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構造デザインの講義【トピック10:合成構造の可能性】第4講:木+αの構造デザイン@梼原町の建物群
東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です
トピック10:合成構造の可能性
第4講:木+αの構造デザイン(4)、梼原町の建物群
第5講:その他の素材+αの構造デザイン
梼原町の生活や情報の中心であり、環境志向型の庁舎、梼原町総合庁舎
高知県と愛媛県の県境の梼原町には、特徴的な木造の建物群があります。
自然豊かで、緑に覆われた四国の国道を進むと、目の前に突然開かれた町が現れます。
梼原町には、茶堂(村の境や峠に設置され、だれでも、どこからでも入れる憩いの場としての小さなお堂)による文化がありました。
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自然に調和し、溶け込んだ木造建物群
梼原町総合庁舎は、地元の資源を有効利用し、環境志向型の建築物です。
林業が盛んな地元の木材の利用、風力発電や杉チップによるバイオマス発電など、環境政策が実践されています。
総合庁舎を中心に、銀行、農協、商工会などの施設が集まり、雨や雪などの厳しい気象条件の中で、住民サービスへ配慮された中心的な施設です。
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梼原町総合庁舎は、木造とRCによる構造です。
柱は、ボルト接合により大断面とし、梁は集成材を2段重ねた大断面として、格子状に組んで大スパン空間としています。
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最上段には、鉄骨トラスが設けられているが、木の空間の邪魔にならないように、デザインと納まりの工夫がみられる
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山並みのフォルムの外観と、森の中でくつろぐ内部空間、ゆすはら雲の上の図書館
雲の上の図書館は、山小屋のようなフォルムをしており、背後の山並みと調和する佇まいです。
この敷地には、梼原町複合福祉施設、体育館、保育施設があり、子供からお年寄りまで、幅広い世代が集う場になっています。
この図書館は、「人と自然が共生し、輝く梼原構想」の中核施設となっています。
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図書館の天井は、梼原産のスギ材を用いた木組で構成されています。
梼原町の自然や文化を保存し、情報発信することが意図されています。
樹木を想起させるこの構造は、森のような空間となり、木漏れ日を感じる空間となっています。
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館内は、起伏のある、階段状の空間構成となっており、イベントなどのステージとなり、また来館者は思い思いの場所に座ることで、自分たちの場を作って、時間を過ごしています。
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鉄骨ラーメンを基本として、木組が設けられた構造となっています。
方杖として設けられた木材は、耐荷部材として機能します。
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梼原・木橋ミュージアム
梼原町の木橋ミュージアムは、梼原町地域交流施設(雲の上のホテル)への増築で、ホテルと雲の上の温泉を結ぶ連絡通路兼ミュージアムです。
地元の木材を使うことで、周囲の自然とも調和した建物となっています。
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左右対称とした、やじろべえ構造によってバランスがとられている
全長47mのブリッジは、鉄骨柱を中央に据え、木造柱から杉の集成材を刎(はね、「桔」とも書く)材とした桔橋構造で支えられています。
桔橋は、日本三大奇矯・猿橋などにみられる伝統工法です。
集成材を集積させるとともに、複数重ねながら桁を構成させています。
また、中央柱に対して対象なスパンとし、やじろべえ構造としてバランスがとられています。
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