見出し画像

構造デザインの講義【トピック10:合成構造の可能性】第3講:木+αの構造デザイン

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



自然に溶け込み・見事なまでに調和したシェルターインクルーシブプレイス・コパル

コパルは、山形市の子育て環境の整備の一環として、山形市の南部地域に建てられた児童遊戯施設です。
建物のシンボルでもある曲面状の屋根は、蔵王連峰や周囲の自然と見事に調和し、風景と一体化しています。

曲面の屋根と低層の建物は、蔵王連峰や周囲の自然、雲、空と呼応する
遊技場と体育館、カフェなどの多目的室、広場は、ランドスケープとの一体感を意識してレイアウトされている

立体曲面の大屋根は、体育館と遊技場の中央に集成材(カラマツ)のアーチが現わしで用いられ、その周囲を高い剛性の鉄骨トラスを囲むように配置して、ハイブリッドの大屋根構造となっています。
最大スパン25mの集成材アーチの端部に生じる軸力は、鉄骨トラスの軸力材によって支えられます。
RCの下部構造を基盤として、この立体空間の大屋根が支持されています。
RCは構造的コアとなり、居室が設けられています。

3本のスロープが設けられ、建物を立体的に回遊することができる

建物外周部には、線材である鉄骨柱が配置され、ガラス窓からの視線を阻害しないように工夫されています。
ライズの低い屋根からのスラスト(水平推力)は、ブレースを配置してRC耐力壁に伝達され、開口部に影響しない構造となっています。

曲線形状の平面から、応力が集中する場所には、鉄骨ブレースが配置され、屋根からの応力やスラストをRC壁に伝達するための工夫が見られる

自然遺産の風景に溶け込み、調和した、スイデンテラス

スイデンテラスは、山形県庄内地方の水田地帯の宿泊施設です。
日本の田園風景の自然・景観遺産とも言える美しい水田の風景を壊すことなく、風景に見事に溶け込んでいます。
スイデンテラスとともに、遊戯施設・キッズドームソライと研究所による3つの施設が併設され、ランドスケープに配慮した風景となっています。

建物の基壇となるRCの1階の下部構造は、建物の構造コアであるとともに、ピロティーとすることで、あたかも水田に浮かんでいるように演出しています。

多雪地域のため厳しい積雪荷重の条件に対し、RCと鉄骨による混構造を基盤としつつ、木の空間を感じられる大空間が、高度に実現されています。

スパン16mのロビーとエントランスの吹き抜けは、木の空間を感じることができる
ハイブリッド張弦梁構造システムの大屋根は、集成材の折板と細身の鉄骨テンション材のバランスから、鉄骨材は存在を消している

建物2階は、RCを構造コアとし、鉄骨柱とLVL(木材の単層積層板)の耐力壁によって、吹き抜けを含めた大空間となっています。
大屋根は、集成材の折板構造と、鉄骨テンション材によるハイブリッド構造となっており、心地よい木材の空間を感じることができます。
これにより、木材空間として統一感を持たせています。

建物外周は、細身の鉄骨フレームと、LVLのバランスから、木材の空間を演出している
集成材の折板屋根との統一感も得られる
RCによる構造コアは、木材の大空間を邪魔することなく、適度なバランスを保つ
集成材の折版構造は、周囲の水田に強すぎない存在として、調和する効果をみせる

<<前の記事 | 次の記事 >>


研究室のSNS

鉄骨構造の教材(電子書籍)

東京理科大学・鉄骨構造の授業で使用している電子書籍です。
どなたでもご利用いただけます。 →説明のページ
(リンク先のページ中段のpdfアイコンをクリックしてください)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?