パンパンカパン屋さん
パンパカパンパン パンパカパン
パカ パンパカパンパン パンパカパン
パンパカパン パパンパパン パン パーン
山の中に、高々とファンファーレが、鳴りひびきました。
「みなさま、ほんじつ、『パンパカパン屋』山の中店が、開店でございまーす!!」
先頭で、ラッパを吹くのは、ウサギさん。
ウサギのこどもたちが、旗をふったり、ちらしをくばっています。
「へえ、山の三本杉に、パン屋ができたそうだよ。」
「クイズにこたえると、スペシャルパンが、もらえるってさ。」
「いってみようか。」
「いってみようよ。」
パンパカパン屋のある、三本杉のまわりに、山のどうぶつたちが、集まってきました。
「わあ、いいにおいだねえ。」
「お母ちゃん、おなかすいた。」
「はやくたべたいなあ。」
その時、お店のドアがあいて、ウサギの店長が、出てきました。
「みなさま、おまたせしました。ただいまより、『パンパカパン屋』オープンイベント、パンパカクイズ大会をはじめます。
クイズに正解したお客さまには、スペシャルパンの、プレゼントがございまーす!」
「ぼく!ぼく、やります!」いちばんに、手をあげたのは、イノシシさんちの末っ子、ウリボウくんです。
ウサギさんは、ウリボウ君を、手まねきしました。
「では、問題です。雨上がりにみられるのは、」
ウサギさんが、問題を読みはじめると、すぐに、ウリボウ君がこたえました。
「はいっ!にじ!!」
ブッブッブー!
「ちがいます。ウリボウ君、まだ問題はとちゅうですよ、残念でした。
ウリボウ君には、参加賞の、コロリンパンを、どうぞ。」
ウリボウ君は、パンをうけとると、すぐにパクリと口に入れました。
「おいしーい!お母ちゃん、このパン、すっごくおいしいよ!」
見ているどうぶつたちは、ゴクリ、つばをのみこみました。
「はいはい!つぎは、わたし!」
前に出てきたのは、やまばとのおくさんです。
「やまばとさん、問題をさいごまで、きいてくださいね。
雨上がりに見られるのは、にじですが、夏の夜空に見られる、」
「はい!天の川!」
やまばとのおくさんは、自信たっぷりに、こたえました。
ブッブッブー!
「ちがいます、またしても、問題のとちゅうで、こたえてしまいましたね。残念! やまばとのおくさんにも、コロリンパンを、どうぞ。」
やまばとのおくさんは、恥ずかしそうに、「ホッホー、ホッホー」と照れ笑いをしながら、コロリンパンをついばみました。そして、あまりのおいしさに、ほっぺたを赤くそめて、もう一度、「ホッホー!」と、羽ばたきしました。
そのとき、三本松のいちばん高い木の上から、ひゅうっと、とびおりてきたのは、ムササビさんでした。
ムササビさんは、パンを焼くいいにおいにつられて、ここまでやってきて、クイズ大会のようすを、ずっと見ていたのです。
「問題のつづきを、おねがいします。」
ムササビさんは、しずかに、言いました。
「はい、次のチャレンジャーは、ムササビさんですね。では、最後まで問題を聞いてくださいよ。
雨上がりに見られるのは、にじですが、夏の夜空に見られる、大きな三角を、なんというでしょうか?」
むささびは、問題を全部聞くと、しずかに、ほほえみました。そして、「コホン」と、せきばらいをして、こたえました。
「夏の大三角。」
ピンポンピンポンピンポン!
「ムササビさん、せいかーい!!」ウサギの店長が、大きな声で言いました。
しんと、息をのんでいた動物たちは、みんなホッとして、くちぐちに、ムササビをほめたたえました。
パンパカパーン、パンパカパーン、パンパ、パーン!
ラッパのファンファーレがなりひびき、ウサギのパン屋さんは、優勝者のムササビさんの首に、パンで出来た、パンメダルを、かけてあげました。それは、お星さまの形をした、つやつやと、きれいなパンでした。
「まあ、なんて、ふわふわの、ぴかぴかの、美味しそうなパンでしょう。」
「スペシャルパンは、パンで作った、お星さまだったんだね。」
「ムササビさん、おめでとう!」
ムササビさんは、嬉しそうに、みんなに手をふりました。
ウサギの店長は、満足そうにそれを見て、言いました。
「さて、みなさま、『パンパカパン屋』7月のパンは、お月さまパン、お星さまパンでございます。とくに、おすすめは、夏の大三角、こと座のベガパン、わし座のアルタイルパンと、はくちょう座のデネブパンでございます。」
それは、なんてすばらしいパンだろう、と、みんなは感心しました。
そして、それぞれ、好きなパンをかって、自分のねぐらに、帰っていきました。
「今夜は、みんなで、夜空を見上げて、夏の大三角を見つけましょう。」
夏の空は、少しづつ、少しづつ、暮れていきました。