父を見て男性ならではの生きづらさを思う
私の生まれは新潟県のど田舎だ。祖父に言わせれば「遡れば江戸時代ぐらいからこの場所に我が家が建っていた」という。
そんな無駄に歴史の長い我が家で父は長男坊として誕生した。昭和もまだ半分も行っていない頃の話だ。
昭和初期に生まれ、ど田舎の長男…。なかなかに大変だろうなぁと思う。しかも、この後何人か下が生まれるが男は父だけ。後継ぎの運命は免れない。
幸いにも我が家は農家なので、祖父が大黒柱だったときも父が大黒柱だった時も農作業は一家で協働し、生計を立てることができていた。
もちろん、父以外の人は基本的に雑務という感じなので、大きな事や大事な事は父が1人でやっていた。(これは私が子供の頃の話なので、祖父がやっていた時期もあったのだと思う。)
一家団結しないとやっていけない、それが農家!
余談であるが、よく「農家の嫁は休みがないから辞めておけ」という声を耳にする。
私は自分家の事情しか知らないので何とも言えないが、この言葉はまぁ事実だろう。
農家の嫁は、外で男と一緒に農作業をし、家で家事をし、子供が生まれれば子育てをする。
男性は外でとにかく金を稼ぐ、家に帰れば晩酌をしグゥたら眠る、子供とはたまに触れ合うという感じなので、タスクとしては女性の方が圧倒的に多い。そして、必然的に夫の家族と同居する運命なので、姑との仲が悪かった場合はもう最悪だ。
さて、農家の嫁もなかなか大変(嫁ぐ先にもよる。)だと語ったところで、話を戻す。
私が子供の頃の我が家はそんな感じで生きてきた。皆んなそれなりにやれていたのだ。
不穏な空気が漂い始めたのは、祖父母が認知症になり、父も母も体力の衰えを感じた昨今の事。私を含む子供達はみな自立して家を出たので、今は細々と年金生活をしている。
が、祖父母のディサービスの費用、(その後かかるであろう施設費用)毎日の生活費、飼い犬にかかる費用などなど、これらの額をこれまでの貯金と年金で賄うことなど出来るのだろうか。
母も祖父母も皆、父をあてにしている。それはそうだ。今まで表立って我が家の経済を回してきたのは父なのだから。我が家の財布は父のみぞ知る。
「大黒柱」という名の「稼ぎ頭」。
それこそが父親の、あるいは田舎長男の生きづらさなのかもしれないと思った。
思えば父が働いていない日を見た事がなかった。「今日は雨が降ってて何もする事が無い」といっていた時も必ず雑務をしていたし、パソコンを開いて何かしらしていた。
大の病院嫌いで健康診断の結果が悪かろうが病院にはテコでも行かない。
「病院に掛かるくらいなら仕事してるわ!」と言っていた事もある。
私の父はそんな人だ。自分の健康には見向きもせず、愚痴をこぼさず、誰よりも早くに起きて仕事をして、倹約家で贅沢を好まない。家計簿を几帳面につけて、コツコツとお金を貯めて来た人だ。
母は「お父さんが死んだら家が終わる」といつも言っている。(ちなみに母親の人生における自立度は無いと言っても過言では無く、専業主婦だったから、どうにかやってこれたような人だ)
父は70歳を超えた今でも、家族を支えている。
この間母から電話があって、その内容がどうにも気になってしまった。
どうやら、祖父が手作りのおかずを食べなくなり、栄養が取れないことを心配した母が市販の物を買って食卓に出したところ、父が「俺に無いのは不公平じゃないか」と言ったそう。
正直そんな事を言う父に驚いた。そして同時に、もうお父さんの精神も限界なんじゃないかなとも思った。
自分の痺れている足を引きずって、毎日祖父母の世話をして、農家をして、家族みんなに「貴方がいないと家庭が回らない」と言われ続け…そして今70歳。
だからこそさっきの父親が言ったしょうもない一言は「もう無理!こんなにやってるのに俺には何も無いのか!」と言う意味と似ているのなのかもしれない。
団塊世代の男あるあるなのか、うちの父は本当に弱音を吐かない。
「こんな事が大変で本当に辛い」とか言わない代わりに、「何でやってくんないの?」と相手に当たり散らす。
「男は弱音を吐くな」「叩かれて強くなれ」「家庭を守れ」と言われてきたからか、弱音は吐かないけれど、自分より立場が弱い同性や嫁には滅茶苦茶厳しい。昭和の男にはそんな偏見がある。
確かに昔はパワハラもモラハラも日常の中に当たり前にあった。理不尽に殴られる事なんてデフォルトだった。そう考えると、モラハラやDVって今までの社会が作り上げて来た産物で、男性たちも被害者なのかもしれないと思う。
(まぁ、洗い物もしないくせに貴方と同じように体調崩しながらも、1人で家事こなしてる母に文句言ってんじゃないよって思うけども!)
本当に昔の社会が作り上げてきた「男は外、女は内」の価値観は良くない。
変にラベリングして固定しちゃうと、色々と辛くなると思うんだよなぁ、お互いに。
男も女も1人で生きていけるくらいに家事ができたほうがいいし、程よく働いて給料をもらったほうがいい。どっちも必要なんだよなぁ…。働くことも家事をすることも。
どっちかに偏らせるべきじゃないし、お互いに負担を分け合っていくのが理想なのかもしれない。でももっと大事なことはどっちかの負担を軽くしたいと思う気持ちと実践できる行動力だと思ったり…。
ああ、何か語りすぎて過去一長い記事になってしまった。
そんなこんなで色々と実家も限界がきてるなぁと、母からの電話を受けて考えてた、という話です。
盆は帰ろう……。
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