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【詩の森】スコシノダイジナコトダケヲ

スコシノダイジナコトダケヲ
 
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ―――
『雨ニモ負ケズ』という
詩の一節だ
情報化時代の今日
いざこれを実行するとなると
いうほど簡単ではない
技術の進歩が
アラユルコトヲ
桁違いに
広く深くしているからだ
 
僕らは
様々なメディアから
日々新たな情報を受け取っている
しかし
アラユルコトからみれば
それは
ホンノスコシノコト
に過ぎないだろう―――
そこで
僕は決めたのだ
賢治さんにはなれないけれど
スコシノダイジナコトダケヲ
ヨクミキキシワカリ
ワスレマイト
 
安全な食べものが
健康な体をつくるように
僕らには
正しい情報が必要だ
食べものが安全かどうかも
正しい情報がなければ
判断できないだろう
しかし
この国で
正しい情報を得るのは
実はとても
難しい
 
例えば
加工食品の原材料表示だ
最近「遺伝子組換えでない」
という表示を
とんと見かけなくなった
実は
表示ルールが改正され
2023年4月1日の施行に向けて
着々と準備が進められているのだ
その結果
表示自体が無くなりつつ
あるという
 
改正前のルールでは
GMOの意図しない混入が
5%以下なら
「遺伝子組換えでない」と表示できた
ところが
厳格化された新ルールでは
意図しない混入が
ゼロでない限り
「遺伝子組換えでない」とは
表示できないことにされたのだ
そして
これまでの5%以下の混入は
「分別生産流通管理済み」などと
表示できるという
 
このルール改正は
どんな変化をもたらすだろうか
この国は大豆もとうもろこしも
その大半を輸入に頼っている
そして輸入品の殆どが
GMOだといわれている
製造工程で輸入品も国産品も
共に扱う業者にとって
意図しない混入をゼロにすることは
ほぼ不可能だろう
これが
「遺伝子組換えでない」という表示が
消えつつある理由なのだ
 
ところで業者は
意図しない混入5%以下を
アピールするために
「分別生産流通管理済み」などと
わざわざ表示するだろうか
もし消費者が情報に疎ければ
「分別生産流通管理済み」が
かつての「遺伝子組換えでない」だとは
誰も気づかないだろう
そこには
遺伝子組換えのいの字もないからだ
「分別生産流通管理済み」という文言が
消費者の購買意欲を
刺激しないと分かれば
業者は表示することを
躊躇ってしまうだろう
 
この一連の流れを
消費者からみれば
「遺伝子組換えでない」という表示が
フェードアウトしていく過程だと
いえるだろう
言葉がなくなれば
僕らの意識からそれは消えてゆく
つまり
遺伝子組換えが当たり前で
問題にすらならない時代が
すぐそこまで迫っている
ということなのだ
それが僕らの健康に何をもたらすか
誰にも分からない
 
さらに不思議なのは
先ごろよくみかける
「国内製造」という表示だ
お菓子のパッケージに
小麦粉(国内製造)などと書かれている
国内の文字につられて
「日本で作った小麦だから安心」だと
早合点してはいけない
これは単に
「輸入小麦を、国内で製粉した」
というだけのことだ
このような表示がなぜ必要なのか
僕には理解できない
 
さらにいえば
ゲノム編集食品については
はじめから
一切の表示が不要だというのが
政府の見解なのだ
遺伝子組み換えとは
自然界では起こりえない
種を超える遺伝子の人為的移動のことだ
そしてゲノム編集とは
不要な遺伝子を乱暴にも
切り取ることなのだ
どうやら
この国の為政者は
そんなことは取るに足らないことだと
考えているらしい
この国で
正しい情報を得るのは
実は
ほんとうに難しい
スコシノダイジナコトダケヲ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ―――

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