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構造デザインの講義【トピック7:基本構造のデザインを科学する】第5講:梁の力学とフォルムの可能性
東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です
トピック7:基本構造のデザインを科学する
第1講:自由に空間をイメージする
第2講:骨組の力学とデザインを考える
第3講:アーチの力学とフォルムの可能性
第5講:梁の力学とフォルムの可能性(ココ)
梁は、建築構造物の骨組を構成する基本・重要な要素です
大空間など、建築物の骨組を効率的に構成するため、柱や梁の骨組には様々な方法や工夫を見ることができます。
梁は、構造力学の学びの中で、極めて重要な力学の問題です。
この学びの過程で、力学の理解を深めることになります。
力学と数学を使いますが、公式もあるため、実務的にはそれらを利用して、梁を設計することができます。
まさに、数学的に解くことができる梁は、建物の骨組を支える屋台骨であり、建物の安全を計算するうえで重要です。
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たわみ曲線の方程式で、力と変形を知ることができる
力と変形を制御することで、耐震性を確保することができる
キャンチレバーのモノコック構造によるホキ美術館
ホキ美術館は、千葉県千葉市内の美術館です。
現代の日本人画家による写実絵画の細密画を専門的に展示しています。
閑静な地で、自然光を展示空間に取り入れ、森の中を散策しながら絵画を鑑賞できるような空間を演出しています。
内部空間は極めてシンプルで、建物のフォルムが象徴的です。
鑑賞に集中できるように、建築の仕上げもマッドでフラット・巨大な・プレーンな壁面となっています。
モノコックな空間デザインは、鋼板構造の得意とするところです。
鉄骨によるチューブ状の構造体が積層して全体を構成しています。
片持ち梁は、最大30m張り出し、その跳躍感が見る者を圧倒します。
その迫力は、不安を覚えることなく、構造技術に興味が向きます。
小口(開口側)に向けて壁面体にテーパーが付けられており、シャープな印象を与えています。
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先端の鉛直たわみの制御と、支持点の力に対する安全確保が重要となる
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一方で、巨大な片持ち梁の箱形断面に、スリットを入れる形となっており、梁の力学としては興味深い造形を示している
シンプルながら洗練された連続梁の水路橋
アリオスの水路橋は、X型のコンパス形状の橋脚によって支持され、長大の連続梁になっています。
コンクリートシェルの名手、エドワルド・トロハによる構造デザインです。
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コンクリートシェルの名手、エドワルド・トロハのデザインの一端を見ることができる
(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
支持点に挟まれたスパンには、構造体と水の重量を支えることで、曲げモーメントが作用します。
曲げを受ける断面には、圧縮と引張が作用します。
コンクリート系の材料は、引張によりひび割れが発生します。
水路にひび割れが生じると、それは致命的な状態となります。
そこで、モーメント分布に対し、断面に引張が作用しないように、プレストレストで圧縮力を導入しています。
現在でも現役のこの水路は、水漏れしていないと言われています。
プレストレストによる断面強度の向上とともに、梁に作用する曲げモーメントによって、断面に引張力が作用しないように、工夫されています。
また、水路の断面は、カテナリー曲線の形状をしています。
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(写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
カテナリー曲線と傾斜した柱による力学的合理性のフォルムをもったダレス空港ターミナル
ダレス空港ターミナルは、屋根の形状と、柱のレイアウトが特徴的な大空間です。
屋根は、カテナリー曲線となっており、柱は外に傾斜しています。
骨組構造は、屋根や床などの鉛直荷重を支えている中で、柱が内側に倒れるような応力状態となります。
これに対し、柱を外側に倒すことで、骨組応力に対して適切な抵抗機構をとっています。
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