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商標弁理士と振り返るファミコンソフトのタイトルネーミング ~その5 「くん・さん・ちゃん」編~

こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。

さて、商標弁理士である私が、これまでに発売されたファミコンソフトのタイトルを総チェックし、それらのネーミングについて、独自にカテゴリー分けをした上で語ったり、商標実務の観点からもコメントをしたりしていこうという本企画。

ここまでほとんど反響はなく(苦笑)、いったいどれくらいの数の読者の方々に読まれているのかわかりませんが、やると決めたからには最後までやり切ります!!

前回は、「〇〇の〇〇」から構成されるタイトルを取り上げました。
今回は、引き続き「くん・さん・ちゃん」を含むタイトルを見ていきましょう!

~閲覧にあたってのご注意~
※商標弁理士Nがチェックしたファミコンソフトは、1983年~1994年までに正規のルートにて「カセット」で発売されたものとなります。ディスクシステムのソフト等は含まれません

アニメ、漫画、特撮、映画などの原作があるもの、元ネタとなるキャラクターがあるものなどのタイトルは、原則として除外しています。

※タイトルの解釈や、そこから生じる意味合いの理解が間違っている場合もあるかもしれませんが、あくまでネーミングを独自にカテゴリー分けしてコメントすることが本題となりますので、その点はどうか温かく見守っていただければと存じます。

アニメや漫画のタイトルに多い「くん・さん・ちゃん」


〇〇〇くん」、「〇〇〇ちゃん」など、名前に「くん」や「ちゃん」などを付けて愛称のように呼ぶことは、私たちも普段の生活の中で行っています(最近では、学校における「あだ名禁止」のような話もあるようですが・・・)。

アニメや漫画のタイトルのネーミングにおいては、主人公などの登場キャラクターの名前に、このような「くん」、「さん」、「ちゃん」を付けたものが多く見られます。

たとえば、国民的アニメと言える「サザエさん」を始め、「クレヨンしんちゃん」、「ちびまる子ちゃん」、「おそ松さん」、「怪物くん」、「南国少年パプワくん」など、例を挙げればキリがないでしょう。

このようなタイプのネーミングは、まさに主人公などの登場キャラクターそのものをズバリ表しているものですので、「内容がわかりやすい(予想しやすい)」とか「覚えやすい」、「印象に残りやすい」といった特徴があると言えます。

では、ファミコンソフトのタイトルにおいてはどうでしょうか?
実は、意外にもファミコンソフトのタイトルには、「くん・さん・ちゃん」を含むネーミングは、かなり少ないと言えます。もちろん、あるにはあるのですが、それこそ原作がアニメや漫画等のタイトルが多く、完全なオリジナルタイトルに限れば、「ほとんどない」と言っても良いと思います。

当時の時代背景を考えると、もう少したくさんあってもおかしくないように思いますが、なぜかファミコンソフトのタイトルには、「くん・さん・ちゃん」を含むネーミングが少ないという事実があります。

「くん・さん・ちゃん」を含むファミコンソフトのタイトルの一例


では、「くん・さん・ちゃん」を含むファミコンソフトのタイトルの一例を見てみましょう。

シリーズものは重複しているため、元々のネーミングの数がいかに少ないか、わかるかと思います。

・忍者じゃじゃ丸くん  (ジャレコ)
・忍者くん 魔城の冒険 (ジャレコ)
・忍者くん 阿修羅の章 (UPL)
・ぺんぎんくんWARS  (アスキー)
・熱血硬派くにおくん  (テクノスジャパン)
・モアイくん      (コナミ)
・悪魔城すぺしゃる 
 ぼくドラキュラくん (コナミ)
・大工の源さん     (アイレム)
・大工の源さん2   (アイレム)
・目指せパチプロ パチ夫くん(ココナッツジャパン)
・パチ夫くん2    (ココナッツジャパン)
・パチ夫くん3   (ココナッツジャパン)
・パチ夫くん4    (ココナッツジャパン)
・パチ夫くん5   (ココナッツジャパン)

なお、アニメなどの原作や元ネタがあるものには、以下があります。

・忍者ハットリくん  (ハドソン)
・おそ松くん     (バンダイ)
・悪魔くん      (バンダイ)
・まじかる☆タルるートくん (バンダイ)
・まじかる☆タルるートくん2(バンダイ)
・おぼっちゃまくん  (テクモ)
・燃える!お兄さん  (東宝)
・ちびまる子ちゃん  (ナムコ)
・クレヨンしんちゃん (バンダイ)
・キョロちゃんランド (ヒロ)

これらを含めたとしても、総数としては「少ない」と言えそうです。
なぜ、「くん・さん・ちゃん」を含むネーミングがファミコンソフトのタイトルにはあまり採用されていないのか、謎が深まりますね。

商標実務的にはどうか?


企業キャラクターやご当地キャラクターなどのキャラクター名称が、商標として商標登録されることは少なくはありません。また、商品・サービスの名称として、キャラクター名称のようなネーミングが使われることも考えられます。

したがいまして、「くん・さん・ちゃん」を含むネーミングの商標というのも、商標実務では比較的よく見かけるものと言えます。

「くん・さん・ちゃん」を含むネーミングの商標でよく問題になるのは、それらを除外した他人の商標があった場合に、両者が「似ているかどうか」が判断される場面です。たとえば、「ノートくん」と「ノート」という商標があった場合に、それらが似ているかどうかという話です。

さて、皆様は似ていると思いますか、似ていないと思いますか?

「〇〇〇くん」などの「〇〇〇」が具体的に何になるかにもよりますが、特許庁の審査では、「とりあえず」は「似ている」と判断されることが多い印象です。「くん・さん・ちゃん」などの部分は識別力が弱く、それらを除外した部分が「要部(もっとも目立つ部分)」になると認定されるためでしょう。

ただ、「とりあえず」と述べたように、一度審査で引っかかったとしても、意見書の提出や、審判請求によって「似ていない」と反論することで、結論がひっくり返ることは実は少なくありません。つまり、最終的には「似ていない」と判断される可能性は大いにあり得ます。

最近の特許庁による判断傾向では、「似ていない」と結論付けられるパターンの方がだいぶ多いという印象があります。したがって、「〇〇〇くん」を商標登録しようとして、たとえ審査で引っかかった場合でも、あきらめずに粘り強く対応することが大切です

やはり、ここでも事前の「商標調査」の実施が非常に重要になるでしょう。
たとえば、「〇〇〇くん」の商標登録をしたいと考えて商標調査をしたところ、他人の「〇〇〇」がすでに商標登録されていることが判明したような場合は、早急に名称変更も検討すべきだと思います。

この場合、「〇〇〇くん」のままでも商標登録ができる可能性はありますが、一度審査で引っかかれば、最終的に登録がされるまでの時間は長くかかってしまうからです。また、「〇〇〇」を登録している他人から、登録異議申立てなどを受けるなどの面倒ごとにつながるおそれもあるからです。さらに、意見書の提出や、審判請求を弁理士に依頼する場合、それなりの費用がかかるという点にも留意する必要があります。

もっとも、もう大々的に使い始めていて後戻りできないような場合は、「〇〇〇くん」のままで行くしかないとは思いますが・・・。「商標調査」は、実際に商標を使い始める前に実施しておくのが大切ですので、覚えておいてください。

という感じで、今回はここまでとなります。
次回は、「ドラゴン」を含むネーミングについて見ていきましょう!
なぜか今まで登場しなかった、あの名作タイトルにも言及します!!

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