構造デザインの講義【トピック4:鉄・鋼による構造とデザイン】第4講:長大スパンの構造とデザイン
力学のハイブリッドの実践、ロイヤル・アルバート橋。
サスペンションの美、クリフトン吊り橋。
東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です
トピック4:古代の石と木による構造
第1講:経験から科学へ
第2講:鉄鋼材料の登場と実践
第3講:鉄骨の繊細さとデザイン
第4講:長大スパンの構造とデザイン(ココ)
第5講:鉄の魔術師、エッフェル
第6講:長大スパンの構造の発展
ロイヤル・アルバート橋のサスペン・アーチと大スパン化
19世紀初頭、吊りケーブルとアーチを組み合わせたサスペン・アーチ構造の原理が理解されていました。
それは、大スパン構造に作用する曲げモーメントに対し、アーチが圧縮、ケーブルが引張を負担し、端部では水平反力が打ち消しあい、自碇式と呼ばれる合理的な構造システムです。
その後、橋梁や大空間建築の構造として採用され、建造物の大スパン化が加速することとなりました。
サスペン・アーチ構造の実現にあたり、鉄鋼材料は唯一無二の存在です。
ロイヤル・アルバート橋の鉄鋼は錬鉄製です。
設計者はアイザンバード・K・ブルネルです。
錬鉄は、これまでの鋳鉄に比べて炭素含有量が少なく、強度は低いですが、靭性に富んだ素材です。
上弦チューブは大断面であることから、圧縮力に対して十分に抵抗します。
ケーブルは、小断面であっても鋼材の高い強度を利用して抵抗することができます。
クリフトン吊橋
1830年、橋の設計コンペが公募され、K・ブルネルによる案が採択されました。
その後、1864年に橋は完成しました。
吊橋は、橋桁の鉛直荷重をハンガーロープでメインケーブルに分布荷重として伝え、引張力のみを負担する最適な形状として抵抗します。
メインケーブルの引張力は、支柱との接続点で鉛直力と水平推力・スラストに分解されます。
支柱からのバックステイによりスラストを処理する、まさに最小限の構造で表現されています。
近現代の大空間建築にも、その構造原理が採用されています。
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