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やってくれるね、ロシア人
米原さんの「旅行者の朝食」を読んで、個人的にブームのロシア。ソビエト連邦が崩壊前と後で旅行した筆者の体験談になっているこの本。筆者の本業は写真家。さまざまなところを移すのが仕事だが、ロシアほどそれが難しい国はないだろうと思うのは皆同じではなかろうか。実際に行ったことはなくとも、スターリンによる粛清の時代は知っているし、KGBによる監視、言論統制など習っていなくてもどこかで見聞きしている。
が、それもどこまで本当のことかを知っている人は少ない。そんな中、著者は1987年にロシアにカメラ(当然まだデジタルではない)を抱え、モスクワや、サンクトベテルブルクといった都会ではなく、ハバロフスク、シベリア、イルクーツク、ヴォルクタ、ソロヴェツキー諸島などを訪ねている。
ロシアに関する本では、トイレの凄さと、洗面台の高さ、女車掌とのやりとりが定番。
さらに、超愛国者、超忠誠心、酔っ払いが出てきて、現場主義、自分のルールが最優先と書き方によっては悪く見えるが、厳格に規制された荒れ放題の国ではないのは、これも共通して読み解く事ができる。筆者が困った状況になると、バーブシュカが必ず現れそれはそれは親切にしてくれる。
これ以上ほっぺが横には広がらないよというほど口を三日月形にして僕を見上げた
最終章、「日時計の影の記憶」ではかつてお世話になったバーブシュカに会いに行く話となっている。その出会いは本当に偶然だが、筆者の状況は控えめに言っても差し迫っていた。九死に一生をえるとはこのこと。父称も名字も住所さえも知らないが 15年たち、国の体制も変わったがその恩は忘れない。そのとき3歳だった孫も大きくなっているだろうと尋ねてゆく・・・。
ロシアはその歴史ゆえに、すべての国民が苦難の時代を乗り越えてきた。個人であってもその歴史がさまざまに影を落としており、家庭を、子供を守ってきた女性がバーブシュカとなって日々を暮らしている様は読んでいると込み上げてくるものがある。
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