最初で最後の海外旅行
プライベートの旅行で関東圏以外に進出したことがない。むしろ5本の指に入るくらい旅行をしない。
修学旅行は京都・奈良・日光だった。記憶はほとんどないが、中学生の時に新幹線でUNOを8人くらいでやってたこと、旅館に着いて電車酔いしたのか布団で横になるとゆらゆらしている感覚に陥り、寝れなかった。
寝れない同級生が二人いて、旅館特有の窓際に着いているテーブルと椅子に買った八橋を広げて、みんなを起こさないようにヒソヒソと話をすることにした。
中学生なんてちょっとしたことで笑いに変わる。声を出さないように私たちは肩を振るわせて夜を明かした。これらの記憶しかほぼない。
高校生になると、なんと日本を出てオーストラリアへ行った。急な海外。なんでオーストラリアなのかは知らない。ここの記憶は流石にいくつかある。
日本国内でさえも行動力が無いに等しいのに話のネタにしても本当に行ったよな?という感覚になる。
ちなみに、当たり前にパスポートは有効期限が切れている。
グレートバリアリーフに行った。珊瑚が綺麗だった。しかし海洋恐怖症のため、浅瀬でしか遊ばず泳ぐことはしなかった。
あとはデカいワニとか全く動かないコアラを見た。
オーストラリアの日差しは日本よりも強いと聞いたことがある。まさに海に行った後、みんなして背中を日焼け、もはや火傷だった。制服を着るのも痛い。リュックを背負えないほど。
ホームステイの日、お世話になる家族のお母さんが迎えにきてくれた。車の中で自己紹介をしていると、私の名前に食いついて爆笑していた。本名が英語だとダジャレになっていると。苦笑いするしかなかった。
牛を何頭も飼育している家庭で、敷地がバカデカく家が二つあった。高校生の私たちは驚きで目が飛び出た。
そんな中、真っ先に日焼けを痛そうにしていることに気付いたお母さんは「Oh〜〜」と言いながらなんの成分が入ってるか分からないジェルを背中に塗ってくれて、優しさを感じた私たち。
たしか、そのお母さんには胸元に蝶のタトゥーがバァンと入っていて、カラッとした笑い声の栗色のショートヘアだったと思う。名前を思い出せないのは申し訳ない。
家の中には12月に行ったということもあってデカいクリスマスツリーと、サンタクロースがサーフィンしているポスターが貼ってあった。ファンキー。
小さな滝がある広場へ連れて行ってくれ、お弁当まで用意してくれていた。私たちは美味しいと喜びながら食べていたが、お母さんはサラダしか食べておらず、「どうしてサラダだけなの?」と聞くと「ダイエット中なの」と恥ずかしそうに答えていて可愛かった。
まさに海外だなぁと思ったのは、夜ご飯がバーベキューだったのだけど、カンガルーの肉をお父さんがバーニングしていたのを見た時。あと料理の数の多さ、量の多さに圧倒された。味は美味しかった。
その後に二つあるうちの一つの家で寝泊まりさせてもらうことになり、二段ベッドがこれまた二つ。4人でのホームステイだったためちょうど良かった。
しかし、事件が起きる。
シャワーを浴びるために通らねばならない廊下に見たこともないデカさの蜘蛛がいた。
私たちは震え上がり、でも真夏の暑さにさらされた体で寝るわけにはいかない。どうするかを必死に考えた。
幸い、蜘蛛は壁にいた。
1人がシャワー室へ向かう際に他の3人が見守り、帰りも見守る作戦を決行。至近距離で見たくもない蜘蛛が動こうものなら悲鳴をあげてしまう。
裸足で物音を立てないようにして無事に全員がシャワーを浴びることに成功。二度とあんな経験はしたくない。
オーストラリアは暑い国ということもあって野生の生き物はデカいんだなと思った。バーベキュー中に蛙がそばで鎮座していたのを見た時も拳くらいあった。
そして朝、私ともう1人が先に起きた。リビングに出ると、お父さんと孫がトラクターのようなものに乗って牛の世話をしに行くところだった。
「君らも乗って運転しなよ!」とお父さんに言われたが、当たり前に無免許のため渋った。結局、孫(多分5歳くらい)が余裕で運転しているのを見て「ええか」と、乗ることにした。
流石に1人では事故る危険性があったため、一緒に乗ってもらったが、怖さと楽しさが混ざって「うおおお…」と言いながらバレーボールくらいある牛のうんこを眺めた。
朝ごはんの時間になり、席につく。するとガラスボールになみなみとフルーツポンチが作られていた。海外の量すぎる。
折り紙を教えたり、写真を撮ったり、蜘蛛事件以外は本当に楽しかった。ちなみに高校生の英語力のため、分かりやすい英語で会話してくれたのも優しさだなと思う。
帰る時、お母さんがハグをしてくれた。大きめの体に包まれる安心感と優しさ、寂しさから少し泣いた。もうあれから10年は経っているが、今も元気でいてくれるといいな。
一緒に行った友達はそこで飼われていた犬の名前をメールアドレスに入れて変更していた。だから覚えている。ウェンディ。茶色と白が混ざった中型犬。可愛かったな。
海外に行くことはこの先あるのか想像もつかない。だから最初で最後になるかもしれない。
あちらが夏の時にオーストラリアに行く予定がある人にアドバイスをするなら、日焼け止めはこまめに、強いSPFのものを塗り直ししないと皮膚が終わるということ。あと虫に気をつけてほしい。
そんなこんなで、旅行は楽しいということは知っているがなかなかしない私にとってはいい思い出として大切にとってある。もう一度行きたいかと聞かれたら、夏以外が良いな。
読んでくださりありがとうございました。
また来週!