スーパーGT 2020年シリーズ開催によせて

新型コロナウイルス感染拡大にともなった社会情勢の変化に対して、スーパーGTを主催するGTアソシエイション(GTA)が2020年の開催スケジュールのロードマップを発表した。
https://supergt.net/news/single/19965

最終戦の開催や、シーズン後半の観客動員の有無についてはまだ未定なところがあるものの、2020年のスーパーGTの方向性がある程度決定したといっても良いだろう。
全8戦でのイベント開催はキープしつつも、開催するサーキットを絞ることでウイルス拡散を最大限防ぐという方向性を示した。
この決定について、それが正しいのか否かは誰にもわからない。
そういうことが分かっていれば、世界はこんな風にはならなかったことが証明している。
全ての言説は後付けであり、各自のポジションを保持するための発言であることはここ数ヶ月の狂乱を見れば分かるだろう。
確かなことはGTAがスーパーGTという世界でも類を見ないユニークなレースカテゴリを存続するために、最大公約数の人が納得する落としどころを必死で探したというところであろう。
それは評価されて然るべきことだと思う。
あれやこれやと言いたてる無責任な外野をも一応は納得させる判断であった。
自動車レースはプロ野球やJリーグとは違う。そこまで社会に許容された存在では無い。
残念ながら一部には未だに暴走族と同じような認識すら持たれている。
そこまででは無くても、昨今のエコブームの風潮によっての風当たりは一定存在する。
こういう層には、レギュレーションに沿った競技である、とか技術を磨く場としてのレースといった反論は通用しない。
そういう「宗教」に入信しているからだ。
違う「宗教」同士は絶対に相容れることは出来ない。それは十字軍の昔から歴史が証明している。
コロナは断絶を表面化したが、それよりずっと前から我々は断絶していたのだ。それがたまたま表面化しただけのお話だ。
スーパーGTは日本を代表する3社の自動車会社が参入していることもあって、その社会的影響が大きい。
自動車メーカーの顧客にはそういった「宗教」の信者も勿論いる。いや、そっちの方が多いだろう。
そこに配慮した形での今回の落としどころは絶妙であったといって良い。
そういう判断をGTAは行った。このことはこの新型ウイルスの狂騒が過ぎ去ったあともちゃんと覚えておいた方が良い。

一方でそんなGTAに強く求めたいことは、2020年シーズンの「正当化」と「権威つけ」である。
全8戦中富士スピードウェイでの開催が4戦(最終戦はチャンインターナショナルサーキットの可能性も残っているが)
国内の限定されたサーキットで行う今シーズンは、それが国際格式のカテゴリとしてふさわしいものであるのか。
例えば、カテゴリも状況も違うが未だにF1の2009年シーズンのブロウンGPとバトンの戴冠に対して謂れの無い批判中傷をするものがいる。
その手の、無意味な批判や中傷が入りこむ隙間が無いようにGTAは例年以上の透明性と公平性をもってシリーズを運営しなくてはならない。
すでに一部ネット上では、富士スピードウェイに偏重した開催であることから特定のメーカー優遇などという実情を理解していない無責任な発言も散見される。
2020年にタイトルを獲得したチームやドライバーが後年「まあ、タイトルっていっても2020年だからね・・」と言われないための、ある種の「正当性」をこのシーズンに与える努力をするべきだろう。
せっかくこの状況下で頑張ってタイトルをとったチームやドライバーが不当な謂れを受けることないように、GTAはこのシーズンを例年以上に権威あるものにしなくてはならない。
それができて初めて、開催して良かったという評価を下すことが出来るのでないだろうか。

その上で、この機会をある種の貴重な「実験」が可能なシーズンとして活用することを強く求めたい。
たとえば、観客を入れることが可能となった場合にレースクィーンを完全に排除してみる。
個人的にはレースクィーンは大好きで、これはもうマシンを走らせるための機能の一部だとすら考えているのだが、スーパーGTが異常なレースクィーン人気の上に成り立っていることも事実だ。
その「機能」をいったん排除してみて、集客にどれくらい影響がでるのか。それがなければ三密が回避できるのか。
そういった視点で「実験」してみるのは悪くない。
集客に如実に影響がでた場合のGTA側のショックも大きそうだが、これは検討してみる価値はあるのでは。

また富士スピードウェイでのイベントのマンネリ化を防ぐために、土日での2ヒートでのスプリントレースも面白そうだ。
ドライバーがそれぞれパートナーの予選を走っても良い。
GTAがDTMとの共催イベントをまだ夢見ているのなら(アウディ撤退でおそらくDTMは無くなるだろうが・・)そういった準備に充てても良い。

シリーズの格式と権威を棄損しないレベルでなら、このシーズンは今後10年を見越した礎を作るためのあらゆる挑戦を行うべきだ。
それがひいては、万難を排して2020年シーズンに挑んだ全てのエントラントへの称賛に繋がるはずだ。

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