
カナレットとヴェネツィアの輝き
どこかでちらっとみた、水面に浮かぶ建物と水色の空の風景画。
調べてみると、ヴェドゥータ(景観画)と呼ばれる17世紀のヴェネツィアを描いたカナレットという画家の展示がSOMPO美術館の広告でした。
海洋都市としての栄華を誇った街だが、その始まりは5世紀フン族の進出によりやむなく、湿地帯に杭を打ちその上に作り出した街。それから東ローマ帝国への十字軍侵攻、オスマン帝国の勢力拡大、からドイツやフランスとの戦争を経てナポレオンによる侵略でその歴史を閉じることになる。
その最盛期はヨーロッパの中心、時代をリードする街でイギリス、フランスなどから「グランドツアー」と呼ばれる、数年の留学のようにして社交界のマナーや、知見を得るための旅行が行われていた。その思い出として、各地の景観画の需要が伸び、ゆえに優秀な作品も多数描かれることになった。グランドツアー自体があれだけ戦争を続けていたヨーロッパが一時期平和だったからこそはやったことだと思うが、今でも後で見直すことが難しいくらいスマホで写真を撮ることを考えると、その思い出にこうした風景画、景観画が流行り、発達するのは当然かと。再び戦争の足音が聞こえてくるに伴い衰退してゆくのも当然か。
景観を描くといっても、写真のように見えるものをそのまま描くのではなく、ランドマークとなる建物が画角の中に入るように、再構成し見せたいものを印象的に、思い出となる建物が美しい記憶を残すように描かれている。
写真とは違い、ランドマークを見た記憶を残したいので、昔観光地にあったペナントのような意味合いか。(あれも簡単に写真が撮れるようになってなくなったものなんだろうけど)
不思議だったのが、複数の画家が描く絵の空の色が、皆一応に水色に薄雲が描かれていること。抜けるような青でもなく濃い蒼でも深い碧でもない。一人の画家がその印象で描くのであればそいうこともあるかもしれないけれど、どの画家もそう描くのは、本当にその色なのか、海や運河の水と一緒に書くとなるとその方が映えるのか。
ヴェネツィアには行ったことがなく、近年の水面上昇の影響でサン・マルコ広場が水没し(とはいえ現地の人はすでに知っていることなので、ホテルなどの入り口は2階に移してあるらしい)ていること、ガラスの仮面で一人芝居「女海賊ビアンカ」の舞台になったこと、いくつかの映画でゴンドラを見たぐらいで、街の全体像などの理解がなかったが、今回景観画とともに島全体の地図があったので、解像度が少し上がった気がする。
いいなと思ったら応援しよう!
