に乗っているのか
知りませんでしたが
あっ、あれな気がする
って思ったのを覚えています。
すると、しばらくして電話がかかってきました。
ナツキからでした。
私は、言われた場所へと歩き出しました。
あのナツキに気づいてもらった日、以来の再会です。
なんだかものすごく照れくさく
恥ずかしくて
でもすごく嬉しかったのを覚えています。
そして、歩いていくと
先ほど見つけた紺色の車が止まっていました。
よく見ると、その車の中からナツキが手を振っているのが見えました。