こちらを随時、翻訳していきます。和訳や直訳以上に解釈を入れた翻訳として、日本語でも分かりやすく読めるよう努めます。
v5.0はβ版なので、どの原文を訳したものなのか分かりやすいよう原文と翻訳を交互に記載します。
「憲法」なので、読めばすぐに理解できるものでもないと思います。私自身もまだまだ理解が及んでいないところがたくさんあるので、今後、章ごとに解説や解釈をまとめていこうかなと思っています。
なお筆者は、(一応) 帰国子女で某大学英文学科卒なので、一定レベルの担保はご安心いただけると嬉しいです。。気になるところやアップデート情報はコメントいただけると大変ありがたいです。それでは始めます!
以下は、9 May 2020 に最終コミットされた状態の憲法です。
序章
「批准者」(※1) は 「組織」 の正式な権力構造としてこの 「憲法」 を採用する。組織のガバナンスとオペレーションに参加する批准者や全ての 「パートナー」(※2) は、ここに定義されるルールやプロセスを実行しなければならない。 批准者やその後継者はこの憲法を採用した際の権限でこの憲法を修正したり、廃止したりする。憲法の修正は書面で行い、全てのパートナーに周知する必要がある。
(※1) 「批准者」とは、憲法の採用可否の決定を下す人のこと
(※2) ホラクラシーでは組織に関わる全ての人を「パートナー」と呼ぶ
第1章: 組織構造
1.1 ロールの定義
「ロール(役割)」 とは、組織を代表して誰かが担い、意欲的に活動していくもので、これが組織を構成する。ロールには、説明的な名前がつけられ、以下のうち1つ以上が定義される。
(a)「目的」:ロールが、追求もしくは作り出す可能性や成果物
(b)「領域」:そのロールだけが、目的のためにコントロールしたり制限することができる資産やプロセス。1つとは限らない。
(c)「責務」:ロールの目的に近づけるためや、他のロールのために、ロールが管理および実行する継続的な活動。1つとは限らない。
ロールは、権限の付与と制限に関することや、ロール内の活動に関する特別なルールを定めた 「ポリシー」 を持つこともできる。
1.2 ロールへのアサイン
「ロールへのアサイン」を領域にもつロールは、誰をどのロールにアサインするかコントロールすることができる。 そのような領域をもつロールに就いている人は、本人が承諾すれば誰に対してもロールにアサインすることができる。アサインされるパートナーは複数人でも良い。このように「ロールへのアサイン」を領域にもつロールにアサインされた人はつまり 「ロールリード」 となる。ロールリードは別段の合意がない限り、いつでも辞めることができるし、アサインをコントロールしている人は誰でもロールリードのアサインをいつでも解くことができる。ポリシーにより、ロールへのアサインや解任を制限することができる。
1.2.1 デフォルトのアサイン
誰もアサインされていないロール(空きロール)があった場合、そのロールのアサインをコントロールする人が自動的に空きロールのロールリードと見なされる。
あるロールのロールリードに組織のパートナーが含まれていない場合、アサインをコントロールするパートナーが自動的にその空きロールのロールリードと見なされる。しかし、このアサインのデフォルトは、通常通りアサインされた人が積極的に責任や義務を果たしていない場合にのみ適用される。
1.2.2 焦点を絞ったアサイン
ロールへのアサインを行う人は、ある特定の分野や背景に焦点を絞ってアサインをすることができるが、そのロールの定義は全てその分野や背景と関連している必要がある。焦点を絞ったアサインが行われた場合、それぞれが完全に独立したロールのように扱われ、そのロールの目的・領域・責務はアサインにより指定された焦点(分野や背景)の中でのみ適用される。
1.3 ロールに就いた人の責任
ロールに就いたら、あなたは以下の責任を負う。
1.3.1 ひずみを処理すること
ロールの目的と責務に関して、現状と理想の状態を比較し、ギャップ(=ひずみ)を見つけ出す義務がある。ひずみを特定したら、それらが解決するよう努力する責任がある。
1.3.2 目的と責務を処理すること
あなたは以下を明示することにより、ロールの目的と責務をどのように実現していくか常に考える責任がある。
(a) 「ネクストアクション」:優先順位を考慮しなければ、すぐに行動に移すことができる有用なアクション
(b) 「プロジェクト」:優先順位を考慮しなければ、目的の実現を前進させることのできる有用な具体的な成果
1.3.3 プロジェクトをブレイクダウンすること
自分のロールが遂行中のプロジェクトに対して、それぞれ定期的にネクストアクションを定義する責任がある。
1.3.4 プロジェクト・ネクストアクション・ひずみを追っていくこと
自分のロールの全てのプロジェクトとネクストアクションをリストに書き出して、進捗を追っていく責任がある。ひずみに関しても、解決したいものが最低でもプロジェクトかネクストアクションに落としこまれるまでは、進捗を追わなければならない。また、これらのリストを定期的に見直し、更新することで、ロールの仕事に対する信頼できる情報源として維持する責任もある。
1.3.5 ネクストアクションを実行すること
そのロールとして行動する時間がある時はいつでも、取るべきネクストアクションについて考え、組織に最も価値を提供できるものを実行する責任がある。
1.4 サークル
「サークル」 は共通の目的持つロールとポリシーをまとめる入れ物である。サークル内のロールとポリシーは活動的な 「ガバナンス」 を構成する。
1.4.1 ロールのブレイクダウン
ロールはそれぞれサークルでもある。ロールの内部にあるサークルは、ロールやポリシーを保持して、そのロールの業務を分解して整理することができる。ただし、別表Aにて定義されているロール(サークルリード・サークルレップ・ファシリテーター・秘書)はそれ以上ブレイクダウンされることがないので、これは当てはまらない。
ロールの内部にあるサークルは、外側にサークルに対して 「サブサークル」 と考えられ、その外側にあるサークルは 「スーパーサークル」 となる。
1.4.2 領域の委譲
サークルがロールの1つに領域を付与すると、そのロールのロールリードはサークルを代表してその領域をコントロールすることができる。ロールに付与される領域は、サークル自身の領域に該当するものか、サークル内部のプロセスにのみ関連するものに限られる。
ロールが領域をコントロールし始めると、そのロールは自身のガバナンス内で領域を規定するポリシーを作ることができる。ただし、領域をロールに委譲してもなお、サークルはその領域を管理するポリシーを定義する権利がある。矛盾が起こった時は、サークルが規定したポリシーが、ロールが規定したポリシーよりも勝る。
ロールに領域を与えても、明白に指定されていない限り、サークルがもつ金銭や資源の支出をコントロールする権利を委譲することにはならない。
1.4.3 アンカーサークル
組織全体の目的を持った最も大きなサークルは 「アンカーサークル」 となる。アンカーサークルは、その組織がコントロールする全ての権限と領域を保持する。そこにはスーパーサークルや責務は存在しない。アンカーサークルはポリシーによってアンカーサークルの目的を変更することができる。
批准者はこの憲法を採用する際に、アンカーサークル内の初期構造や全てのガバナンスを定義することができる。
1.4.4 サークルへのリンク
ロールは、他のサークルまたはそのスーパーサークルのポリシーにより招待されると、そのサークルにリンクすることができる。
他のサークルにリンクされると、そのロールはそのサークルのガバナンスの一員だと見なされる。サークルはロールに対して何かを追加したり、その追加をあとで変更したりできるが、ロール自体を削除したり、別のサークルにより追加されたものを変更したりすることはできない。ロールへのアサインの追加や変更に関しては、元のサークルが権限を持つ。ロールがリンクしたサークルは、スーパーサークルとはならず、ロールが持つ内部サークルもそのサークルのサブサークルとはならない。
サークルは、ロールを招待した際に使用したポリシーを削除するか、そのポリシーで定義された他の仕組みにより、ロールのリンクを解除することができる。ロールは、自身のポリシーやスーパーサークルによる定めがない限り、自らサークルとのリンクを解除することができる。サークルとのリンクが解除されれば、そのサークルにより追加された全てのガバナンスは自動的に削除されることになる。
1.4.5 ロールを横断したサークルの作成
2つ以上のロールは、ロール同士で共通の目的を管理するためにいつでも新しいサークルを作ることができる。それには、創設ロールが新しいサークルの目的(後にポリシーにより変更される場合もある)に合意する必要がある。その新しいサークルは、創設ロールがリンクされ、リンクを招待したポリシーを持ってスタートする。このようにして作られたサークルは、基本的にスーパーサークルや責務、そして領域を持たないが、別のサークルでそれらのどれか一つをコントロールする権限をいずれかのロールに与えていた場合は例外となる。このようなサークルは、リンクされたロールがなくなったら、直ちに解散となる。
1.5 サークルリード
ロールリードとなっている人は、自動的にそのロールの内部サークルの 「サークルリードロール」 となり、その立場で行動しているときはつまり 「サークルリード」 となる。サークルリードロールは別表Aで定義づけられている。スーパーサークルのないサークルは、サークルのポリシーに別段の定めがない限り、サークルリードは存在しない。
1.5.1 優先順位と戦略の定義
サークルリードは、ロール間での優先順位の混乱が起きないよう、サークルがこれから達成する成果の価値を相対的に判断しなければいけない。サークルリードはサークル内の優先順位を決める 発見的問題解決法 となる 「戦略」(※) を一つもしくは複数定義することができる。
1.5.2 外部参照の手順
サークル外のガバナンスが、サークル自体またはサークル内のロールを参照する場合、サークルリードはその参照を更新して、代わりにサークル内の別のロールを参照することができる。この明確化は、そのサークルのガバナンスの変更とはみなされない。
1.5.3 サークルリードロールの修正
サークルは、サークルリードロールの目的を修正したり、ロールを削除したりすることはできない。
サークルはサークルリードロールに責務や領域を追加することができ、それらは全てのサブサークルのサークルリードロールにも適用される。サークルは、責務や領域をそのサークル自身のサークルリードロールのみに追加することはできない。
サークルは、そのサークル自身のサークルリードロールが持つどんな責務や領域、権力や機能でも削除することができる。これを行うには、サークル内の他のロールにそれらを移管するか、それらを実現する他の手段を定義する必要がある。これを行うことで、それらの権限は、他のロールへの委譲が続いている限り、自動的にサークルのサークルリードロールから削除される。
第2章: 他のロールに対する義務
ロールリードとして、組織内の他のロールリードが自分のロールを代表して行動しているときには、以下の義務がある。
2.1 透明性の義務
要求があれば以下の全てにおいて透明性を提供する義務がある。
(a) プロジェクトとネクストアクション:自分のロールが追っている全てのプロジェクトとネクストアクションを共有しなければならない
(b) 相対的な優先度:自分のロールのプロジェクトやネクストアクションとあなたの注意を引くあらゆる物事の相対的な優先度の判断を共有しなければならない
(c) 見積もり:自分のロールのあらゆるプロジェクトやネクストアクションがいつ完了するかの見積もりを提示しなければならないが、これは現状や優先順位を考慮した大雑把な見積もりで十分である。詳細な分析や計画は必要ないし、この見積もりを厳守する必要もない。ガバナンスによる定めがない限り、この見積もりが変わったとしても、それを守ったり、見積もりを伝えた相手に報告したりする義務もない。
(d) チェックリスト項目:ロールもしくは組織のパートナーとして、繰り返し行われるタスクが完了しているか確認する必要がある。これらの確認を定期的に共有することを要求されれば、彼らにとって有用でないとあなたが思う時まで続ける必要がある。
(e) 指標:ロールもしくは組織のパートナーとしてあなたが抱えているあらゆる指標を共有しなければならない。これらを定期的に共有することを要求されれば、彼らにとって有用でないとあなたが思う時まで続ける必要がある。
(f) 進捗状況:最後に共有した時以降の、自分のロールかロールのプロジェクトの進捗の概要を共有しなければならない。これらを定期的に共有することを要求されれば、彼らにとって有用でないとあなたが思う時まで続ける必要がある。
2.2 処理の義務
以下のように、あなたはメッセージや要求を迅速に処理する義務がある。
(a) 処理の要求:他のパートナーから、あなたのロールの目的や責務、もしくはプロジェクトを処理するよう依頼されることがある。その際、処理を進めるために実行できるネクストアクションがあれば、それを決めて伝えなければならない。実行できるネクストアクションがなければ、実行の前に何を待っているのか伝えなければならない。もしそのネクストアクションや待機中のものが、ロールが追求する広範の結果の一部である場合、それをプロジェクトとして記録し、伝える必要もある。
(b) プロジェクトとネクストアクションの要求:他のパートナーはあなたのロールに具体的なネクストアクションやプロジェクトを引き受けるよう依頼することができる。その依頼が、優先順位を考慮しなければ、あなたのロールが引き受けることに意味があると考えられる場合は、その依頼を引き受け、状況を追っていかなければならない。もし引き受けないのならば、その理由を説明するか、代わりに依頼者の目標を達成すると思われる別のものを提案する必要がある。
(c) 領域への影響の要求:他のパートナーが、あなたのロールが管理している領域に影響を与えることの許可を求めることがある。それによってあなたのロールの目的や責務を果たす能力を低下させる理由がない場合は、許可しなければならない。もしそうした理由があるのであれば、要求者に説明しなければならない。
(d) 情報の要求:他のパートナーは、あなたのロールに関連した質問をしたり情報提供を要求したりすることができる。あなたはそれに対して、少なくとも簡単な答えや、持ち合わせている情報で誠実に答えなければならない。
2.3 優先順位に関する義務
あなたは以下に従って、優先順位をつける義務がある。
(a) 処理:通常、他のロールからのメッセージに対する処理を、自分のネクストアクションを実行するよりも優先しなければならない。ただし、十分に迅速であるならば、都合の良いタイミングにまとめて処理しても良い。メッセージの処理には、この章にあるあらゆる義務に関する内容や、メッセージをどのように処理したかを要求に応じて共有することも含まれる。これにより追加されたネクストアクションやプロジェクトの実行は、処理には含まれない。
(b) 会議:自分のネクストアクションを実行するよりも、この憲法に定義されているあらゆる会議に出席することを優先しなければならない。ただし、特定の会議においてこの優先度が明白に要求されている場合に限る。もし会議の時間帯に既に別の予定がある場合は出席を断ることができる。
(c) サークルの優先順位:何から取り掛かるか決める際、自分のロールが含まれるサークルもしくはスーパーサークルのあらゆる公式な戦略や関連する優先順位を考慮しなければならない。 公式な優先順位とは、サークルリード、または優先順位の衝突を解決し、サークルの戦略を決める権限を持つ他のロールやプロセスによって定められたものである。あなたはこの公式の優先順位を、個人的な優先順位や、自分の組織に対する優先順位の感覚よりも重要なものとして扱う必要がある。
(d) 締め切り:組織やサークルのあらゆる公式な戦略や優先順位に、何をいつまでに完了させるかを明確にした締め切りが盛り込まれていたとしても、あなたは必ずしもその締め切りを守らなければならないわけではない。その代わり、その締め切りを守るための行動を、他のサークルのための行動よりも公式に優先しているのだと捉え、適切に行動しなければならない。サークルリード、またはロール間の優先度の衝突を解決する権限をもつ他のロールやプロセスは、この優先順位づけのルールを覆すことができる。
第3章:タクティカルミーティング
ロールとしてあらゆるパートナーは、他のロールに彼らの責任や義務を果たすよう 「タクティカルミーティング」 を開催することができる。
3.1 参加者
タクティカルミーティングを開催するパートナーは、その会議に参加してほしいロールを選ばなければならない。それらのロールの全てのロールリードは、開催者が一部のロールリードに限定しない限り、招集される。
3.2 ミーティングプロセス
タクティカルミーティングの開催者はファシリテーターを見つけなければならない。ポリシーによる定めがない限り、ファシリテーターは以下のプロセスを使わなければならない:
(a) チェックインラウンド:参加者は順番に、自分の今の状況を共有したり、会議の開始にあたって何かコメントをする。これに対する応答は許可されていない。
(b) チェックリストレビュー:参加者はそれぞれ、ミーティングで定期的に報告している、繰り返し行われるアクションが完了しているか確認する。
(c) 指標レビュー:参加者はそれぞれ、自分のロールがミーティングで定期的に報告している指標があれば共有する。
(d) 進捗状況の共有:参加者はそれぞれ、ミーティングで定期的に報告している全てのプロジェクトや取り組みの進捗を説明する。共有する進捗は、前回の共有以降に更新された内容だけでよく、作業の一般的な状況の共有は不要である。
(e) アジェンダの構築:参加者は、このミーティング内で処理すべきひずみのアジェンダを構築する。各参加者は希望するだけの数のアジェンダ項目をそれぞれ短い言葉で追加することができる。ここでの説明は不要で、ディスカッションも許されていない。参加者はこの手順後、既出のアジェンダを処理している間にも、さらにアジェンダ項目を追加することができる。
(f) ひずみのトリアージ:各アジェンダ項目を処理するため、そのアジェンダ項目を提出した人は、パートナーとしての一般的な立場の参加者や、あるいは参加者が代表しているロールに対して、要求を行うことができる。ただし、ロールへの要求は、要求者がそのミーティングで代表しているロールとしてのみ行うことができる。ファシリテーターは全てのアジェンダを処理できるよう時間を管理し、時間がなくなった場合には処理を中断することができる。
(g) クロージングラウンド:参加者は順番に、ミーティングの終了に際し感想を共有する。これに対する応答は許可されていない。
サークルのポリシーは、サークルのロールにより開催されたタクティカルミーティングの代替プロセスを定めたり、規定のプロセスの修正をすることができる。
3.3 欠席者の代理人
タクティカルミーティングに招集されたロールが、何らかの理由でそのロールを代表できない場合、そのロールがいるスーパーサークルのサークルリードが、その会議中は代わりにそのロールを代表することができる。
第4章:権限委譲
この憲法を採用することにより、批准者は、批准者が委譲する権限を持たない場合を除き、組織を統治し運用していく権限を、このルールとプロセスに委ねるものとする。 パートナーとしては、この憲法を採択する前に批准者が有していた権限の範囲内で、憲法によって付与された権限に依存することができる。
4.1 ロールの権限
ロールリードとして、あなたは自分のロールの目的や責務を果たすために、この憲法で定められたルールに違反しない限り、あらゆる行動や決断をする権限を持つ。
自分が取っていく行動に優先順位をつけたり選定したりする際、それぞれの行動の組織にとっての相対的な価値について、自らの合理的な判断を下す権限がある。
また、この憲法や憲法に記された全ての権限についても、自らの合理的な判断に基づいて解釈することもできる。そしてさらに、直面するあらゆる状況においてこの憲法がどのように適応されるか解釈し、あなたのその解釈に基づいて行動することができる。ただし、全てのガバナンスを、ガバナンスに含まれるサークルの目的や責務の観点を踏まえて解釈しなければならない。矛盾する解釈であれば、使うことはできない。
4.1.1 ポリシーに違反してはいけない
ロールとして行動している間、ロール自身のポリシーやそのロールが含まれるサークルのいかなるポリシーにも違反してはならない。
4.1.2 領域に影響を及ぼす場合は、事前に許可を取ろう
自分のロールの役割を果たすために、自分のロールの領域に影響を与え、コントロールする権限を持つ。
自分のロールを含むサークルが保有し、他ののどこにも委譲されていない領域や、サークル自体が影響を与えうるような領域にも影響を与えることができる。しかし、もしこの影響を取り消すことが著しく困難だったり、コストがかかる場合は、事前に許可を得る必要がある。
許可を得ない限り、自分のロールが含まれていないロールやサークルの領域に重大な影響を与えたり、コントロールすることはできない。また同様に、他の主権者が所有する領域も許可なく影響を与えてはいけない。
ある領域に影響を与えるために許可が必要な場合、その領域をコントロールしている人から許可を得ることができる。あなたは、取りたい行動の意図を表明し、また関係する領域の人からの異議はないか確認することによっても許可を得ることができる。その際には、回答を得るのに妥当な時間待たなければならない。時間内に異議を唱える人がいなければ、組織の中で周知が行き届いたいずれかのロールがもつ領域に影響を与える許可を得たことになる。書面での周知は、そのチャンネルで通常メッセージを読んでいる全ての人に届いたと見なすことができる。このように与えられたあらゆる許可は、周知した特定の行動を取っている間だけに適用される。ポリシーによりこのプロセスを変更したり制限したりすることができる。
4.1.3 金銭の支出の前に許可を得よう
許可を得るまでは、ロールとしていかなる金銭や資産の支出もすることはできない。この権限は、支出する目的でそれらの資源をコントロールする権限を既に持つロールやサークルにより与えられることになる。サークルの重要な財産を処分する場合や、サークルの権利を著しく制限する場合も、支出と見なされる。
支出の許可を得るため、欲しい権限をもつロールやサークルに対し、書面で支出の意図を知らせなければならない。この書面は相手のロールのロールリードをしている全てのパートナーがいるところか、そのサークル内の人が通常見るところで共有しなければならない。また、その書面にはその支出の理由と、支出をするロールを記載する必要がある。その後、検討と回答をするのに妥当な時間待たなければならない。書面を受け取った人は誰でも、追加で検討するためにそれをエスカレーションすることができ、その間あなたは支出を進めることはできない。ただし、相手のロールのロールリードか、サークルのサークルリードはこのエスカレーションを取り消すことができる。妥当な時間が過ぎ、エスカレーションが起こらなかったら、あなたのロールはそれらの資源をコントロールする権限を得る。それらを自分が述べた目的のために使うことができるし、さらに他の人に権限を与えることもできる。あなたにコントロールする権限を与えてくれたロールやサークルは、今度はこの権限を失うことになるが、そのロールリードやサークルリードはいつでもこの権限委譲を取り消すことができる。
ポリシにーより、このプロセスをどのような方法にも変えることができ、また、あるロールに直接サークルの資源を支出することをコントロールする権限を与えることもできる。
4.2 個人的意思決定
組織のパートナーとして、状況によっては自分のロールの権限を超えた行動や、この憲法のルールを破る 「個人的意思決定」 を取る権限がある。
4.2.1 個人的意思決定が認められる状況
以下の全てに当てはまる場合に限り、個人的意思決定を取ることができる。
(a) あなたは組織にあるいくつかのロールとして、真摯に目的を果たそうと行動したり、責務を実行したりしている。
(b) 自分の行動により、今後組織で作られる可能性のあるひずみよりも、より多くのひずみを解決したり防げたりすると確信している。
(c) 自分の行動により、自分に権限を与えられている支出量を超えて、組織に支出させることがない。
(d) もしあなたの行動がポリシーや領域に違反する場合、許可を得たり、ガバナンスを変更したりして遅れてしまうことで、多くの価値が失われてしまうと確信している。
4.2.2 コミュニケーションと復旧
個人的意思決定を取ったら、重大な影響を及ぼされたと思われる全てのロールリードに自分の行動を説明しなければならない。それらのロールリードから要求があった場合は、自分の個人的意思決定に基づいた行動により発生したあらゆるひずみを解決するために、さらなる行動をする必要がある。影響を受けたロールリードから今回のような個人的意思決定をしないで欲しいと要求があれば、今後は慎まなければならない。
あなたはこのコミュニケーションと復旧を通常の業務よりも優先しなければならない。ただし、あなたの個人的意思決定に影響を受けた全てのロールが含まれるサークルのサークルリードは、この既定の優先順位を変更することができる。
4.3 過去の権威の扱い方
この憲法を採用する前から実際に組織に存在していたあらゆるポリシーやシステムは、憲法のプロセスを経ずに作られた権限や制約を含んでいたとしても、憲法の採用後も完全に効力を持ち続ける。しかし、これらの古いポリシーやシステムは、それ以上追加されたり変更されたりすることはなく、それらに代替されるものや矛盾するものがこの憲法のプロセスで作られればすぐに消滅することになる。
それ以上に、組織のパートナーとしてのあなたの全ての責任と制約は、この憲法とそのプロセスの結果や、組織を代表として行動している間は組織に対する法的義務により生じるものである。暗黙の期待や制約は存在しないので、いかなる重みや権威も生まれることはない。また、この憲法を採用する前の組織の古い権力構造で発令されたいかなる命令も同様である。
第5章:ガバナンス
サークルのガバナンスを変更するには、ここに定義された 「ガバナンスプロセス」 が必要となる。
5.1 ガバナンスの参加者
サークルにはそれぞれ、ガバナンスプロセスにおいてロールを代表する 「サークルメンバー」 のグループがある。
サークルメンバーにはサークルリードロールを担っている全てのパートナー、およびサークル内のロールのロールリードを担っているパートナーが含まれる。あるロールに複数のロールリードがいる場合は、サークルがガバナンスプロセスにおいてそのロールを代表するパートナーの数を制限するポリシーを採用することができる。
5.1.1 サークルレップ
サークルメンバーの誰でも、サークルの 「サークルレップ」 の交代選挙の要求をいつでもすることができる。このサークルレップは、より広いサークルにおいて、そのサークルの代表となる。選ばれたサークルレップは別表Aに定義された 「サークルレップロール」 となる。
サークルレップを選出する方法は、ポリシーにより別のプロセスが定義されていない限り、ここで定義される統合的選挙プロセスを使わなければならない。サークルレップになる資格があるのは、サークルメンバーだけである。サークルのサークルリードは、サークルレップを兼任することはできない。サークルのポリシーが許可しない限り、同時に複数人がサークルレップを務めることはできない。
選ばれたサークルレップは、ロールとしてのサークルを含むあらゆるサークルのサークルメンバーになり、ロールリードのようにそのロールを代表する権限をもつ。外側のサークルは、ポリシーによってこれらのサークルレップがサークルメンバーになることを制限したり回避したりすることができるが、その場合は、そのロールがサークルを代表することと同等の手段がなければならない。
サークルは自身のサークルレップに対して、責務や領域を追加することができ、またその追加を修正したり削除することもできるが、いかなるサークルもサークルレップロールの本来の目的や責務を修正したり削除することもできなければサークルレップロール自体を削除することもできない。
5.1.2 ファシリテーターと秘書
サークルメンバーが2名以上いるサークルには、別表Aで定義された 「ファシリテーターロール」 と 「秘書ロール」 が含まれる。そのような役割を果たす人は、それぞれサークルの 「ファシリテーター」 と 「秘書」 となる。サークルメンバーは誰でもサークルのファシリテーターと秘書の着任もしくは交代の選挙の要求をいつでもすることができる。
サークルは、ここに定義される統合的選挙プロセスを使ってファシリテーターと秘書を選ばなければならない。いかなるロールやポリシーでもこれらのロールのアサインを決めたり、他の手段でアサインを解除することはできなければ、この必要なプロセスを変更することもできない。ただし、サークルやスーパーサークルのポリシーにより、資格のある候補者を追加したり制限したりすることはできる。
サークルは自身のサークルにおけるファシリテーターや秘書の責務および領域を追加することができ、その追加を修正したり削除したりすることができるが、いかなるサークルもそれらの本来の目的や領域および責務を修正したり削除することはできなければ、それらのロール自体を削除することもできない。
5.2 ガバナンスの範囲
サークルのガバナンスプロセスの中で、サークルメンバーは以下のことを行うことができる
(a) サークルのロールを定義、修正、または削除する
(b) サークルのポリシーを定義、修正、または削除する
(c) サークルのロールやポリシーをサークル内のサブサークルやさらにその中のサブサークルに移行すること。ただし、そのサブサークルの目的や責務を果たす場合に限る
(d) サブサークルやさらにその中のサブサークルのロールやポリシーをサークルに移行すること。ただし、そのサブサークルはもうその目的と責務とは関連がなくなる場合に限る
(e) サークル内で選出されるべきロールの選挙を開催すること
この他の決定は、サークルのガバナンスプロセスによる成果として有効ではない。
5.2.1 ポリシーの範囲
ポリシーは、以下のうち1つ以上の項目で作られる
(a) サークル内にあるロールの権限に対する制約
(b) ロールに対してサークルやサークルリードがもつ権限の付与
(c) サークルのドメインをコントロールしたり影響を与える権限がない人やロールに対する権限の付与。また、権限がある場合はそれの制約
(d) 明示的に許可されている場合、この憲法の既定のルールやプロセス変更するルール
特に明記されていない限り、権限を付与および制限するポリシーは、全てのサブサークルにも適用される。この憲法の既定のルールやプロセスを変更するポリシーに関しては、ポリシーを保有するサークル内にのみ適用されるが、もし明記されていれば、全てのサブサークルにも適用されることになる。後者の場合、元のポリシーで禁止されていなければ、サブサークルは自身のポリシーによりそのポリシーを無視することができる。
5.2.2 無効なガバナンスの排除
全てのパートナーはサークルの秘書に対して、サークルやサブサークル内のあらゆるガバナンスの有効性について判断を仰ぐことができる。秘書が憲法のルールに違反していると結論付けた場合、秘書はそのガバナンスをサークルの記録から抹消しなければならない。その後、秘書は削除した内容とその理由をそのサークルのサークルメンバー全員に速やかに伝えなければならない。
5.3 ガバナンスプロセス
サークルのサークルメンバーは、ガバナンスに対する変更を提案することにより、ガバナンスプロセスを開始することができる。これを行うには 「提案者」 がまず、秘書が許可するコミュニケーション手段を用いて、他の全てのサークルメンバーに 「提案」 を書面で共有しなければならない。共有されたサークルメンバーは、提案内容が明確になるような質問をしたり、リアクションを示したり、その提案を承認することによる懸念を提起することができる。それぞれの懸念事項がここの基準を満たす場合は、それらは 「異議」 となり、異議を提起した人は 「異議申立人」 となる。
各サークルメンバーが提案に意義がないことが確認されると、それは採択され、サークルのガバナンスは変更される。異議が提起された場合は、提案が採択される前に、提案者と各異議申立人はその意義を対処する方法を見つけなければならない。異議が一つ解決されると、全てのサークルメンバーには別の異議を提起する機会が与えられる。サークルは、異議申し立ての期限を定めたポリシーを採用することができ、それを過ぎても回答のない者は異議申し立てがないものとみなされる。
提案または異議申し立てを行う際、サークルメンバーはロールリードやサークルレップとして、サークル内のロールを代表することができる。サークルメンバーはまた、許可があれば一時的にいずれかのロールリードを代表することができる。ただし、代表できるのはその許可の有効期限が切れるか、取り消されるまでとなる。
5.3.1 有効な提案の基準
有効な提案をするために、提案者は以下を満たさなければならない。
(a) 提案者が担うロールの一つとして、処理すべきひずみを述べることができる
(b) そのひずみが示す、過去または現在の実際の状況の例を共有することができる
(c) その例において、この提案がどのようにひずみを減少させられるか合理的な説明ができる
ファシリテーターは、この提案が上記の基準を満たしていないと明白になった時点で、提案を却下しなければならない。
5.3.2 有効な異議の基準
提案を採択することに対する懸念は、異議申立人が以下の基準を全て満たす理由を合理的に説明できる場合にのみ、異議として見なされる。
(a) 提案が、サークルの目的や責務を達成するための能力を低下させうること
(b) 提案が、異議申立人が組織の他のロールを一つも担っていなかったとしても、異議申立人がそのサークルで代表しているロールの目的や責務を達成するための能力を低下させうること
(c) この提案がない場合には、その懸念が存在しないこと。つまり、この提案を採択した時に初めて作られるひずみであること
(d) 提案が必ず影響を引き起こす、または、引き起こす可能性がある場合、重大な損失が起きてしまう前にそれに対応する十分な機会が与えられないこと
上記の基準にかかわらず、提案が憲法のルールに違反する場合には、懸念は常に有効な異議として見なされる。
5.3.3 異議の検証
ファシリテーターが異議申立人に対して、異議が必要な基準を満たしているか、また、どのように満たしているかを尋ねることにより、提起された異議の有効性を検証することができる。 回答を評価する際、ファシリテーターは、異議申立人が各基準に対する論拠を論理的な理由で示したかどうかのみを判断することができる。ファシリテーターは、論拠の正しさや、対処する重要性に基づいて判断することはできない。
提案の採択が憲法を違反するという理由で異議が提起された場合、ファシリテーターはサークルの秘書にその解釈を求めることができる。秘書が違反しないと判断した場合、ファシリテーターはその異議を却下しなければならない。
5.3.4 統合のルール
異議の解決を試みる間、以下のルールが適用される
(a) サークルメンバーにより要求があった場合、ファシリテーターは異議の検証をしなければならない。有効性の基準を満たしていなければ、ファシリテーターはそれを却下しなければならない。
(b) 異議申立人は、異議を解決し、かつ提案者のひずみが対処できるような修正案を見つけなければならない。異議申立人がそのような試みを誠実に行っていないとファシリテーターが判断した場合、異議は放棄されたものとみなし、それを却下なければならない。
(c) 提案の背景にあるひずみ、または提案者がひずみを説明するために共有した例について、それらをより明らかにするような質問を全てのサークルメンバーは提案者に聞くことができる。ファシリテーターが、提案者がそれに対して誠実に答えていないと確信した場合、ファシリテーターは提案が棄却されたものと見なさなければならない。
(d) 異議申立人は提案の修正案を提示し、なぜそれがひずみを解決することになるのか合理的な論拠を示すことができる。そして異議申立人の要求に応じて、提案者はなぜ修正案が、ひずみを説明するために使った例のうち少なくとも一つのひずみを解決することができないのか、合理的な論拠を示さなければならない。必要であれば提案者は、修正案がなぜひずみを解決することができないのかを説明する別の例を追加することができる。提案者がこれを行うことができない、もしくは行う意思がないとファシリテーターが判断した場合、提案は棄却されたと見なさなければならない。
5.3.5 統合的選挙プロセス
全てのサークルメンバーは、サークルレップやファシリテーター、秘書の選挙を要求することによって、サークルのガバナンスプロセスを開始することができる。ファシリテーターは以下の 「統合的選挙プロセス」 を実施しなければならない。
(a) ロールの説明:はじめに、ファシリテーターは該当のロールを明確にし、選挙の時期を決める。ファシリテーターはその選挙に関連する他の情報を提示することもできる。このステップと次のステップの間は、誰も候補者について話してはいけない。
(b) 候補者の指名:サークルメンバーはそれぞれ、そのロールに適任だと思う候補者の名前を投票用紙に書いたり、その他のプライベートな場において指名する。サークルメンバーは自分の名前も起票しなければならず、棄権したり、複数人を指名することはできない。
(c) 候補者共有ラウンド:このステップでは、ファシリテーターはサークルメンバー全員と候補者を共有する。それぞれの候補者に対して、推薦者がなぜその人がそのロールに適任だと思うのかその理由を説明する。これに対して誰も反応はできない。推薦者は、候補者以外に推薦される可能性のあった人について話すことはできない。
(d) 指名変更ラウンド:全ての指名された候補者が発表されたら、サークルメンバーは理由を説明して指名を変更することができる。これに対する反応は許されていない。
(e) 提案の作成:ファシリテーターは、指名数を数え、最も多い候補者を選出する提案を行う。同数の候補者がいれば、ファシリテーターは以下のいずれかを行うことができる
(ⅰ) もし片方の候補者が自らを指名していた場合、その人を提案する
(ⅱ) もし片方の候補者が現状もそのロールを担っていた場合、その人を提案する
(ⅲ) ランダムで暗黙にどちらかを選び、その人を提案する
(ⅳ) 前のステップに戻り、同数の候補者以外を指名していたサークルメンバーに、どちらにかに指名を変更するよう求める
(f) 異議申立てラウンド:ファシリテーターは各サークルメンバーに対して、提案に異議があるか尋ねる。何かしらの異議が出てくれば、ファシリテーターはそれが解決するよう議論することを許すか、提案を棄却することができる。棄却されたら、ファシリテーターは前のステップに戻り、棄却された候補者の指名を全て無視し、代わりに別の候補者を提案できるルールを適用して、別の候補者を選択しなければならない。
サークルは、統合的選挙プロセスにおいて、候補者の指名または提案への回答の制限時間を定義するポリシーを採用することができる。その制限時間に達した後、ファシリテーターは回答しなかった人を残りのプロセスから除外しなければならない。
5.3.6 ファシリテーターと秘書の代理人
ファシリテーターと秘書を担っている人がいない間は、代理人がそれらのロールを務めることができる。代理人はまた、本来のファシリテーターと秘書が出席できない場合や、他の理由で要求された場合に、役目を果たすことができる。
代理人が必要な時は、以下の優先順位で決められる。
(a) 代理人として指名された人
(b) ファシリテーターにはサークルの秘書。秘書にはサークルのファシリテーター
(c) サークルのサークルリード。複数のサークルリードがいる場合は、代理人として最初に立候補した人
(d) 代理人として最初に立候補したサークルメンバー
5.4 ガバナンスミーティング
ミーティング外で非同期的に作られた提案を処理することに加え、それぞれのサークルはサークルのガバナンスプロセスをリアルタイムで実行するため、定期的に 「ガバナンスミーティング」 を開催する。サークルが非同期的に提案を処理している間のどのタイミングでも、全てのサークルメンバーはそのまま進める代わりに、その提案をガバナンスミーティングで処理するよう要求することができ、要求されたら直ちに非同期的処理を中止しなければならない。
サークルの秘書はそのガバナンスミーティングのスケジューリングに責任があり、ファシリテーターはここにあるルールの順序に沿って会議を進行する責任がある。定例開催されるサークルのガバナンスミーティングに加えて、秘書はサークルメンバーからの要求に応じて、速やかに特別なガバナンスミーティングを開催しなければならない。要求した人は、特別なガバナンスミーティングの開催意図と、ミーティングで変更できる内容の制限をさらに指定することができる。これには、特定のひずみにミーティングを集中させることや、特定のロールの変更のみに制限することを含むことができる。その場合、特別なガバナンスミーティングの権限としては、述べられた開催意図に沿ってのみひずみを処理していくことや、述べられた制限の範囲内のみで変更を加えていくということになる。
5.4.1 出席者
サークルの全てのサークルメンバーはガバナンスミーティングに参加することができる。ファシリテーターと秘書に関しては、そのサークルのメンバーでなくとも参加することができる。その場合、彼らはそのミーティングの間は一時的にサークルメンバーとなる。
サークルのサークルレップは、自分のサークルを直接内包するあらゆるサークルの任意のパートナーをガバナンスミーティングに招待することができる。招待は一度に1人のパートナーにのみ行うことができ、自分が代表しているサークルに影響を与えている特定のひずみを処理することを支援するためにのみ行うことができる。サークルレップ自身もこのひずみを感じていなければならず、サークル内で処理することが理にかなっていると確信していなければならない。招待されたゲストは、そのミーティングの間、もしくは招待を取り消すまでは一時的にサークルメンバーとなる。招待されたゲストは、会議で特定のひずみを処理している間だけ、サークルレップと共にサークルを代表することができる。
上記以外にサークルのガバナンスミーティングに参加できる人はいない。
5.4.2 通知と所要時間
サークルは、秘書がサークルメンバー全員に対して合理的な事前通知を行った場合にのみ、ガバナンスミーティングを開催することができる。また、ポリシーによる定めがなければ、ガバナンスミーティングを開催するために必要な最低人数は定められていない。
ガバナンスミーティングは、秘書によって最初に決められた終了時間になると終わる。秘書は、サークルメンバーから終了の要望がない場合に限り、ミーティング中に時間を延長するか選ぶことができる。
ガバナンスミーティングの一部または全部を欠席したサークルメンバーは、そこで作られた全ての提案に対する懸念を提示する機会があったと見なされる。それゆえサークルは、欠席したメンバーを考慮することなく、ガバナンスミーティングで提案を採択することができる。
5.4.3 ミーティングのプロセス
ファシリテーターはガバナンスミーティングにおいて以下のプロセスを使わなければならない。
(a) チェックインラウンド:参加者は順番に、自分の今の状況を共有したり、会議の開始にあたって何かコメントをする。これに対する応答は許可されていない。
(b) アジェンダの構築と処理:ファシリテーターは処理すべきひずみのアジェンダを構築し、順番に処理していく。
(c) クロージングラウンド:参加者は順番に、ミーティングの終了に際し感想を共有する。これに対する応答は許可されていない。
このプロセスのどの時点でも、参加者は 「タイムアウト」 による会議の中断を要求することができる。ファシリテーターはその要求を許可するか却下するか選ぶことができる。参加者はタイムアウト中に、運営上の問題か、この憲法のルールについて議論することはできるが、ひずみや提案、異議の解決に向けて時間を使うことはできない。ファシリテーターはいつでもタイムアウトを終了させ、通常のミーティングプロセスを再開することができる。
サークルのポリシーにより、このプロセスに何か追加することはできるが、憲法のこの章で定義されているいかなるルールや要件と矛盾してはならない。
5.4.4 アジェンダの構築
ファシリテーターは、全ての参加者からアジェンダ項目を募集し、処理すべきひずみのアジェンダを構築する。ファシリテーターはこれを事前にではなく、ミーティング中に行わなければならない。各参加者は望むだけたくさんのアジェンダ項目をそれぞれ短い言葉で追加することができる。ここでの説明は不要で、ディスカッションも許されていない。参加者は、既出のアジェンダを処理している間にも、さらにアジェンダ項目を追加することができる。
通常のガバナンスミーティングの場合は、ファシリテーターは処理するアジェンダの順番を決めることができる。ただし、参加者からの要求があれば、選挙を必要とするアジェンダを他のアジェンダよりも優先させなければならない。参加者の要求により設定された特別なガバナスミーティングの場合は、その参加者がアジェンダの順番を選ぶことができる。
アジェンダ項目は1つずつ処理されていく。選挙を要する場合は、ファシリテーターは統合的選挙プロセスを使う。その他の処理に関しては、ファシリテーターは以下に定義された統合的意思決定プロセスを使う。
ファシリテーターは以下の 「統合的意思決定プロセス」 を行わなければならない。
(a) 提案の提示:まずはじめに、提案者はひずみの説明とそれを処理するための提案を提示する。提案者の要求に応じて、ファシリテーターは他の人にその提案の作成を手伝わせることができる。ただし、ファシリテーターはその助言が、提案者のひずみを処理するための最初の提案に対して行われているか注視しなければならない。ファシリテーターは、提案に関する他のひずみや懸念についての議論を許可してはならない。
(b) 明瞭化する質問:提案者が提案を作成したら、他の人は提案やその背景にあるひずみについてより理解するための質問をすることができる。提案者は質問にそれぞれ回答することもできるし、それを拒否することもできる。ファシリテーターは、提案に対するリアクションや意見の表明に関しては止めなければならず、いかなる議論も行われないようにする必要がある。このステップの間、もしくは、参加者が話すことを許されている間は、参加者は秘書に提案を読み上げることや現状のガバナンスの表示を求めることができ、秘書はそれを行わなければならない。
(c) リアクションラウンド:次に、提案者を除く各参加者は、一人ずつ提案に対するリアクションを共有することができる。ファシリテーターは、自分の順番ではない人のコメントや、他の人を対話に巻き込もうとする試み、提案ではなく他の人のリアクションに対してのリアクションに関しては、直ちに止めなければならない。
(d) 修正と明瞭化:次に、提案者はリアクションに応じてコメントし、提案に修正を加えることができる。ただし、あらゆる修正においてもっとも優先すべきことは、提案者のひずみがより良く処理されることであり、他の人が提示したひずみを処理することではない。ファシリテーターは、提案者と秘書以外の人のコメントは直ちに止めなければならない。秘書に関しては、修正された提案を記録することにのみ集中しなければならない。
(e) 異議ラウンド:次に、各参加者は一人ずつ、この提案が採択されることに対する反対意見を述べることができる。ファシリテーターはあらゆる類の議論や反応を止めなければならない。ファシリテーターは異議の検証を行い、全ての有効な異議を記録しなければならない。有効な異議がなければ、提案は採択される。
(f) 統合:有効な異議があれば、ファシリテーターは一つずつ焦点を当てる。参加者はそれぞれの異議に対してブレインストーミングを行い、解決になりうる提案の修正点を探す。異議申立人は、その修正案にもう異議するところがなくなったことを確認し、かつ提案者がその修正案でもひずみを処理できることを確認できれば、ファシリテーターは解決済みの異議として印をつける。このステップでは、ファシリテーターはこの章で示されている統合のルールを採用しなければならない。全ての異議が解決されれば、ファシリテーターは修正案を持って異議ラウンドに戻る。
5.5 解釈の衝突
パートナーとして、本憲法および組織のガバナンスに対するあなたの解釈が、他のパートナーの解釈と衝突することがあるかもしれない。衝突したら、いずれの当事者も、影響のあるサークルの秘書に、どちらの解釈を使用するかについて判断を仰ぐことができる。秘書が返答するまでは、当事者はそれぞれ自分の解釈を使うことができる。秘書の返答後は、関連する文言や内容が変更されるまで、全員が秘書の判断に従わなければならない。
解釈に関する裁定後、秘書は裁定とその背景にあるロジックを公表することができる。公表された場合、その秘書のいるサークルやそのサークルが内包する全てのサークルの秘書は、今後のあらゆる裁定に関してもそのロジックに沿うようにしなければならない。しかしながら、止むを得ない新しい環境がそのロジックを廃退させることになれば、秘書はそのロジックを否定することができる。
秘書の解釈については、スーパーサークルの秘書に訴えることができる。スーパーサークルの秘書は、全てのサブサークルの秘書の解釈を覆すことができる。
5.6 プロセス障害
「プロセス障害」 は、サークルがこの憲法のルールを違反する行動や成果のパターンを示した時に起こる。サークルのファシリテーターと秘書は、合理的な判断により、自身のサークルやサブサークルにおいてプロセス障害を宣言することができる。
5.6.1 ガバナンスの失敗による障害
サークルのファシリテーターは、障害に対して妥当な時間と労力をかけたにもかかわらず、提案が解決に至らなかった場合も、サークル内でプロセス障害を宣言することができる。
5.6.2 プロセスの復旧
サークル内で権限のある人々がプロセス障害を宣言した場合、以下が発生する。
(a) ファシリテーターが、サークル内の提案や異議を有効にするためのあらゆる議論のロジックと妥当性を判断する権限を得る
(b) スーパーサークルのファシリテーターが、サークルの本来のプロセスを復旧するためのプロジェクトを持つ
(c) スーパーサークルのファシリテーターが、そのサークルのファシリテーターもしくは秘書として引き継ぐ権利を得る
(d) スーパーサークルのファシリテーターは、プロセス障害の期間中、追加のサークルリードをアサインすることができる。その人がサークルリードとして下すあらゆる決定は、他のサークルリードによる相反する決定よりも勝り、これを阻止する。
これらの権限は、スーパーサークルのファシリテーターが本来のプロセスが復旧したと判断した時点で終了する。
プロセス障害を起こしたサークルにスーパーサークルがなかった場合、上記の権限は全てそのサークルのファシリテーターに与えられる。
5.6.3 プロセス障害のエスカレーション
あるサークルで起きたプロセス障害は、そのままスーパーサークルのプロセス障害だと見なされることはない。しかし、障害が妥当な期間を越えて起こり続けた場合には、スーパーサークルもプロセス障害が発生していると見なされる。
第6章:人々とパートナーシップ
6.1 パートナー関係
組織は、この憲法を遵守することに同意した全ての人にパートナーとしての地位を与えることができる。これにより、その人と組織の間に 「パートナー関係」 が生まれる。パートナーとしての地位の付与に関連して、お互いがお互いへ行った約束は、そのパートナー関係の一部である。別段の合意がない限り、これらの契約を変更するには、相手方の同意を必要とする。ただし、いずれの当事者も、相手の同意なくパートナー関係を解消することができる。その場合、パートナーとしての権利と責任は直ちに終了する。
6.2 ワーキング・アグリーメント
組織のパートナーは 「ワーキング・アグリーメント」 を互いに結ぶことができる。これは、パートナー同士がどのように協力し合うか、あるいはパートナーとしての一般的な役目をどのように果たすかについての合意である。これらは、仕事の基盤となる行動を形成することに焦点を当てなければならない。ワーキング・アグリーメントでは、あるロールが行う仕事の期待値や、パートナーが異なるロール間でどのように優先順位づけをするかについての期待値を設定してはならない。具体的な行うべき行動や、行動上の制約を明確にするだけである。特定の成果を達成する約束や、抽象的な品質を具現するといった約束を含むことはできない。
パートナーは、個人的な意向、または自分のロールの役割を果たすため、他のパートナーにワークング・アグリーメントを要求することができる。要求されたパートナーは、自分の意向でそれを承認もしくは却下することができる。別段の合意がない限り、いずれの当事者も、相手の同意を得ることなく後にワーキングアグリーメントを解消することができる。
パートナーは、自分で作ったあらゆるワーキング・アグリーメント従って行動する義務がある。会議やプロセスをファシリテートする人も、憲法に違反しない限り、会議やプロセスの中でワーキング・アグリーメントを実施することができる。
別表A
サークルリード
目的:サークルリードは、サークル全体の目的を保持する
領域:
・サークルにあるロールへのアサイン
責務: サークルリードは、サークルのロールやプロセスでカバーしきれていない範囲を含めて、サークル上の全ての責務を負う
サークルレップ
目的:外側のサークルのプロセスと関連するひずみを引き出し、解決すること
責務:
・サークル内のロールから伝えられたひずみを理解しようと努めること
・外側のサークルで処理するのに適切なひずみかどうか見定めること
・サークルの制約を取り除くために、外側のサークルでひずみを処理すること
ファシリテーター
目的:憲法に沿ったガバナンスとオペレーションの実践を行うこと
責務:
・サークルやロールのガバナンスプロセスとタクティカルミーティングを進行すること
・依頼に応じて、または適切なミーティングにおいて、他のサークルメンバーに憲法のルールやプロセスを教えること
・依頼に応じてサブサークルの会議や記録を監査し、プロセス障害が見つかれば宣言すること
秘書
目的:サークルのガバナンスの記録を管理し、記録保管方法を安定させること
領域:
・サークルの全てのガバナンスの記録
責務:
・サークルのガバナンスミーティングとタクティカルミーティングの予定を設定すること
・ガバナンスミーティングとタクティカルミーティングの結果を記録し、公開すること
・選出されたロールの任期満了後、選挙を要求すること
・依頼に応じて、憲法やその権限下にあるものを解釈すること