構造デザインの講義【トピック9:曲面構造のデザインを科学する】第1講:シェルの力学とフォルムの可能性
RCシェルの世界観
東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です
トピック9:曲面構造のデザインを科学する
第1講:シェルの力学とフォルムの可能性(1)(ココ)
第3講:ドームの力学とフォルムの可能性
空間のイメージを結びつけるシェル構造
立体曲面の大空間は、建物の多様な用途や演出などの要望に対して、様々な目的を包含するこどかできます。
古代、身の回りの自然素材(石やレンガなど)を積み上げて、大空間・ドゥオモ(Duomo)を建設しました。
そこには、より強く、より大きな、安定した、大空間建築の構造技術の原点を見ることができます。
天高く、神聖で、幻想的な空間には、今日の建築構造技術にも通じる、普遍的な原理を内包しています。
近代の構造技術の登場により、表現がより多様になり、規模もスケールアップしました。
シェル構造は、その名(貝殻)の通り、曲面による連続的な構造物です。
建築空間をすべて覆う場合や、壁や屋根など、一部として用いられる場合があります。
複数のシェル構造を組み合わせて、建築物と空間を構成することもあります。
シェル構造は、対称性のあるものと、非対称や自由形状のものがあります。
前者は球形や円筒、円錐などです。
シェル構造は、力を曲面の中で分散し、全体に効率よく伝達することで、薄くても安定した構造とすることができます。
ただし、局部的な力に弱く、部分的に孔が開いているなど、非連続となる場合は、局所的に変形が増大することがあり、注意が必要です。
前者はちょうど、卵の殻を割るときのイメージです。
後者は、台所用品や食器などには、縁が補強されているものを見かけることがあります。
シェル構造の力学原理は、微小要素の力のつり合いから、基礎方程式(微分方程式)を数学的に表現することができます。
対称性のあるシェルの場合、基礎方程式の解法により、応力や変形を解くことができます。
自由なフォルムのシェルは、基礎方程式を陽に解くことができないため、数値解法によって応力と変形が計算されます。
シェル構造は、RCによる連続体で構成されることがあります。
このとき、力学と施工に工夫が必要になります。
コンクリートは、引張力に弱く、ひび割れることがあります。
そのため、引張力が作用する部位を見出し、引張鉄筋を配置したり、シェルに厚みをもたせるなど、構造を考える必要があります。
構造の安定性も、デザイン性も、最高峰の東京カテドラル聖マリア大聖堂
丹下健三と坪井義勝による東京カテドラル聖マリア大聖堂は、1964年に竣工しました。
1961年に実施された指名設計競技(前川國男、谷口吉郎、丹下健三)によって選ばれた案です。
RC造、地下1階、地上3階建、最高高さは40mにも達します。
特徴的な壁は、HPシェル・Hperbolic Poraroid(双曲放物面)です。
面内に曲率の異なる形状があり、鞍型シェルとも呼ばれています。
切断面には放物線と、双曲線が対になって現れます。
このHPシェルは、8枚がお互いに支えあうように壁として、また屋根として、立てられています。
脚部では、建物の外に広がろうとする力が生じるため、地中梁(タイビーム)が設けられています。
この建物を上空・真上から見ると、十字型にスリットが設けられています。
このトップライトは採光の役割もあります。
HPシェルの曲面に、太陽光の光と影が映し出され、幻想的な空間を演出します。
建築物の立体曲面の大空間では、HPシェルのほかに、球形シェル、ロングシェルなどをみることができます。
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