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【詩の森】僕の射程

僕の射程
 
サラリーマンだった頃
僕の射程は
今日一日のことか
せいぜい一と月先の
スケジュールくらいのものだった
自宅と会社を
ピストンのように往復し
いつも寝不足で
疲れていた
そんな生活に疑問も持たず
仕事の知識ばかり取り込みながら
何十年も過ごしてしまったのは
僕が考えることを止めていたからだ
いや考える余裕すら
なかったのかもしれない
しかし
いくら悔やんでも
過ぎ去った時間を
今さら取り戻すことはできない
労働とは
自分の時間を切売りすること
だったのだ―――
 
定年になって
僕の行動半径は
とても小さくなったけれど
考える世界は格段に広がった
僕は今
何の制約もなしに
自由に考え
本を読み
インターネットを漁り
どこまでいけるか分からない
旅を続けている
隣の国の言葉を学び
英語ニュースで
錆び着いた英語を磨き始めている
ダイレクトに
世界を知るために―――
そうさ
考えるだけなら
僕は無限の射程を
手に入れたのさ
 
今日初めて知ったことが
一つでもあれば
君は昨日の君ではない
今日初めて
疑問に思ったことが
一つでもあれば
僕は昨日の僕ではない
そうやって
僕らは変わっていく
君の中にたった今生まれた疑問が
君の羅針盤となるだろう
しかも
そうやって多くのことを
知れば知るほど
僕らはしだいに
謙虚になっていくだろう
世の中には
僕らの知らないことや
隠されていることが
山ほどあるのだから―――
 
だから
話し合うことは
僕らに大きな収穫をもたらすはずだ
互いに謙虚になって
話し合えば話し合うほど
昨日までの僕らを変えてしまうような
大きな気づきが
得られるかもしれないのだ
話し合うことは
僕らの世界が
どういう世界なのか
どう見えているのか
互いに開陳しあうことなのだ
二人だけで話しても
見え方は大いに異なるはずだ
それは
僕らが知っている情報が
それぞれ違うからだ
その違いをシェアすることが
話し合うことの意義なのだ
 
時々集まって
話し合える仲間がいれば
僕はそれだけで
仕合せだ
それぞれの射程のうちに
捉えたものを
披露しあえるからだ
世界を騙す
地球規模の嘘は
これからどうなっていくのだろう
彼らのいう通りなら
2020年に
ニューヨークは
海底に沈んでいたはずだ―――
邪悪な黒雲が
地球を覆いつくす前に
僕らは目覚めなければならない
僕らはすでに
彼らの力を思い知ったはずだ
あのパンデミック騒動で―――
 

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