
【詩の森】風の墓碑銘
風の墓碑銘
地球に対して
人間がどんなに悪さをしても
その挙句に
勝手に滅んでしまったとしても
100万年もすれば
放射能もあらかた静まり
遺伝子組み換え生物も淘汰されて
すべては
何事もなかったかのように
元通りに戻るだろう
ただ一つ
人類がいないということを
除いては―――
嗚呼そのとき
風の中に刻印された墓碑銘が
とぎれとぎれに
聞こえてくるだろう
汝人類
相争うことを好み
競争原理によりて
社会を構築す
競争は差別を生み
諍いを生み
戦を育てる
これすなわち
限りある地球の冨を
奪い合う構造なり
強者は弱者の生業をつぶし
奴隷化せんとす
新自由主義なる無法
これを加速せり
人間が得るのは
わずかに戦士の休息
束の間の
安らぎのみ―――
やがて
時来たりて
愚かなる権力者
相互不信の虜となりて
終に核のボタンに
手を掛けたり
かくて
100億の民草
悉く枯れ尽くせり
図らずも道連れにされし
生き物たちの怨念
いかばかりぞ
風の墓碑銘となりて
永劫に咆哮する
所以なり