見出し画像

構造デザインの講義【トピック7:基本構造のデザインを科学する】第3講:アーチの力学とフォルムの可能性

アーチは、現代建築のデザインと空間を演出します

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



自然材料を使った建造物で活躍してきたアーチの変遷

古代の建造物は、身の回りの自然素材を使って、安定な構造となるよう、工夫して作られてきました。
そのフォルムの美しさは、力学と構造の原理にかない、構造美を感じることができます。

力学・数学の最適解=双曲線関数による錦帯橋の曲線は、芸術的にも優れた造形美を見せる
真のアーチ=迫持ちアーチによる力学的合理性と、造形美を備えた長崎・眼鏡橋

近代・現代の構造材料=コンクリートや鉄鋼材料の登場により、材料特性が向上し、高い加工技術と合わせて、より大きく、より長い、建造物が作られるようになりました。

RCの様々な構造形式による大スパン構造物が登場する中、版状やシェルによる薄肉コンクリートの構造も見られます。
それは、構造全体の力学的合理性に裏付けられ、材料の軽量化によって、フォルムとしての美しさも兼ね備えたものです。

RCシェルの名手:ロベルト・マイヤールのサルギナトーベル橋


現代の大スパン構造の多くは、鉄鋼材料によって作られています。
トラスやラチスによる構造と力学の合理的方式は、構造体の軽量化や耐風への配慮とともに、生産システムとしても合理的な方法が確立しています。
これらの構造方法は、土木構造物や建築構造物の差に関わらず、共通しています。

膨大な鉄骨量によるハーバーブリッジは、アーチとトラス、ラチスによる構造形式によって、線材としての存在感で軽やかに魅了する

アーチの力学と美を取り込んだ現代建築構造物

橋梁、すなわち開放系の構造としてのアーチのは、建築構造物の大空間へも利用されています。
力学と構造的な合理性だけでなく、アーチによって天井・空間を高く見せ、飛翔感を演出する建物も見られます。

世界から多くの人が集まるイタリアの玄関口、ローマ空港ターミナルの魅力的な空間を支える
東京国際フォーラム・ガラス棟の大空間は、サスペン・アーチ構造によって支えられている
国立代々木競技場・第一体育館のスタンドは、RCアーチにより構造安定をはかるとともに、飛翔感のあるフォルムを演出する
エール大学・ホッケーリンクは、キールアーチによって大空間が支えられている
アーチの端部は反り上げられており、曲面構造のフォルムにアクセントをもたらしている
新国立劇場の大屋根は、長辺方向にむくりを設けて、アーチによる構造的効果を利用している
独創的な立体空間とフォルムの、武蔵野の森総合スポーツプラザは、鉄骨トラスによるアーチによって屋根架構が支えられている
アーチは、空間の高さと広がりを演出するとともに、鉛直変位を抑えるが、アーチ端部のスラストへの対策が取られている
飛田給駅の駅舎は、鉄骨トラスのアーチにより大空間と屋根が支えられている
このエリアのスポーツ施設の雰囲気をもった玄関口としての共通性が感じられる
京都駅の大屋根は、鉄骨の平面・立体トラスによるスペースフレームと、曲面を構成するアーチからなる

<<前の記事 | 次の記事 >>


研究室のSNS

鉄骨構造の教材(電子書籍)

東京理科大学・鉄骨構造の授業で使用している電子書籍です。
どなたでもご利用いただけます。 →説明のページ
(リンク先のページ中段のpdfアイコンをクリックしてください)

いいなと思ったら応援しよう!