構造デザインの講義【トピック8:立体構造のデザインを科学する】第2講:テンション材の力学とフォルムの可能性
テンション材の細さが、力学とデザインにもたらす影響力
東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です
トピック8:立体構造のデザインを科学する
第2講:テンション材の力学とフォルムの可能性(ココ)
力学と数学によって裏付けられるテンション材の魅力
ケーブルなどに代表されるテンション材は、引張を負担するうえで有効な構造材です。
今日の建築構造物では、鋼製のテンション材が使用されることがあります。
細身の断面を活かすことで、存在を消し、多様な空間表現を可能とします。
吊り橋やサスペンス・アーチによる橋梁は、テンション材を利用した長大スパン構造です。
構造体の膨大な鉄骨量を支え、車両などの激しい交通振動にも耐えることができます。
テンション材を、建物の骨組に、単一部材として利用することは簡単ではありません。
建物は、壁や床、天井などの面材によって空間が構成されるためです。
そこで、建築構造物では、様々な構造の工夫が見られます。
吊り橋などのケーブルは、鉛直荷重により懸垂曲線・カテナリー曲線となり、テンション材には引張力のみが作用します。
曲げの力から解放されることで、構造部材は高い強度を発揮することができます。
このカテナリー曲線を、ひっくり返すと、鉛直荷重に対して圧縮力のみが作用することになります。
アーチや曲がり部材と似ていますが、力学的には全く異なる構造となります。
錦帯橋は、橋げたの構造の工夫だけでなく、懸垂曲線の形状により、力学的合理性を持たせることで、安定した構造物となります。
広島平和記念公園の、原爆死没者慰霊碑は、RCによるHPシェルで、局面の中にカテナリー曲線が見られます。
アメリカ、セントルイスの公園には、高さ180mの巨大なアーチがあります。
このジェファーソン・メモリアル・アーチ(ゲートウェイ・アーチ)は、カテナリー曲線となっており、鉛直荷重に対して圧縮力のみが作用し、構造的に安定します。
なお、水平荷重への抵抗として、脚部は末広がりの断面として構造安定を図っています。
著名な構造家、エーロ・サーリネンによって構造がデザインされました。
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