狐の嫁入りに遭遇した話
運転席の窓を開けたわたしは、つめたくしめった草のにおいを吸いこむ。
母と娘を連れて、宿に戻るつもりだった。山の中を通るはずではなかったし青い標識が見えるたびに確認しながら建物の多く見える国道を走っていたのに、ふと気がつくと青々とした木々に辺りを囲まれている。幸い舗装された道路は小綺麗にしており、まったく車が通らないというわけではないのだろう。前にもうしろにも車はおらず、対向車が走ってくる気配もないけれど。
バックミラーで後部座席を見ると、うとうととする母にもたれかかる娘はよく