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秘密

あかたと別れたことを受け入れられてなかったんだ
忙しくしてまぎらわせて
時間稼ぎをしていた
時間が経てばまた、
と心のどこかで思っていたのだ


私には子供がいるから
母親の役目を放り出す分にはいかなかった
ただそれだけだった

下の子はひきとってもいいと言ってくれたことがあった
兄弟をバラバラにするなんてこと 母親ならできるはずがない
何より そんな複雑な家庭で子供を育てたくなかった
子供が一番だった
何かを選ぶ時
何かを捨てないといけないこともある
何もかも手に入らない
だから仕方なかった

頭ではわかっていた
私は間違ったことはしていない

そもそもあなたを好きになってしまったことが
母親として最低だと自分を責めていた
人を好きになる時に 恋愛なんかしたいと思ってなくても どうしようもなく好きになることがあるのだと初めて知った

私は自分の子供を守るために
無理やり何度もあなたから離れて
一時は何もかも失って どん底に落ちて
やっと這い上がって前を向いて歩いている

でも15年
その間 あなたを忘れたことなど一度もなかった

私の人生は男の人には縁がなかった
そう諦めるしか無い
子供を望んでも 授かれなかった人もいる
何もかもは手に入らない
それが人生というもの 

辛い時くらい誰かに抱きしめてもらいたいと思うこともあるけれど
そんなことは諦めないといけない
贅沢なのだ 私は

無い物ねだりをするから不幸になる

私はあの人よりも子供を選んだ
母親なら当たり前のことをしただけだ
間違っているはずがない

間違っていなかった
ちゃんとぐれることなく いい子に育った
いろんなことがあったけれど
15年もたてば 形も姿もかわって
答えがみえる
間違いない選択をしたと胸を張って言える

理性ではそう理解している

心では 母親の仕事が終わったら
自分の人生を生きられるようになったら
その時こそは素直になりたいと思っていた
それまで待っていてほしかった
それだけだった
私があなたから無理やり離れた理由は母親を優先したから 子供が大切だから ただそれだけ

母親が女になるのは
子供からすると気持ちが悪いことで
母親たるもの子供を守ることが一番大切に決まっている
至らないところもあったけれど
私なりには ちゃんとできた10年だった

子供が育って
これでよかったと思えるけど こんなに引きずるとは思ってなかった
でもいま理由がわかった
私はあなたと終わったわけじゃなかった
ずっと待ってたんだ 心のどこかでは
ただ時間が経つのを待ってたんだ
終われてなくて 待っていれば また時間が経てばって、きっと思いながら生きてたんだ

きちんとあなたと話して終わればよかった
そうしたらこんなに引きずらなくてもよかったかもしれない
心を開いていれば

あなたのことは好きで一緒になりたい 
子供を傷つけるわけにはいかないから
子育てが終わるまで待っててほしい
それが無理なら綺麗に別れて
って言えばよかった

いえなかったのは
待っててくれるはずがないとわかってたから
あなたを縛り付けておくのはいけないと考えていたから
あなたなら綺麗な人と出会って、普通の結婚ができるから、そうしてほしいと思ったから
私じゃ申し訳ない、選ばれるはずがないと思ったから、、

それが理由

でも、心のどこかでは 
きっとまだ繋がってると信じて 待ってたんだ
私たちが離れるはずがないとも思っていた
こんなに一体感を感じられる人はいなかったからあなたも同じだと思ってた

でもあなたは結婚してしまった
当たり前だよ
間違ってない
幸せに生きてほしいというのが私の願いだった
私は子供を選んだんだから 

そもそも私たちが結ばれるはずない
あなたにもそう言われたことがあった
そんなふうにきちんと言ってくれたのに
一緒に住む家を探してくれたりしていたこともあって 心のどこかでは期待していた

彼は自信がなかったんだろう
私の知り合いで連子を引き取って一緒になった人がいるけれど
その人は自信がみなぎっていて つまり甲斐性がある人だから、そんなことができるのだと思うし、何より奥さんもそうさせるだけの価値がある素敵な人なんだろうと思う

私は自己価値観が低いから
待っててなんて言えるはずなかった

一つ明らかなことは

私はあなたよりも子供を選んだということで
これは私の意思によって決めたことだ
それに責任を持たなきゃ
こうなることはわかっていた
あなたを選べばまた違う苦しみがあっただろう

15年も忘れられずに苦しみ続けるのは
私への罰なのだろう
そしてこれからも苦しみは続くのかもしれない

これから風の便りにあなたに子供ができたとか
家を買ったとか
出世したとか
いろんなことが聞こえてくるかもしれない
本当に愛しているのなら
あなたの幸せを喜べるはずだ

そしてもしその時苦しくなるのなら
それはあなたも感じていた苦しみなのかもしれない 
あなたを傷つけていたのなら
その分返ってくるのは仕方ない

こうやって書き出してみて心を整理してみても
15年前と何も変わってないとに気づいて愕然とする
ただ
昔はもっと泣き暮らしていたから
周りからバレない程度に振る舞えているのは成長したかもしれない
わたしはあなたの結婚を知って
初めてあなたを失ったとわかったのかもしれない
わかったつもりでいるけれど
やっぱりわかっていないのかもしれない

正直いつて この先どう生きたらいいのか
今の所わからないけど
苦しいのを受け入れて生きていくしかない
最悪 あと数年だけ生きようと言い聞かせれば
なんとか生き延びられるから
そういう心持ちで切り抜けていくしか無い


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