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ALLEGAEON / Damnum【音楽レビュー】

  1. Bastards of the Earth

  2. Of Beasts and Worms

  3. Into Embers

  4. To Carry My Grief Through Torpor and Silence

  5. Vermin

  6. Called Home

  7. Blight

  8. The Dopamine Void, Pt. I

  9. The Dopamine Void, Pt. II

  10. Saturnine

  11. In Mourning

  12. Only Loss


アメリカ産テクニカル・メロディックデスメタル、2022年リリースの6thアルバム。

メロディとアグレッションの絶妙な配合バランス、多彩なアレンジや展開、そしてそれらを可能にする高い演奏力でもって、安定してハイクオリティな作品をリリースしてきている…という印象のバンド。
ただ自分にとっては、正直なところ前作『Apotosis』までは「質は高いんだろうけどそこまでハマらない」「琴線に触れそうで触れない」という存在であった。バンドロゴがあまりかっこ良くないとかそもそもバンド名の読み方がよくわからんとかの些末なことも微妙に影響していたのかもしれない。

しかしこの『Damnum』は、ALLEGAEONの最高傑作というだけでなく、自分が聴いた2022年リリース作品の中でも確実にTop5に入る超名盤であることは間違いない。もはやロゴも気にならないし、バンド名は「アリージョン」と読むことも判った!
音楽性が大きく変わったわけではなく、純粋に曲が良くなった。若干弱いと感じていたメロディやリフの一つ一つの煽情度が強化されているし、なかでもクリーンVo.パートの存在感は格段にアップしている。やっぱりクリーンで歌うならメロが良くないとね。

本作のメンバー構成は、
 Greg Burgess … Gt.
 Riley McShane … Vo.
 Michael Stancel
 … Gt.
 Brandon Michael … Ba.
 Jeff Saltzman … Ds.

前3作で叩いていたBrandon Parkが抜け、AVERSEDやUNFLESHといったテクデス/メロデス系のバンドで活動しているJeffが新たに加入。
RileyがALLEGAEON加入以前からやっているテクデスバンドCONTINUUMのライヴドラマーを務めた縁で引っ張ってこられた模様。
そしてこのJeffの加入が、本作のレベルを押し上げた要因の一つとなっている。前任者より上手い、とかいうことではない。
これまではGregを中心にギタリストが基本的なドラムパートを作っていたらしいが、本作は初めてドラマーが、つまりJeffが全てのドラムパートを構築したという。
リーダーがいくらソングライティングに長けているとしても、特にドラムに関してはやはり「餅は餅屋」の側面が強いと思う。ドラマーが生み出す細かなニュアンス等によって他のパートが刺激を受け、曲が進化してゆくということは多々あるはず。逆もまた然り。その相互作用こそが、バンドの重要な化学反応だ!

 アルバムタイトルDamnumは「損失/損害」などを意味し、メンバーが近年多くの死に接してきたことに由来するとのこと。
ジャケットアートワークも含め、全編に漂う仄暗さとよりシリアスな空気は、結果として過去最高に垢抜けた感じをもたらしていると思った。
レコーディングエンジニアはこれまでのほとんどの作品を担当してきたDave Oteroから変更は無いが、音質もやはり向上していて、よりクリアかつ重厚で非の打ち所が無い!

なお、本作を含め3作でヴォーカルを務めたRileyは残念ながら2022年に脱退。同年冬からのツアーにおいては、初期3作で歌っていたEzra Haynesが参加している。そのまま正式に復帰するのだろうか?

左)Greg、Brandon、Riley、Michael、Jeff

1 - Bastards of the Earth
クラシックギターの物悲しげな調べが、スプラッシュシンバルのキーン!で断ち切られて爆走!イントロメロ=サビメロの構成。後半では間奏に続いてクリーンの歌メロ。SCAR SYMMETRYとかSOILWORKとかに近い、爽やかハンサム系の声質で好きなタイプ。高低のスクリーム/グロウルもかっこいいし、本当に良いヴォーカル。

2 - Of Beasts and Worms
深い悲しみが横たわる静謐の中、低い呟きに続いて清らかな歌声が響き、そして太い咆哮と共に全パート一斉に入る。#1のイントロに続き、完全なガッツポーズ展開。歌い始めのグロウルは鳥肌ものの迫力、そしてサビの歌メロは本作中一のキャッチーさを誇る。MVでJeffが叩きながら口ずさんでる気持ちがめちゃ解る!間奏でのMichaelの速弾きもMVで見るとスリリングさが倍増。
(MVは年齢制限が設定されているのでYouTubeサイトにて。)
https://www.youtube.com/watch?v=PFNGAcYibSI&list=OLAK5uy_ksAIRFRz5cJe-25ycC1wnxpByxb3ykfIE&index=3

3 - Into Embers
聴く者を幻惑する浮遊感のある冒頭から、そのままツービートで勢いよく疾走!歌い出しと同時に始まる、急き立てるようなリフは、この曲の中心を成すフレーズの一つで、特徴的なリズムは中毒性が強い。終盤の突き抜けるようなクリーンVo.はやはりSCAR SYMMETRY感が強く爽やか!からの、直後の鬼咆哮+djentぽいリフのヘヴィ展開は最高すぎる。そしてMVかっこ良すぎ。

4 - To Carry My Grief Through Torpor and Silence
打撃のようなブラストと、高速バスドラ連打の上に早口のグロウルが畳みかけるように被さる動のパート。そして哀愁漂うクラシックギターから、ジャズ/フュージョン的雰囲気の静のパート。ギャップの激しい展開を流れるようにごく自然に繋いでゆく。ギターのキュウゥゥゥゥゥゥゥゥンから入る、泣きのソロが中心となる間奏は激熱!

5 - Vermin
タム系主体のドラムとベースのコンビネーションがちょっとTOOLを彷彿とさせる冒頭部分に続いて、メタル然としたキメとテクニカルなイントロへと展開する。クリーンVo.や静のパートは無く、展開的な振れ幅が小さいという意味では本作中でもストレートな曲の部類。暗いMVの割にギターソロは煌びやかでサビは壮大さと悲痛さが入り混じったようなメロディで胸が熱くなる!

6 - Called Home
Greg
Rileyがそれぞれ自殺した友人を偲び、同時に区切りをつけて前に進むための追悼曲だという。ミドルテンポで、クリーンでしっとり歌い上げるパートの比重がひときわ大きいが、特に後半での獰猛なグロウルとヘヴィかつテクニカルな演奏で襲いかかってくるようなパートが一層引き立つ結果となるので、その落差が好きな自分は大歓迎の展開!
今作はOPETHを引き合いに出されていることが多いようだが、この曲の2:06頃〜のパートは確かにそれっぽい!

7 - Blight
#6から一転してソリッドなリフで攻勢をかけてくるモダンなデスメタル色濃いめのナンバー。ドラムの雰囲気含めどことなく『Ruination』時のJOB FOR A COWBOYを感じた。基本グロウルのみだが、クワイヤというのかコーラスというのか判らないが、クリーン成分も一応ある。2:50頃〜の、ゲストピアニストTommy Bonnevialleが華麗かつアグレッシヴに弾き倒す間奏が最高すぎる!

8 - The Dopamine Void, Pt. I
渋く、ゆったりと歌を聴かせる、#9へ向けてのイントロ的な位置付け。ギターソロに続いて、軽やかだが寂しげなスネアロールのパート。その後半からバスドラのドッドッドッドッとベースの低音が入ってきたところで興奮が高まり出す!そして管楽器のような音色と、ここでもTommy Bonnevialleのピアノが合わさって、優雅な雰囲気に包まれる。そして…

9 - The Dopamine Void, Pt. II
#8からの流れで一斉にジャ~~~~ン‼︎で入るところから#9に突入。絶対そうくるとわかる流れだが、やはりガッツポーズ!そしてア゙ア゙ァァ~~~~!の絶叫と共に爆走!ここからのブチ切れ具合がたまらん。#8の歌メロに一旦戻るのも良い展開。2:26頃〜はARCHSPIRE的な早口グロウルが炸裂。より直線的なARCHSPIREに比べて、リフに合わせて抑揚が強い気はする。最後まで聴きどころ満載だが、#8から続けて聴けば最大限にカタルシスを得ることができる超名曲!

10 - Saturnine
シンセにグロウルだけが被ってくる冒頭部分だけは一瞬デスコアぽいが、荘厳な雰囲気のメロディを基調とする比較的ストレートなメロデスナンバー。Rileyの咆哮と同時に始まる、バスドラとシンクロする重い刻みがかっこ良すぎる!曲構成自体がシンプルなこともあって中盤のギターソロパートの存在感をひときわ強く感じる。GregMichaelが交互にソロを弾き、最後に2人で響かせるハーモニーはパワーメタル的な雄壮さを発している。要はちょっとクサい!が、それが良い!

11 - In Mourning
#12へと続く、クラシックギターによるインスト。タイトルは本作のテーマそのもの(直訳すると「喪中」)であり、故人との思い出を反芻し苦悩するような、あるいは故人の生前の辛苦を想像し救えなかった自分を責めるような、そういったやり切れなさに満ちているようで、胸が締め付けられる…

12 - Only Loss
幕開けはズシリと重く暗い雰囲気に包まれ、ヘヴィなリフと地を這うようなグロウルを中心に展開してゆく。全体的に本作でもっともデスメタリックな色合いが濃く、5:46頃~はスラミングブルータルデスかと思うような厳つさ!クリーンVo.パートは、爽やかな声質で特に悲壮なメロディでもないが、やはりそこはかとなく嘆きの響きが感じられる。本編がフェードアウトした後に再び鳴り始めるのは#11のメロディ、しかし雰囲気は異なり、苦悩の夜が明けて空が白み始めているような、試練を乗り越えた後の気だるさと心地よさが入り混じったような、ポジティヴな先行きを予感させるエンディング。



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