商標弁理士と振り返るファミコンソフトのタイトルネーミング ~その12(最終回) 「社名入り」編~
こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。
さて、商標弁理士である私が、頼まれてもいないのにファミコンソフトのタイトルを総チェックし、それらのネーミングを独自に分類した上で、商標実務的な話も加えてコメントしていこうとする本企画。
今回で、ついに最終回です!!
執筆開始以来、ほとんど反響はありませんが(苦笑)、無事に最後まで書き切れそうです。ファミコン生誕40周年の記念すべき年に、良い思い出ができました。
前回は、「子供は読めない!」タイトルについて考察しました。
ラストは、「社名入り」ネーミングのタイトルを見ていきましょう!
ブランド力を利用?「社名入り」ネーミング
世の中の商品やサービスを見てみると、そのネーミングの中に、開発元・販売元・提供元などの社名が含まれていることがあります。
たとえば、「Nintendo Switch」、「Apple Watch」、「Google Pixel」などが一例として挙げられるでしょうか。
これらに含まれる社名としては、それ単独でも有名なものが多い印象があります。すると、このようなネーミングとすることで、すでに蓄積された会社のブランド力を、そのまま新商品や新サービスに活かせるという効果があると言えるのではないでしょうか。
すなわち、ネーミングに含まれる社名を目にした顧客に対して、「あの会社の商品やサービスなら安心だ」と思わせる効果が、少なからずあると言えるでしょう。もちろん、その会社に対する信用がしっかりと確立されていることが前提条件となるのは、言うまでもありません。
では、ファミコンソフトのタイトルにも、このように社名が含まれるネーミングのものはあるのでしょうか?
実際に調べてみたところ、実は「意外とある」ことがわかりました。
「社名入り」ネーミングのファミコンソフトタイトルの一例
では実際に、「社名入り」ネーミングのファミコンソフトのタイトルの一例を見てみましょう。
やはり、ファミコンでも「コナミ」や「ナムコ」など、有名どころの社名が入ったネーミングが多い印象ですね。
ちなみに、「コナミワイワイワールド」は、続編もファミコンでリリースされているのですが、なぜかこちらはタイトルから「コナミ」がとれて、「ワイワイワールド2」だけになっています。「ワイワイワールド」というネーミングだけで、すでにコナミのソフトだとわかるくらい有名になっていたので、続編のリリース時にはもはや必要ないということだったのでしょうか?
個人的には、「コナミックスポーツ イン ソウル」の「コナミック」という語が、「コナミ」を形容詞的にした造語のようで斬新だと感じました。それにしても、ソウルオリンピックは1988年でしたか。まだ小さい頃でしたが、私もリアルタイムでテレビ放送を見た記憶があります。時間の流れは本当に早い・・・。
商標実務的にはどうか?
上述した「Nintendo Switch」、「Apple Watch」、「Google Pixel」などの例のように、社名が含まれる商品・サービスのネーミングは少なくありません。そして、商品やサービスのネーミングであれば当然、商標にもなり得ます。
このようなネーミングの商標が採用される理由の一つとしては、上述のように、すでに蓄積された会社の信用やブランド力を活かせるからという点があろうかと思います。
一方で、商標実務の観点から見た場合には、他に理由があるとも考えられます。
それは、「識別力」の観点からの理由によるものです。
すでに「単独既成語」のところでも述べたように、その商標のネーミングが、関連する商品やサービスの内容や特徴をそのまま意味するにすぎないような場合は、それのみでは基本的に商標登録はできないことになっています。このようなネーミングからなる商標は、商品やサービスについての「識別力がない」と考えられているからです。
たとえば、商品「りんご」に使う商標として「アップル」とか「青森産」を商標登録しようとしてもダメだということです。ただし、識別力の有無は、あくまでその商品との関係性で判断されますので、商品「スマートフォン」に使う商標として「アップル」を商標登録することは可能です。
さて、ここで前述の「Apple Watch」を見てみましょう。
もし、この商標が「Watch」だけであれば、その商品との関係で識別力がないと考えられます。よって、商標登録をしようとしても難しいでしょう。
このような場合に、社名などの識別力がある語を一緒にネーミングに付けておけば、商標全体としては識別力が否定されないため、商標登録ができることになります。まぁ、「Apple Watch」の場合は、実際にはこのような意図によるネーミングではないと思いますが、こういった理由によって、社名が含まれる商標が採用されるケースもあるでしょう。
もう一つの理由は、たとえば「〇〇〇」という商標を採用しようとして商標調査をした結果、これと同じ商標や似ている商標が見付かった場合に、それらの商標との抵触性を回避するためです。たとえば、これを「社名 〇〇〇」とすれば、商標全体として、他人の「〇〇〇」の商標とは似ていないと特許庁で判断されることは少なくありません。
特に、その社名が有名であれば、「社名 〇〇〇」の他に「社名」だけの部分が要部になることはあり得るとしても、「〇〇〇」だけが要部となることはない、だから、他人の「〇〇〇」の商標とは「類似しない」と判断される流れとなりやすいのです。
このように、社名を含むネーミングの商標というものは、あらかじめ商標登録することを見据えた上で採用されるケースもあるであろうと考えられます。
という感じで、今回はここまでとなります。
おわりに
さて、全12回にわたって掲載した「商標弁理士と振り返るファミコンソフトのタイトルネーミング」の企画、いかがだったでしょうか?
実は、「燃えろ!」編や、「タレント名」編など、もう少しネタは残っていたのですが、12回くらいがまぁキリが良いだろうということで、ここまでとさせていただきました。また機会があれば(というか、気が向いたら)、追加で書くこともあるかもしれません。
私と同世代の方々が、古き良きあの頃を思い出し、懐かしさを感じてもらえたら。また、世代が異なる若い方々にも、今回の企画を通じて、ネーミングや商標実務について少しでも興味を持っていただけたなら、大変嬉しく思います。それこそ、ほとんど反響もない中、頑張って続けた甲斐があるというものです(笑)。
繰り返しになりますが、私にとっても良い思い出となりました!
最後に、私の仕事に関する紹介をさせてください。
私、商標弁理士N(永露祥生)は、商標専門の弁理士として、事業者様の商標(ネーミングやロゴマーク)の保護や相談、使用リスク分析などの仕事を主にしています。
もし、商標のことや商標登録などに関心がありましたら、ぜひ私の事務所サイトもご覧いただけますと幸いです。ご相談・ご依頼なども、こちらから承っております(※現在、一部の業務のみの受付となっております。詳しくは、以下のページよりご確認ください。)。
というわけで、これにて本企画は「終了」となります。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!!
FIN
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