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構造デザインの講義【トピック7:基本構造のデザインを科学する】第6講:フィーレンデールの力学とフォルムの可能性
東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です
トピック7:基本構造のデザインを科学する
第1講:自由に空間をイメージする
第2講:骨組の力学とデザインを考える
第3講:アーチの力学とフォルムの可能性
第5講:梁の力学とフォルムの可能性
第6講:フィーレンデールの力学とフォルムの可能性(ココ)
フィーレンデール構造によるメガストラクチャーのデザインと力学
柱と梁の骨組は、荷重を受けると部材に曲げやせん断が発生します。
柱や梁を単一部材とする方法以外に、トラスやラチスによるメガストラクチャーとすることがあります。
香港上海銀行は、フィーレンデールのメガカラムがファサードデザインを彩る
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(写真:Pixabay、https://pixabay.com/ja/)
メガストラクチャーは、部材を軸力材として利用することで、断面効率の良い構造となります。
これに対し、メガストラクチャーの斜材を無くして枠材だけとし、ちょうどハシゴのような構造部材とすることがあります。
フィーレンデール構造と呼ばれます。
斜材がないことで、柔らかな印象を与えるため、ファサードデザインとして用いられることがあります。
ただし、斜材をなくすことで、部材には曲げとせん断が作用するため、トラスやラチスと比べて断面効率は下がるため、注意が必要です。
材料と構造のハイブリッドシステムによるスイデンテラス
山形県庄内平野の田園風景の中で、洗練されたデザインでありながら、高度で緻密な構造デザインによるスイデンテラスは、周囲の原風景に見事に調和しています。
アプローチに設けられた矢来(やらい)が、この建物の構造コンセプトをシンボリックに表現しています。
1階のRCラーメン構造と、2階の木造を主とした鉄骨とのハイブリッド構造によって構成されています。
梁間構面の大スパン無柱空間は、コンクリートコアを設けて、鉛直荷重と水平荷重を負担させています。
ライズの低い山形アーチの木造屋根は、水平スラストに対してスチールのタイロッドが抵抗します。
屋根に作用する鉛直荷重による曲げに対し、木質部材が圧縮、タイロッドは引張を負担して抵抗します。
これら木質部材とスチールをストラッドで距離をとり、いわゆる張弦梁の構造システムを見ることができます。
折板構造の表現は、木質面材の存在感と細身のスチールの対比によって、木造が象徴的な屋根と天井を表現しています。
骨組は、鉄骨架構に木材を組み合わせたハイブリッド構造です。
桁行構面は、格子状の集成材による壁柱の構造体と、鉄骨骨組により構造が構成されています。
ブリッジには鉄骨によるフィーレンデール構造を見ることができます。
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大屋根に作用する曲げに対して、細身の鉄骨によるストラッドとテンション材が引張力に抵抗し、木天井が圧縮力に抵抗する、いわゆるハイブリッドの張弦梁構造
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モーメント図と架構デザインの深い関係、キアッソの税関倉庫
骨組の応力、特に曲げモーメント分布に対して、部材を配置すると、無駄のないフレームデザインとなります。
キアッソの税関倉庫は、山形ラーメンの曲げモーメント分布に対して、ストラッドを介して梁の上下の部材のせいを大きくしています
これにより、曲げ抵抗を高めています。
構造力学によって得られるモーメント分布がそのまま描かれたようなファサードデザインになっています。
斜材がないことで、柔らかなファサードの印象を受けます。
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鉄骨構造の教材(電子書籍)
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