ただいま
”うーーーーーーーん”
足をのばす。
ふとんからとびだした足が、ヒヤリとした空気をあじわう。
”ふぁーーーーーーーあ”
手をのばす。
布団からグイとのびた手が、布団の下のタタミをなでる。
「足よ足、元気ですか?」
もじょもじょもじょ 足の指がうごく。「ほいほい、こちらかわりなし。」
「お手てよ手よ、元気ですか?」
ごそごそごそ、手の指が畳の目をかく。「はいはい、いつもどおりよ。」
ふむ、どうやらもどってきたらしい。
ぼくは目を開けた。
「おはよう」お父さんと目が合った。
「ただいま。」と、ぼく。
笑いながらお父さんが言う。「一晩中、どこに行ってたんだい?」
「ずっとずっと遠くの、お空の向こうの果てのほうまで。がんばって、帰ってきた。」
「それはそれは、お帰り。」
そう言って、お父さんは、ギューッとぼくを抱きしめた。
昨日の夜ぶりの、お父さん、ひさしぶり。元気でよかった。
おはよう、今日がはじまる。