【詩の森】正しく問えば

正しく問えば
 
ユーチューブで
コスタリカの弁護士
ロベルト・サモラさんの講演を
聞いていたときのことだ
彼はいう
日本政府は
自衛隊は軍隊ではないという
日本人は何故問わないのだろう
それなら
「軍隊の目的は何ですか」と―――
攻撃ですか？
防衛ですか？
正しく問えば真面な答えを
引き出すことができるだろう
国連憲章２条４項で
戦争は国際的に禁止されているのだから
軍隊の目的は防衛だと
答えるしかないはずなのだ
 
だから例えば
自己責任だと政府がいうときは
政治責任ではないといいたいのだから
逆手にとって
それでは政治責任とは何ですか
と問い返せばいいのだ
政治責任について答えられない政治家は
皆無であろう
例えば福島の原発事故被害が
風評被害だというのなら
政府は実害ではないといいたい
だけなのだから
それでは実害とはなんですか
と問い返せばいいのだ
メディアの務めは
政府がいったことばを
オーム返しに
広めることではないはずだ
 
２０１２年
ブエノスアイレスでの
オリンピック招致演説で
あの人が
汚染水はコントロール下にあると
言い放った時
逆にそれでは
コントロール外にある状態とは
どういう状態であるのか
そう問い糺したメディアを
寡聞にして僕は知らない
あの時
一様に口を噤んだのが
主要メディアではなかったのか
そしてこの国は
原子力緊急事態宣言下に
オリンピックを開催した
唯一の国に
なったのである
 
正しく問えば
真面な答えを引き出すことができる
軍隊の目的が
防衛であるなら
自衛隊は軍隊である
原発事故によって
国土は放射能汚染されたのだから
福島の被害は実害である
それをどうして
言いくるめることができようか
ロベルトさんは
さらに言う
民主主義の最大の敵は
軍隊であると―――
武力とは暴力である
軍隊の銃口が
市民に向くことだって
往々にしてあることなのだ