THE BREATHING PROCESS / Samsara 【音楽レビュー】
Et Hoc Est Infernum
The Traveler
Into the Night
Supervoid
The Conscious Observer
Servile
Dethroned
The Nothing
Sungrazer
Absolute Truth
US産シンフォニックブラッケンドデスコア、2018年リリースの3rdアルバム。
割と長く活動しているバンドで、今や大人気(?)のシンフォニック系デスコア/メタルコア界における先駆け的な存在ってイメージがある。
名作の1stアルバム『In Waking : Divinity』がリリースされた2007年は、SUICIDE SILENCE、CARNIFEX、WHITECHAPELなども1stを発表した年で、つまりそれくらいの重鎮クラスのはずなのに、知名度や人気の点でやや遅れをとっているのは、THE BREATHING PROCESSがメンバー定着に恵まれず結果として作品数が少ないのが理由じゃないかと思う。
この3rdアルバムでのメンバーは、
Jordan Milner …Gt. 、Vo.(backing)
Sara Loerlein …Gt.
Bryan Bever …Ds.
Ian Van Opijnen …Gt.
Cody Harmon …Vo.
Jake Staley …Ba.
Mark Bellofatto …Key.
オリジナルメンバーはJordanのみで、彼がこのバンドの心臓部であることは間違いない。上から3人は2022年リリースの4thアルバム時点でも在籍している。
因みにTHE BLACK DAHLIA MURDERのAlan Cassidyがドラマーを務めていた時期もある…!
これまでの4枚のアルバムはどれも名作で、Unique Leader と契約して発表した2022年の『Labyrinthian』は特にハイクオリティな名盤だけども、一番好きなのはやはりこの『Samsara』。
とにかく、Codyの邪悪な高音スクリームが良すぎる!!
邪悪さとともに、聴きようによっては可愛さ?も感じさせる、自分の中では「コロ助スクリーム」と呼んでいるタイプの声質である。コロ助とはもちろんキテレツ大百科のコロ助で、彼が腹から絶叫しているイメージ。誰かの共感を得られるかは謎だが…。
低音グロウルとのメリハリも強いし、かなり「歌っている」感があってキャッチーなのも良い!
それだけに、Codyがこの1作だけで脱退してしまったのが惜しすぎる。
ほかにI KILLED EVERYONEというデスコアバンドで活動してるけど、THE BREATHING PROCESSの曲のほうが彼の魅力が活きている気がする。
それは作曲スキルの高さの証でもあると思う。
1 - Et Hoc Est Infernum
ジャケットアートワークの雰囲気を表したような、どこか儚げなシンセ主体のインスト。
2 - The Traveler
実質的には#1の終わりからこの曲に突入!
冒頭からブラストに乗せて慟哭のような絶叫で聴いてるほうも力が入る!
3 - Into the Night
重厚なシンフォニックデスコアの趣きが強く最新作の作風に近い感じ。しかし高音シャウトで歌うサビ部分はやはりこのアルバムならではのキャッチーさ!
4 - Supervoid
荘厳なイントロに続いてデスコア然とした咆哮を合図に爆走!地獄の底から響いてくるかのような高音スクリームは鬼気迫り、中盤過ぎの不安を掻き立てるシンセと早口気味のグロウルのコンビネーションは絶品!
5 - The Conscious Observer
1:54〜の間奏でのギターの物憂いメロディが胸をえぐる…。イントロや序盤、後半部分など各所で切なげでしっとりしたパートが組み込まれていて、アルバムの中でも一際ドラマティックな印象だ。
6 - Servile
邪悪極まるコロ助が流れるように歌う序盤、哀愁のメロディックブラックと化す中盤、美しくも不穏なシンフォアレンジでブレイクダウンを彩る終盤と、聴きどころ多き名曲!
7 - Dethroned
ゆったりと、そしてヘヴィに幕を開け、仄かに煌めくようなキーボードの音色に続いて、身体の最奥部から絞り出すかのような魂の大絶叫でサビに突入…この「the venom courses through, he is numb」の部分の叫びは何度聴いても震える。キャッチーかつ哀愁に満ちたサビのメロディも堪らない、このバンドで最も好きな曲。
8 - The Nothing
上品なシンフォ要素と若干妖しさ漂う雰囲気からDIMMU BORGIRぽさも感じた。呪詛の言葉を投げつけられているような恐怖すら覚えるコロ助スクリームが激烈!
9 - Sungrazer
太陽をかすめて通過する彗星をサングレーザーという。かつて恐竜を絶滅させたのがサングレーザーの破片であったという仮説もあり、今後また地球へ衝突する可能性も…。
ということを踏まえて聴くと、この曲のコロ助パートは悲しみでも苦しみで怒りでもなく、緊迫した警告のトーンに聴こえてくる。
終盤の不穏さはSEPTIC FLESHのそれを彷彿とさせる!
10 - Absolute Truth
このイントロみたいな、ドラムがタム主体のフレーズで所々にスネアのアクセントが入るのいいよね。
ヴォーカルの激烈さは変わらずだが全体的な雰囲気は邪悪さよりもむしろ光を感じさせ、#1のようにジャケの世界観を表しているようでもある。3:51〜のピアノが感動を誘う!