父がやり残していること〜
よろしければ音楽などいかがでしょうか
父がやり残していることをすでに知っている
先日あるクリエイターさんとのやりとりで、父のそんなに遠くはないだろう先のことについて「これからやりたいことや、やり残していることを聞いてあげて下さい」とのコメント返しを頂いた。
(ちなみに現在の父はとても元気である)
父がやり残していることを私はすでに知っている。
本人から聞いているのだ。
かなり衝撃の告白だった
ある女性と連絡をとりたい、と言われたのだ。
今年の春、その年届いた年賀状の整理をしていた時だった。
当然だが年齢に伴い、頂く年賀状の数は減っていき今は数枚になっている。
この数少なくなった年賀状の送り主の中に、父が連絡をとりたいと言う女性がいる。
実はずっと気になっているのだ。と父は語り始めた。
彼女に連絡してみたいんだが変かな。
俺だと変だからお前が連絡してくれんか?
いや、私だと確実に変
私の心の中の声だ
その方は60年以上も前に父の同僚だった女性だ。
私はその頃まだ産まれてもいない。
父は職業柄転勤が多く、在職中は日本中移動していった。
しかし驚くことに、その方との年賀状のやりとりは今年に至るまで60年以上も続いているのだ。
年一度の近況報告で知ったのだろう。
その方は結婚され、娘さんがおられ、そして現在はすでに御主人が他界されたそうだ。
で、それをどんな顔で聞けばよいのか戸惑う私
あくまでも普通の話を聞いているように装うが、どうしても動揺が漏れ出してきてしまうのと、笑う話ではないのにザワザワする。
申し訳ない、打ち明けてくれているのに。
しかしなるべく冷静を保って返した。
少なくとも私が連絡するのはとても変だ。
ただただ怪しい人やん。
そして直接連絡するのはナニだと思うよ
せめて手紙にしときなよ。
あちらもお元気にしておられるかハガキからはわからん。
父が言うには…
確かにあんたに電話かけてもらうのはだめだな。
でも字がすごくしっかりしているから向こうもボケたりはしていないと思う。本人の字だ。
…本人の字ってさ…
お腹の底で少々ニヤついていた私の心が冷静になった。
しかしここで父は
そうだな、手紙を書いてみるかな
と自らこの話を終わらせた。
私ならどうする?
突然どっかのじいさんが
お宅のお母さんと話させてほしいと言ってきたら?
恐怖でしかない。
相手の認知症を疑う。
モヤモヤしながらこの話を聞いてから半年ほどたつ。
お正月というのは、独りになってしまった父にとっては最も寂しさを感じる時だったと思う。そんな寂しい気持ちが父を駆り立てたぐらいであって欲しい。
当時はすぐ姉に報告してダメダダメダダメダと2人で密かに大騒ぎした。
時間が経って変わってきた私の考え
しかし現在私の考えは変わってきている。
来年、いつもより少し長めの年賀状を書いたらどうかと父に提案しようと思っている。
少なくとも父人生の最後の数枚の中の方なのだ。
これまで60年やり取りして下さっていたのだ。
少し長くてもお許し頂けるのではないだろうか。
時間が経つに連れて、私は友人の喪中葉書きを受け取った時の気持ちを思い出していました。
一般的にはいつ「来年はご遠慮します」の挨拶が交わされても良い年齢なんですよね。
落ち着いて考えると父の性格と変わらぬやりとりから、その方は信頼できる友達といったところだったんじゃないかなと思うのです。
唐突に言うので、つい色眼鏡で見てしまいました。
そういえば私自身も会社員時代、頼れる友達は男性でした。
とはいえ、強く思う
想い出は美しいままの方が良い