【詩の森】556 表層生活
表層生活
老化という言葉の
ほんとうの意味を知るのは
自分がそうなった時だと僕は思う
古稀に手が届くこの歳になって
眼はかすみ
耳鳴りがしだして
すぐに腰が痛くなる―――
老化という言葉の実体は
体験することで初めて分かる
学校でたくさんの言葉を
詰め込まれて
ただ分かったつもりになっているだけだ
まだ食べたことがなくても
まだ行ったことがなくても
まだそうなったことがなくても
その名前を知っただけで了解してしまう
僕らの知識なんて
その程度のものなのだ―――
想像してみよう
うわべの言葉によって
僕らが描き出せるのはうわべの世界でしかない
『愛』なんて愛してみなけりゃ分からない
『人生』なんて生きてみなけりゃ分からない
ああ自らを万物の霊長などと呼ぶ人間が
いったい『賢い』のか
『愚か』なのか
僕にはそれさえも分からないのだ
2023.10.17