蝶野正洋が見た前田日明、神田伯山が思うレスラー像とは【連載『神田伯山の“真”日本プロレス』#6延長戦!】
講談師・神田伯山とアナウンサー・清野茂樹が日本のプロレス史を語り尽くす『神田伯山の“真”日本プロレス』(CSテレ朝チャンネル2)。第6回となる今夜は、1986年から翌1987年にかけての新日本プロレスの「世代交代開始期」と「大混迷期」がテーマ。東京オリンピックの開催が目前に迫っているにもかかわらず、前田日明とドン・中矢・ニールセンの名勝負に酔いしれ、たけしプロレス軍団に悶絶する真のプロレスマニアたちのために、今夜も延長戦をお届けします! しかも、先月に引き続き、新日本の今と昔、裏と表を知り尽くした蝶野正洋が参戦! 前田や長州力(注1)、アントニオ猪木といったレスラーたちが蝶野の目にどのように映っていたのか、たっぷりと語ってもらいました。さらに、7/24(土)午前0時公開の記事では、今回の延長戦の収録後、撤収中のスタジオで突然始まった伯山&清野による次回のゲストのキャスティング会議を再延長戦として緊急収録。“読んでみな! 飛ぶぞ!”(by長州)と言いたくなる妄想全開のトークで、クラクラしちゃってください!
取材・文/K.Shimbo(今見るべきプロレスラー系YouTubeは、『アントニオ猪木・最後の闘魂』。難病と闘う猪木さんの姿は目に焼き付けておくべき)
撮影/ツダヒロキ(同じく、『プロレスラー金本浩二』。長年の謎が解けたから…)
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<プロフィール>
神田伯山(かんだ・はくざん)●1983年東京都生まれ。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年、三代目神田松鯉に入門し、「松之丞」に。2012年、二ツ目昇進。2020年、真打昇進と同時に六代目神田伯山を襲名。講談師としてもさることながら、講談の魅力を多方に伝えるべく、SNSでの発信やメディア出演など様々な活動を行っている。現在は『お願いランキング・太田伯山ウイカのはなつまみ』(テレビ朝日)、『問わず語りの神田伯山』(TBSラジオ)などに出演している。
清野茂樹(きよの・しげき)●1973年兵庫県生まれ。広島エフエム放送(現・HFM)でアナウンサーとして活躍。『ワールドプロレスリング』(テレビ朝日系)で数々の名実況・名言を生み出した古舘伊知郎アナウンサー(当時)に憧れ、宿願だったプロレス実況の夢を実現すべく、2006年フリーに。2015年には新日本プロレス、WWE、UFCの実況を行い、前人未到のプロレス格闘技世界3大メジャー団体を実況した唯一のアナウンサーになる。『真夜中のハーリー&レイス』(ラジオ日本)のパーソナリティーとしても活躍。
蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)●1963年東京都生まれ。1984年に新日本プロレス入門。同期の武藤敬司、橋本真也とともに「闘魂三銃士」を結成し、1990年代の同団体の黄金期を支える。特に「nWo」旋風は各界の著名人がTシャツを愛用するなど社会現象となった。現在は救急救命や地域防災の啓発運動を積極的に行うほか、YouTubeチャンネルでの発信などを積極的に行っている。公式【蝶野チャンネル】CHONO Network
『神田伯山の“真”日本プロレス』
CSテレ朝チャンネル2 毎月第3土曜 午後11・00~深0・00
出演 神田伯山 清野茂樹(実況アナウンサー)
●“最もチケットの取れない講談師”の神田伯山と、プロレスに魅せられた実況アナウンサーの清野茂樹が、テレビ朝日に残された貴重な映像を観ながら、プロレスの歴史をマニアックに語り尽くす。そのほか、当事者を招いて真相を探る「真のプロレス人に訊け!」や、現役プロレスラーの魅力を深掘りする「最“真”日本プロレス」といったコーナーも。
番組HP:https://www.tv-asahi.co.jp/ch/recommend/hakuzan/
どれが本当の“長州さん”かよく分からない(蝶野)
――今回の延長戦も蝶野さんに参加していただきます。伯山さんは蝶野さんのYouTube(注2)をよくご覧になっているとか。
伯山 大好きなんですよ。最近、いろんなレスラーの方がYouTubeでコラボしていて、あれを観ていると、時間が過ぎるのが早くていいですね。プロレスは過去を振り返るのも素晴らしいコンテンツですよ。アントニオ猪木(注3)さんもやっていますけど、あの時代のレスラーの話は今でも面白くて人気があるし、永遠に聞いていられる。長州さんも、大人気になってますよね。現役の方ももちろん素晴らしいんですけど、ずっと注目され続けているのは、また何か違う魅力があるんだと思うんです。自己プロデュース能力というか。それは、演芸の世界でも大事なんですけど。闘魂三銃士をはじめ、みなさんキャラクターや個性が輝いている。
清野 確かに。今の選手にはなくて、蝶野さんたちの世代にあるものってなんなんですかね。
蝶野 自分にはそういう考えはなかったんですが、俺らの頃の選手は、ちょっと外に飛び出したり、クーデターを起こしちゃうくらいの発想を持っていて。今は新日本の枠の中で考えなければいけないから、そこらへんの野心的なところ、人を裏切ってまで、だましてまでっていうのがないのは違いかもしれないですね。昔は、ビジネスなんだから、だまされた方が悪いんだ、くらいの感覚で。
伯山 価値観が違ってきているんですね。
蝶野 長州さんなんか、どれが本当の長州さんかよく分からないですもんね。
伯山 「蝶野チャンネル」を観ていて、“長州さんはどれが素なんだか分からない”と蝶野さんがおっしゃっていたのが、僕はすごい面白いと思って。
蝶野 はいはいはい。
伯山 あれは素なのかっていう。素ではないんじゃないかと。
蝶野 そうそう。今もね。
伯山 今もまた長州さんは、別の形の“長州力”をやっているという。
清野 バージョンアップしているってことですね。
蝶野 最近のヤンキー系のレスラーを見ていても分かるけど、ヤンチャで危ない感じのやつらも素は普通なんですよ、みんな。それを最後まで見せずにやるのかというと、見せちゃうじゃないですか。でも、猪木さんの世代の人たちって絶対に見せないんです。俺なんかはどっちかというと、素まで見せながら、演技しているタイプ。
伯山 なるほど。「M-1グランプリ」(注4)でも、芸人が緊張しているところ、素のところをテレビで映す。あれが視聴者の方も、好きじゃないですか。でも、世代によっては美学の線の引き方が絶対に違いますよね。これたしか、爆笑問題の太田(光)さんが言ってたんですけど、お笑いのビッグスリー(注5)は素を見せないと。美学が違うんですよね。蝶野さんは絶妙に見せたり、見せなかったりというバランスがすごくカッコいいなって思います。
猪木さんには、前田さんが一番近いと思う(蝶野)
――今回、番組で“新格闘王”の前田さんを取り上げましたが、蝶野さんから見て前田さんは、どんなレスラーだったんでしょうか?
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