ユーザリサーチは過大評価されている?
User Research is Overrated という記事を取り上げます。
ユーザリサーチは金と時間の無駄?
Design Sprints have revealed an expensive waste of time in the modern design process.
頭から挑発的です。デザインスプリントによって、現在のデザインプロセスの、金のかかる時間の無駄遣い(= ユーザリサーチのこと)が明らかになった。
First things first: Yes, I know you might not like the title of this article. Chill, just read it and try not to take it as a personal attack. I love you, deeply.
その後ですぐに断りの文章。このタイトルにムカつくかもしれないけど落ち着いて。個人攻撃だと思わずに読んでよ。アイラブユー。
ユーザリサーチよりもユーザテスト
It was part of our UX/Product Design package: 2–4 weeks of up-front user research. We interviewed people, we created personas, we made empathy maps… It’s not that we were trying to milk our clients of as much money as possible, we just didn’t know better, this was the design process!
デザインエージェンシーにプロジェクトを発注すると数週間のユーザリサーチがパッケージでついてきます。この記事の筆者の働くAJ&Smartでも2-4週間のリサーチがプロセスに含まれていて、インタビュー、ペルソナ作り、共感マップとおなじみのやつがセット売り。"milk money" は「金を搾り取る」。ぼったくろうとしてたわけじゃなくて、それがプロセスだしもっと良い方法を知らなかったんだ。
It took a while, but eventually we started to notice a worrying pattern: the useful data came from the first user tests, not the research. In fact, more often than not, the personas and other documentation just started gathering dust while the rest of the process continued.
でも悩ましいパターン(worrying pattern)に気づきます。役立つデータは手に入るのはリサーチからではなくて最初のユーザテストから。大抵ペルソナや他の(リサーチ)ドキュメントは埃をかぶる(gather dust)羽目になります。
GV(Google Ventures)のスプリントプロセスでは最初のリサーチはすっ飛ばして5日目にはプロトタイプを持ってユーザテストを行います。筆者はこのプロセスに共感し、実際にやってみて確信します。
The Design Sprint process exposed that our own design process was mostly filler!
デザインプロセスのほとんどは隙間を埋めるための詰め物(filler)だったんだ!
記事の残りと感想
AJ&Smart を検索すると「AJ&Smart: Design Sprint Agency | Google Design Sprints」と書いてあるので、スプリントを売りにし出した会社のポジショントークとも取れます。「僕らGoogle直伝のスプリントできますよ、えへへ」。
とはいえ全体の論旨には概ね賛成できると思いました。ユーザリサーチを行う時には既存のプロダクトや環境をもとにしたデータを取ることになりますが、新しいプロダクトを導入した時に何が起こるかはよくわかりません。簡易なものでもユーザが実際に触って反応できるものを用意して行動を観察する方が学べることが多いことはよくあります。
Let me be clear: in both cases we are just making assumptions.
どっちにしろ仮定をもとにデザインしていることに変わりはない、というのは大事な認識です。早く試して早く仮定を試す。早く失敗する、というのは正しい姿勢だと思います。ウィル・スミスも言っています。
[余談] デザインスプリントのプロセスを使う場合、「最後のユーザテストで結果が芳しくなかった場合」のことは考えておく必要があります。忙しいステークホルダーを巻き込んでの一週間なので、なんとか幸せにまとめて終わりたくなりますが、もしテストで仮説が否定されたなら冷静に受け止める必要があります。間違いに気づくことは素晴らしい成果なのですが、正しいマインドセットが共有されていないとプロセス全体が失敗だと見なされたり揉め事が起きたりすることがあります。
最後に、筆者も述べていますがプロセスはケースバイケースです。解こうとしている問題そのものが曖昧な場合、例えば緊急治療室を改善する、と言ったケースでは事前のユーザリサーチが重要になります。
And yes, there are cases where up-front research makes a lot of sense, especially if it’s not clear what sort of problem exactly needs to be solved (i'm thinking here of improving the Emergency Room of a hospital for example).
あと個人的な経験から言うと、既存の調査や資料に当たって知りたい疑問を絞り込む、ヒラメキを得るために一日だけ現場に行ってみる、など短期間でも効果的なリサーチ方法がある時も。月並みですが、プロセスはテンプレ化しすぎず何が効果的かを常に考えながらデザインできると良いですね。
以上です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?