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【和訳しました】BUTTHOLE SURFERS/BIRDS

 自分は、語学力の向上を目的として、週に一度noteに洋楽の歌詞を和訳している者です。今週はBUTTHOLE SURFERSの"BIRDS"を訳しました。

 自分は一ヶ月前にもBUTTHOLE SURFERSが2001年に発表した"Dracula From Houston"という曲を訳し、その際本当に「なんという素晴らしい歌詞であろうか」と打ち震えました。それが今回、"BIRDS"を訳した理由となります。
 "Dracula〜"を訳し終えたその直後に「これは、いてもたってもいられねえや!」という気持ちになり、その足でディスクユニオンに赴いて1996年にキャピトルから出たバットホール・サーファーズのアルバム"Electriclarryland"を再び買い直しました。自分が若い頃に聴き、「単なる普通のロックでしかない。世間が言う様な狂気を何も感じない。凡庸」とまで断じて手放してしまった作品です。なんて偉そうなガキだったんだ俺は。

 その作品を、おっさんになった今聴いてみたら、どれほど光り輝いて賞賛に値する作品として聴こえた事でしょう!!!!サイケデリック云々といった観点からでは無く、バンド、特にボーカルのギビー・ヘインズの人となりを率直に伝えてくる真っ当なロックとして感銘を受けざるを得ませんでした。
 自分はある時期から「どれだけメチャクチャに聴こえる前衛音楽でも"良し悪し"というものは絶対に存在しており(その判断の基準は個人個人の孤独な裁量でしかないのですが)、その際の自分の評価の基準は『ちょうどいい音が、ちょうどいいタイミングで鳴っている』といった"デザイン性"や、例えば灰野敬二であれば、西洋音階とは異なったやり方でロックしようとする"その人の孤独な哲学観"に裏打ちされているだけなのだ」と思う様になりました。一見自由の塊の様に見えるアバンギャルド音楽も結局は人間が築いてきた知識や秩序に基づいて成り立っており、"全てが許されている夢の国から輸入された様な、完全に現実と関係無い音楽"とかはほぼ存在しない。どれだけフリーキーなアバンギャルド音楽でさえ人間というしがらみの中に居るのだ、という観念。
 自分が若い頃に音楽に求めていた「頼む、俺を自由にしてくれェ〜!!!現実から解放してくれェ〜!!」といった無尽蔵な欲求は、歳を取る内に「俺は普通の人間で、音楽を聴くだけで自由になれるみたいなシチュエーションは無い。音楽とは気分を高揚させてくれる程度の娯楽でしかないが、それでいい。結局は自分が頑張るしかないのだ」、とダウンサイジングされていきました。しかし、その枯れた境地に立った今の自分であるからこそ、メジャーデビュー後のバットホール・サーファーズに狂った分かり易いギミックを求める事も無く、そのロックとしてのシンプルな魅力へと目を向けられた気がします。

 "BIRDS"は、その"Electriclarryland"の最初に収録されている曲です。この"BIRDS"は"鳥"では無く、"奇人、変人"の意であると思われます。今回も本当に難しい内容で完璧に訳せた自信は一切無いし、まず、かなり酷い内容の歌詞、ではあります。

BIRDS/BUTTHOLE SURFERS

で、俺達はここで何してんだ?ハハハ… 

お前はブッ飛び始めて 既にお前の指に刺されてる
髪の中ではローラーコースター・ラブが開始
泡を弾けさせたいけど、面倒の元だと知ってるよな
誰一人気にかけてくれないと思ってるからな

うるせえな、詐欺だろ、お前は一人前、俺等は友達
他には何も言う事がありません
で 俺達はお前にあの声を思い出せる選択をした
"今日は最良の日だ"って
ああ、ムカつくな、 無名になりてえよ
もし決定出来ないと…俺は俺とセックスしちまうぜ

お前は小便する 俺がビッチを欲しい理由も知ってる
お前を怖がらせたままにするプレイ・ルーム
お前はシラフ お前の目は物を見ようとしてボケる
で お前は自分が何処に居るのか分かった事が無い
見えない、聞こえる、本物のトリップ
宙を舞うダイナマイト
さあ、あいつらよりはマシな奴等がお待ちかね
それが何を欲しがってるのか理解できないし
それは俺のハートをほぼ完全にブッ壊しちまった
ただ単なる品評会の様なシチュエーションで

お前は何一つ出来なかった
何一つやり遂げられなかった
違ったスタイルを試す事も出来るぜ
でも結局は前と同じになるだろうな
ご苦労!

東方への遠征の代わりに こう考えてみたらどうだ
"毎日が最良の日だ"って
どん底生活の中で奮闘する お前は唯一のバカ野郎
感情は訪れて、そしてそのまま消えて行く
ああ、ムカつくな、 無名になりてえよ
もし決定出来ないと…俺は俺とセックスしちまうぜ

俺自身にウンザリ、彼女に抗えない、知ってるだろ
彼女は俺がメイン州に向かってるのももう知ってる
彼女は俺の銃に命令して 俺を苦境に立たせる
彼女が走り出したら 道を空けないと

うるせえな、詐欺だろ、お前は一人前、俺等は友達
他には何も言う事がありません
で 俺達はお前にあの声を思い出せる選択をした
"今日は最良の日だ"って

お前は何一つ出来なかった
何一つやり遂げられなかった
違ったスタイルを試す事も出来るぜ
でも結局はいつも床の上に這う事になるんだよ
ご苦労!

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

 自分で訳しておいて何ですが、惚れ惚れするほど不快な歌詞です。90年代のオルタナティブ・ロックが語られる際に頻出するクリシェを今、心からの素直な気持ちで言うのですが、よくこんな酷い内容の曲がメジャーレーベルから発売されたものだと思います。
 この曲でのギビー・ヘインズの歌い方には、最初の「ハハハ…」という哄笑以外には、演技かがっていて大仰な部分はどこにも無く、ただ率直、ぶっきらぼうに自分の感情を飾らないままに歌っている様に自分には聴こえます。「ロックとは狂気の音楽である」という物言いがありますが、ギビー・ヘインズは狂気をロックを使って表現しようとしたのでは無く、ただ、ドラッグで狂ってしまった己の感覚や感性をロックに乗せて吐露しただけなのではないでしょうか。その様な気がしてなりません。
 そして、その意味で自分はバットホール・サーファーズの音楽に、自分が泥棒をしながら生きてきた事をただ綴っているジャン・ジュネの小説や、自分の感情や感性以上の事を一切歌っていないが故に感動的なピーズの楽曲等と似た魅力を感じます。

ピーズ/とどめをハデにくれ

 他人と違う感性の為に現実世界で呻吟している人間が作った表現は、その奇矯な視点から周りからは異端であると見なされてしまう事も多々ありますが、その実は至極真っ当な、誰もが思っている事を主張しているだけのかもしれません。その様な可能性を考えられる様になっただけでも自分が老いた意味はあったのだろうと思いました。

アルビニは予告編の最後で「彼らと関わったことを後悔しているよ。あんなひどい連中と関わりたくなくなかった」と語っています。

 早く見たいですね!それではまた〜!

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つやつやと実っている稲穂
なあ、頼む……たったの5ドルでいいんだって… 確かに昨夜はツキが無かったよな、ベニーがヘマ打っちまって…いや、イカサマじゃねえ、生まれ故郷のアリゾナに誓えるぜ、ただ必勝法があるのさ…次は負けねえよ…なあ、ハニー、5ドルでいいんだ…マンハッタンの夜景の様に俺を愛してくれよ…