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「綴方」で暮らしを編みなおす

綴方書窓は、2022年10月に結成した文芸ユニットです。
メンバーはいまのところ、ふたりしかいません。この先どうなっていくかわかりませんが、いまはそのふたりで来年1月に開催するイベントにむけて準備を進めています。

文芸ユニットと名乗っていますが、そのイベントは同人誌の販売をするわけでも、作家さんを招いてトークをするわけでもありません。
展示とシルクスクリーンのワークショップをおこなう小さなイベントです。

「綴方」は、新しい価値を創造する

なぜ文芸ユニットが展示とシルクスクリーンのワークショップを企画したのか。
それは「綴方書窓」という私たちのユニット名と大きく関係しています。
まずはそのことからお話しましょう。

綴方書窓は、「つづりかたしょそう」と読みます。
「綴方」とは、読んで字のごとく「綴るための方法」。
「書窓」は、「書斎」または「書斎の窓」を意味します。

では、そもそも「綴る」とは、いったいなんでしょう。

日本語の「綴る」には、いくつかの語義がありますが、ざっくりいうと、複数のものを繋いでまとめあげることを指します。
たとえば、本をつくる場合、それは製本といってバラバラの紙を糸などで一冊の本に仕立てる作業にあたります。
また、「文章を書く」という意味も「綴る」にはあります。これは、単語や短い文を書きつらねることで、まとまったひとつの文章が生みだされる様子を表しています。

だとするなら、「綴方」は、バラバラに思えるものを継ぎあわせ、ひとつのまとまりをもった体系に編みかえる技法のことだといえそうです。
つまりそれは、相互に関係性を生じさせ、いままでになかった新しい価値をそこから創出していく行為でもあります。

私たちは「綴方」を、各領域を横断しながら、まだ発見されていない魅力的な価値を探しだし発信していく営みだと捉えています。
そして、それを今後、暮らしのなかで実践していきたいと考えています。

失われた暮らしの実感

綴方書窓では、「暮らしを綴る」を活動のテーマに掲げました。

私たちの暮らしは、日々、快適で便利になっていきます。もちろんそれは素晴らしいことです。
しかし、あなたが何に喜び、怒り、悲しむのか。そして何を欲するのか。それはだれかが教えてくれるものでもなければ、けっしてサービスや商品によって手に入れられるものではありません。
なぜなら、それらの快適さや便利さは、データ分析によって「あなた」ではなく、「あなたをふくめた大勢のあなたに似た人々」に最適化して提供されている快適さであり便利さでしかないからです。

かつての暮らしには実感が宿っていました。
暮らしのなかに埋もれてしまったその実感をふたたび呼びもどすため、ふだん何気なく見過ごしていたけれど、たしかに存在している身の回りのものごとに目を向けてみる。そして、それらをひとつのかたちにまとめあげる。
そうすることで得られるあらたな気づきや驚きに「暮らしを綴る」ことの意義はあります。
また、そのための技術や考えを深める場を提供するのが、綴方書窓の目指すところでもあります。

地図と記憶をコラージュする in千住

ここまで「綴方書窓」という名前に込めた思いについてお話ししてきました。そして、これらはすべて1月のイベントにつながっています。

この冬、綴方書窓は千住にある築90年の平家を改装した家劇場というイベントスペースで、展示とシルクスクリーンのワークショップを開催します。

そこに展示するのは、千住にまつわる記憶を集めた「記憶の地図」。
かつて千住にあった、でもいまはなくなってしまった場所を「記憶の地図」として展示することで、日々、移り変わる千住の街並みに思いを馳せてみる。そんな一風変わった催しです。
さらに会場では、その地図の区画をデザインとしてシルクスクリーンでトートバッグに刷る体験もできます。

トートバッグのサンプル1号

会場となる家劇場は、東京・北千住駅から徒歩およそ5分の場所にあります。
2023年1月4日(水)と11日(水)の2日間。13時から20時までやっています。
入場無料(ワークショップは各回1,000円)ですので、ぜひ遊びにいらしてください。


じつはまだ「綴方」には由来となるエピソードがあります。それは、あるふたつの民間教育運動と関係しているのですが、それはまた次回書きたいと思います。
ご期待いただければ幸いです。

(萩庭 真)

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