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【詩の森】728 花を贈るひと

花を贈るひと
 
知り合いのMさんに
詩集『もっとほんとうのこと』を贈った
しばらく経って
彼女が小さな花束をもってやってきた
出版祝いだという
 
花束を貰った記憶は
人生で数えるほどしかない
この前は定年退職したときだった
十年ぶりに貰った花束―――
何だかうれしい
 
久し振りに会った僕らは
時を忘れて語り合った
理不尽な世の中ことを話しながら
僕の心はふしぎと
花のようにときめいていた
 
花はやがて
枯れてしまうだろう
しかし花の記憶はずっと残るだろう
贈ったほうにも
贈られたほうにも―――
 
花―今ここにある命のきらめき
僕の娘にもMさんのような
花を贈るひとになってほしい
ささやかな
親の願いである
 
2024.10.5
 

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