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主文

短歌連作20首
かき混ぜてゆけば氷も溶けはじめグラスの汗も繋がってゆく
頼りない味にスパイスかけるごと夏が始まる便りが届く
生ビール注げば泡が溢れだす隠したいことあわあわ増える
めくるめく落ちるスコール聴きながら飛び込み台に立てばたちまち
この恋に名前がなくて抽斗をたびたび開けて開けてしまえり
はちみつのようなことばをかけられてだらしないままひらかれてゆく
気の抜けた炭酸水がからだじゅうながれてしまう足のつま先
終わらない宿題みたいに夏空と胸に広がる花火は遠く
戯れと遊びは同じかひとりではさみしい切ないきみが恋しい
吹き荒れる台風のなか閉ざされた傘の行方を知る術もなく
傷つけてしまった君の目のなかにわれの姿はどこにもあらず
ペルセウス流星群の天気予報あなたは誰と見上げるでしょう
主文から始まる罪を念頭に浮つく夏に溺れゆくこと
ほんたうにあついあなたの本音なら焼けてしまえりわたくしすべて
水を飲むがごとくに欲望は転がる石の渇きに似たり
対岸で眺める景色はうつくしき橋を渡れば堕ちる溺れる
イチジクの皮を上手にむくひとのゆびを裸眼の端に絡める
皮を脱ぎぬらぬらと蛇の絡みつくようにあなたを苦しめている
滝壺に落ちる水脈ほとばしり愛だ恋だのどうだっていい
白地図はまだ白いまま終わらない宿題残る夏通り過ぐ

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