商標弁理士と振り返るファミコンソフトのタイトルネーミング ~その3 結合語編~
こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。
さて、商標弁理士である私が、これまでに発売されたファミコンソフトのタイトルをチェックし、それらのネーミングについて、独自にカテゴリー分けをした上で(反響もないのにひたすら)語っていこうという本企画(笑)。
前回の記事では、「単独既成語」のタイトルを取り上げました。
今回は、引き続き「結合語」のタイトルを見ていきたいと思います!!
もっとも多く採用されている結合語
ファミコンソフトのタイトルにおいては、ネーミングとして「結合語」が採用されているものがもっとも多いと言えます。「結合語」というのも、これまた私が勝手に言っている言葉ですが(苦笑)、「2語以上の語の結合から構成されている」ネーミングとご理解いただくと、わかりやすいかと思います。
たとえば、「ドンキーコング」なら、「ドンキー」+「コング」の結合ですね。
「スターソルジャー」なら、「スター」+「ソルジャー」から構成されています。
「スーパースターフォース」なら、「スーパー」+「スター」+「フォース」という感じです。「結合語」は、基本的には2語または3語の結合による構成が多いでしょう。
なお、このような「結合語」のネーミングには、以下の2つのタイプがあると考えられます。
1つは「全体から意味が生じないもの」。
もう1つは、「全体から意味が生じ得るもの」。
前者のネーミングでは、造語性がより強くなると言えます。結合される個別の語によっては、非常に強いインパクトを出すことも可能です。一方、後者のネーミングでは、全体から意味が生じる分、より「覚えられやすい」とか「そのネーミングから内容が想像しやすい」と言えるように思われます。
いずれにしても、「結合語」からなるネーミングが「良いネーミング」や「強いネーミング」になるかどうかは、言いやすさ、覚えやすさ、見た目のバランス、インパクトの強さなどのネーミングの基本テクニックを、いかに十分に発揮できるかによると言えるのではないでしょうか。
身近な「結合語」からなるネーミングの一例としては、たとえば、「Microsoft」、「Facebook」、「YouTube」、「無印良品」、「ファミリーマート」など、挙げ始めるとキリがありませんね。
結合語からなるファミコンソフトのタイトルの一例
では、結合語からなるファミコンソフトのタイトルの一例を見てみましょう。
まずは、「全体から意味が生じないもの」の一例です。
あまりにたくさんあるので、特に私のお気に入りのものをピックアップします。
やはり、「桃太郎電鉄」、「突然!マッチョマン」、「アイドル八犬伝」、「暴れん坊天狗」、「夢ペンギン物語」のように、結合された個別の語同士に関連性がないような場合や、意外性のある組み合わせとなる場合は、かなりインパクトのあるネーミングになると言えると思います。
次に、「全体から意味が生じ得るもの」の一例を見てみましょう。
こちらも数が多すぎるので、私のお気に入りをピックアップします。
「ファイナルファンタジー」や「ファイアーエムブレム」は、一応は全体から意味合いが生じるものの、今やブランドとして確立されていて、そこはあまり意識しない方が多いかもしれませんね。
商標実務的にはどうか?
「結合語」のネーミングというのは、商品やサービスの商標としても採用されやすいものです。よって、商標実務的な観点(特に、商標登録の観点)からも、非常に接することが多いネーミングのタイプであると言えるでしょう。
「結合語」のネーミングの場合、商標登録のしやすさは、結合されるそれぞれの語次第と言うことができます。結合された個別の語同士に関連性がないようなネーミングや、意外性のある組み合わせのネーミングは、全体として「単独造語」とほぼ同じような取扱いになると考えられます。(なお、「単独造語」についての記事はこちら)
また、商標実務的な観点では、このようなネーミングの商標が、一連一体として把握されるかどうかがポイントになる場合があります。たとえば、他人の商標と似ているかが判断される場合に、この点が検討されることがあります。専門的になりますので、ここでは詳しくは述べませんが、一般的に、全体として意味合いが生じる場合の方が、一連一体性は認められやすいと考えられます。
一連一体性が認められるような場合、商標登録で保護できるのは、あくまで全体としてのネーミングとなるのが基本です。結合されたそれぞれの語まで、個別に保護が及ぶとは限らない点には注意が必要でしょう。
たとえば、仮に「暴れん坊天狗」を商標登録したとしても、今の実務運用では「暴れん坊」や「天狗」単体の商標とは「似ていない」と判断されると考えられます。つまり、たとえ「暴れん坊天狗」を商標登録していたとしても、後から他人に「暴れん坊」や「天狗」を商標登録されて、同じ商品やサービスに堂々と使われてしまう可能性もあるということです。
ですから、「結合語」のネーミングからなる商標の場合、こういった他人の登録や使用を阻止すべく、必要に応じて、構成される個別の語についても防衛的に商標登録をしておくケースもよくあります。
たとえば、仮に商標が「アタックアニマル学園」なら、「アニマル学園」についても商標登録をしておいた方が良いかもしれません。また、仮に商標が「夢ペンギン物語」なら、「ペンギン物語」の商標登録も検討する余地があるかもしれません。
こういった点の検討をし損ねて、あたかも他人に「すり抜け」られるように商標登録をされているケースは意外と多く見かけます。後から「やられた!」とならないように、ぜひ留意しておきたいポイントです。
なお、「結合語」のネーミングからなる商標の場合、後半の語が商品やサービスの普通名称となることも少なくありません。こういった場合、前半の語が「要部」であるとして、他人の商標と似ているかどうかが判断されることがあります。また、これに加え、前半の語も商品やサービスの特徴・内容を表わすようなものである場合は、商標全体として「識別力」がないとされ、商標登録が認められないケースが多いです。たとえば、商品「弁当」について、「焼肉弁当」とか「できたて弁当」を商標登録しようとしてもダメだということです。
「識別力」については、「単独既成語」についての記事もご参照ください。
という感じで、今回はここまでとなります。
次回は、「〇〇の〇〇」という構成のネーミングについて見ていきましょう!
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