ボンネットの上から見た一瞬の地獄 #1
「あと3ヶ月で高校受験」
私は、中学生活で一番大変な時期の真っ只中にいた。周りは志望校への合格に向けて机に向かう日々が続いていた。しかし、私は部活動の関係から第一志望が自身の偏差値より低めの高校を志望していたのであまり勉強に本腰を入れていなかった。だが、どうせ試験を受けるならとそれなりに勉強を頑張っていた。
そんなある日のこと。私の仲がいいクラスメイトが勉強の息抜きに、数人で遊ぼうということで誘ってきた。これまで部活動や塾などで、休日に会う機会がなかった奴らだったので新鮮な感じだった。私は喜んでその話を受け入れた。朝から夕方まで会おうと。公園で体を動かしてから友人の家でだべろうと。中学生男子らしいアクティブかつ充実したスケジュールだった。
夕方まで遊んだ後の予定は元々入っていた。私の自転車の調子がよろしくなく、業者に出したところ、部品の不備が発覚したため、修理に出していた。代車を借りていた私はその返却と修理が終わった愛しのマイ自転車を返してもらうという予定があった。
親には自転車の返却の件も含めて、帰宅が夜になることを伝えた。母親は忙しかったのか、玄関にいる私を台所から声だけで見送った。
目的地の公園や友人の家がある地域は、私の家から少し離れていた。他数名とは割と近所だったこともあり、3人で仲良く自転車を漕いで目的地へと向かった。この時から、私の他2人はすごく楽しそうだった。2人は県内でも有数の進学校を第一志望校としていたので、死に物狂いで勉強に明け暮れていた。こういう息抜きも楽しいのだろう。私はそんな2人の姿を見てなんだか嬉しくなった。
そして長々と自転車を漕ぎ、目的地に到着する。代車の自転車はお世辞にも良い自転車とは言えない。ギア変速も無く、ペダルは一部割れている。もっといい代車を用意して欲しかった。てか、渡された時に気がつけなかった私も悪いのか?どうでもいいことだが、私はマイ自転車のありがたさを身をもって感じた。そして決心する。
「マイ自転車が帰ってきたら、大切に乗ろう。」
#2へ続く。