都内から成田空港にコスパよく行く方法
成田空港は都心からかなり遠い空港だ、とよく言われる。
たしかに羽田空港に比べれば、成田空港は地理的にも東京中心部から大きく離れており、交通面でも少し不便、いざ行こうとするとかなりコストのかかる空港である。その心理的距離のせいか、今までは結局のところ何がベストな交通手段なのか、わからずじまいの状態だった。
この(2024年)春、海外旅行やその他の所用で成田空港に出向く機会が結構あったので、この機会に成田空港までの交通手段を総括してみることにした。かなり長文のレポートにはなるが、ぜひ最後までお読みいただきたい。
(情報は2024年7月現在)
ざっくり言うと…
都心へ(から)ひたすら速く行きたい! → 京成スカイライナー or 成田エクスプレス
都心へ(から)コスパよく行きたい! → バス (LCB) or 「アクセス特急」
都心へ(から)ひたすら安く行きたい! → 鉄道でのアクセス「番外編」参照
① 鉄道でのアクセス
鉄道を利用するうえでのポイントは以下の通り。
他の交通手段と比べ、都心(山手線内)に速く移動することができる(最速36分)
ルートや列車を組み合わせることで、さまざまな場所からアクセスすることができる
速さと料金はトレードオフ
第一ターミナル (T1) と第二ターミナル (T2) に駅がある
第3ターミナル (T3) へはのりかえが必要
成田空港には成田空港駅 (T1) と空港第2ビル駅 (T2) の2つのターミナルがあり、乗り入れる2社(京成・JR)はどちらの駅にも停車する。一方で、鉄道を利用する場合は第3ターミナルへ直接アクセスできない。
T3へ移動するには、それぞれの「空港第2ビル」駅で降車したのち空港内を走る連絡バス(無料)に乗り換えることが求められる。T3への大きな荷物を持った移動には、少し不向きであるといえるかもしれない。
これらを踏まえ、それぞれの交通手段を比較していく。
1. 京成スカイライナー
都心へ(都心から)移動する際の最速手段。
最速36分(T2まで)でアクセスすることができる。東京都心からできるだけ速く成田空港に行きたい場合には、このルートが非常におすすめである。
スカイライナーの都心側ターミナルには、京成上野駅と日暮里駅の2駅がある。
ここで京成上野駅は、新幹線やJR各線・地下鉄が乗り入れる「上野駅」と少し離れている(徒歩5分ほど)ことに留意されたい。このためJR各線からの乗り継ぎに際しては、乗り換え改札があり乗換の容易な日暮里駅の利用を強くお勧めする。
上記の2駅から成田空港までの運賃は2,580円。ICカード(Suica, Pasmoなど)を使うと2,567円と、ほんの少しだけ(13円)安くなる。成田空港までの交通手段としては比較的高い価格設定だが、その速さの代償と考えれば安く感じられるかもしれない。
ただし、朝・深夜にはそれぞれ「モーニングライナー」「イブニングライナー」として、同型の車両に追加料金450円(スカイライナーの場合1,300円)で乗車できるサービスがある。そのうちモーニングライナーは1本、イブニングライナーは3本が成田空港始発/終着なので、この場合は同じサービスを1,730円(IC利用時は1,717円)で利用することができる。
早朝到着便を利用した際の帰宅時や、翌朝に出発する便の前乗りをするときは、活用を検討してみてはいかがだろうか。
なお、スカイライナーのチケットは下のリンクからネットで予約可能だ。
京成上野駅や成田空港駅・空港第2ビル駅の窓口は(特に外国人観光客で)大きく混雑するため、駅に着く前に予約することを強くお勧めする。
2. 成田エクスプレス (N'EX)
JRによって運転される特急列車。都心⇔成田空港の速さこそスカイライナーに少し劣る(最速50分)が、この列車の特長は各ターミナル駅からの直接アクセスができることと、都心以外(特に西部)からの移動に優れていることである。
N'EXには、京成スカイライナーとは違いこれといったターミナル駅がない。
山手線内の駅については、新宿・渋谷・品川・東京の各駅を利用することができる。また東京西部・神奈川県内からの輸送にも対応しており、大船・戸塚・横浜の各駅からも発着している。近くのターミナル駅に行くことさえできれば、乗換の手間なく成田空港に向かえることはかなりの魅力である。
またJRの路線網の一翼であるため、新幹線や在来線からの乗り継ぎに便利なこと・運賃通算ができることも利点の一つだ。特に学生割引が効く場合、遠距離からのアクセスには向いているといえる。東北・北陸からのアクセスこそ速度の面でスカイライナー(上野乗り継ぎ)に少し劣るが、東海道(静岡・名古屋・関西)方面からのアクセスは抜群である。
N'EXの問題点は、運賃が少し高いことである。たしかにアクセス性はいいものの、通常運賃では東京 ― 成田空港が3,070円するため、なかなか手出ししにくい。ところがJR東日本の『えきねっと』のチケットレス特急券と紙の乗車券を併用すれば、2,460円で乗車することができる(実はICカードを使うと2,462円で、きっぷを使った方が安い)。またチケットレス特急券は単体で利用することも可能なため、ICカードや通しの乗車券と組み合わせて利用することができる。
▽ えきねっと ▽
https://www.eki-net.com/Personal/Top/Index
(参考)静岡 ― 成田空港間の運賃比較(通常期)
新幹線(指定席)+ N'EX: 9,300円
新幹線(指定席)+スカイライナー: 9,050円
新幹線(自由席)+ N'EX (チケットレス): 8,160円
《学割は上記より910円引き》
3. JRの普通・快速列車
成田空港からは、日中おおむね1時間おきに普通(快速)列車が出発している。これらの列車を使うとたしかに時間はかかるが、それでも1時間半ほどすれば都心と成田空港とを移動することができる。
船橋・西船橋で乗り換えれば、東京湾岸部(京葉線・りんかい線・地下鉄東西線沿線)へのアクセスをとることもできる。もし長距離を利用する際も、ほとんどの列車にグリーン車が連結されているため、追加料金さえ払えば移動がさらに快適となる。
一番の問題はN'EXと同様に運賃が比較的高いことだろう。東京駅までの運賃は1,340円、品川・新宿・渋谷に行く場合は1,520円と、後述する京成を使った各ルートより高くつく。上野方面に行く場合も、後述する京成本線ルートの方が安くなおかつ速いため、優位性はあまりない。グリーン車を利用する場合も、グリーン料金が先述した成田エクスプレスのネット予約料金とほぼ同等のため、うまみは少ない。
都心への交通手段としては、少し中途半端である。
4. 「アクセス特急」
成田スカイアクセス線(スカイライナーと同じ路線)経由の特急列車。日中は40分間隔で走行しており、そのほとんどが羽田空港まで直通している。スカイライナーには少し劣るものの、それでも日暮里~空港第2ビル間を最速52分(cf: スカイライナーは最速36分)、青砥~空港第2ビル間は42分(同30分)で移動できることを考えると、なかなかコスパのいい手段だ。
この列車の最大のメリットは、スカイライナーと所要時間が十数分しか変わらないのにも拘わらず、特急料金を払わなくていいことである。先述したようにスカイライナーの運賃は2,580円(IC 2,567円)だが、そのうちの1,300円を特急料金が占めている。すなわち、上野~成田空港をアクセス特急で移動すれば(といっても、直通するのは平日夜3本しかないので青砥乗換は必須だが)、料金は1,280円 (IC 1,267円)で済むことになる。
さらにメリットは続く。先述したようにこの列車は(都営浅草線を経由し)羽田空港まで直通しているのだが、その途中で押上(スカイツリー)や浅草、大門(東京タワー)など観光地を経由するため、特に(地理に精通していない)観光客にとってはスカイライナーより楽な手段となりうる。加えて地下鉄6路線(半蔵門線・都営大江戸線・都営新宿線・日比谷線・銀座線)に接続しているため、都心各地域に1回の乗換のみで向かうことができる。
デメリットは、使用される車両がごく普通の地下鉄車両ということだ。これは安さの代償とも言い換えられるが、快適性や荷物の収納にはやや難がある。一部の車両に座席を跳ね上げる形式の荷物スペースはあるものの、特に都心からの移動の場合は座席が使用されている場合も多く、スーツケースなど大きな荷物を持った移動には向いていない。また有料列車と違い座席指定もないので、ラッシュ時は立席が見込まれる。
5. 京成本線
アクセス特急・スカイライナーが使う新線(成田スカイアクセス線)とは違い、従来京成が使っていたルート(京成本線)を使うルートである。少し遠回りではあるが、それでも1時間20分ほどで上野~成田空港を行き来することが可能だ。
実はこちらの方が運賃が安く、京成上野・日暮里~成田空港で1,060円(IC 1,052円)である。日暮里でJR線に乗り換えたあとの都区内の移動(200円程度)を考えれば、先述したJRの普通・快速列車を使う方法より安く・速く移動することができる。また青砥で押上方面の列車に乗り換えれば、アクセス特急同様に都内各所への移動も困ることはない。
デメリットはアクセス特急と同様、使用車両がありふれた通勤車両ということ。なおかつアクセス特急に比べ混雑が激しいことだ。特にこの路線は空港職員の通勤ルートになっていることが多く、ほかの路線では都心に向かう列車の混雑はまれな夕ラッシュ時にも、意外と通勤客の乗車がある。
番外編1 東成田線
ここまで成田空港駅・空港第2ビル駅の両駅を発着する列車を取り上げてきたが、成田空港にはもうひとつの駅が存在する。正体はかつての成田空港駅で、現在は「東成田駅」として使用されているものだ。
この駅へのアクセスは意外と容易で、T2地下1階から地下通路を5分ほど通れば改札にたどり着くことができる。また空港連絡バスの停車駅にもなっており、バス停からすぐのところに駅の入口がある。
朝夕に数本上野方面への直通列車がある以外は40分に1本の普通列車だけが走る東成田駅だが、この駅を利用すると運賃が少し安くなる。といっても、京成上野~東成田が990円(IC982円)と、そう大きくは変わらない。ふつうは空港利用者に使われない駅だが、隠れ家的な魅力をはらむ駅だ。
番外編2 交通手段を組み合わせ、もっと安く行く方法
ここまでは都心から原則として単一の事業者(路線)を利用する前提で話を進めてきたが、どれだけ時間をかけても最安値で行きたい各氏のために、この章を設けた。かなりギークな話になるので、興味のない方は次の章まで飛ばしていただいて結構だ。
まずは上野・日暮里始発の最安値だが、これは先述した東成田経由の982円だろう。おそらくこれが、東京山手線内の各駅での最安値だと思われる。
また東京メトロを利用できるほとんどのターミナル(東京・新宿・渋谷・池袋)に関しては、西船橋(東京メトロ)―京成西船間の徒歩連絡を活用した1,044円(池袋・目黒などは1,075円)が最安だろう。東京メトロの運賃はどこまで行っても330円までしか上がらないのだが、西船橋~大手町の時点で20.1kmと300円区間に入ってしまっているため、このようなことがおこっているとみられる。そこから8km乗っても30円しか上がらない東京メトロの長距離逓減っぷり、恐るべし。
少し厄介なのが品川発着の場合である。ご存じの通り東京メトロの路線が1つもない品川駅では、上記の「伝家の宝刀」は使えない。ではどうすればいいか。
答えは至極簡単だ。都営地下鉄の料金制度を使えばいいのである。
こちらは東京メトロより少し高いとはいえ、長距離逓減はそれと同様にかなり効くものとなっている(46km乗っても430円!)。
これを利用して都営地下鉄の最東端・本八幡まで向かい、少し歩けば京成八幡駅が見えてくる。そこから東成田まで乗れば、総額1,157円。ほかの駅に比べ少し高くはなるが、単一路線を使うより安く移動することができた。
ちなみに地下鉄各線の通っていない山手線内各駅からはJR線と京成線のコンビネーションが最安とみられるが、その乗換駅はおそらく距離に応じて決定されるとみられる(確認出来る限りではJR本八幡―京成八幡、船橋―京成船橋、酒々井―京成酒々井の3パターン)。
② バスを使ったアクセス
バスを利用するうえでのポイントは以下の通り。
さまざまな駅・遠方からも直接向かうことができる
確実に座って移動できる
荷物をトランクにしまえば、気にする必要がない
どのターミナルへもそのまま移動できる
渋滞などにより定時性が失われることがある
バス路線はターミナルの配置上往復ともにT3→T2→T1の順で停車するため、特に第3ターミナルを利用する場合、鉄道よりも速く到着できる場合がある。
成田空港に乗り入れているバス路線の一覧は、成田空港公式HPから確認できる。目的地へのルート検索・交通手段ごとの料金比較も可能なので、バスを利用する/しないにかかわらず便利なサイトだ。
1. 高速バス
高速バスは、都内の様々な駅から発着する便利な交通手段である。単に山手線内の各ターミナル駅やバスターミナルからだけではなく、郊外の駅やアウトレット・ディズニーランドなど、さまざまな場所から空港までアクセスできる。ほぼすべての路線で座席指定制度がとられており、発車時間までにバス乗り場に行けさえすれば、確実にバスに乗ることができる。
東京の外からのアクセスもまた魅力だ。広く北関東や長野・仙台まで路線を伸ばし、その需要をカバーしている。これらの県から成田空港まで鉄道で行くならば乗換が不可欠なだけに、その需要はある程度あるようだ。
一方で乗車料金はあまり安くない。たとえばバスの一大拠点・東京シティエアターミナル (TCAT) へ向かうバスは通常価格で3,100円と、鉄道と比べて高額である。そのほかの都心拠点についてもその前後の価格帯が多く、都内へのアクセスという面では一般的に割高だと思われる。
ところが都心からある程度離れた地点(横浜・多摩センターなど)と成田空港の間は3,500-4,000円ほどと、都心からの料金、また鉄道利用時と比べさほど変わりはない。所要時間こそ鉄道に劣るが、直接空港まで乗りつけたい顧客にとってはこの場合たしかに魅力的だ。
2. LCB (Low Cost Bus)
成田空港方面のバス全てが高いというわけではない。都内の主要駅(東京・池袋)や川口・赤羽・豊洲からは低価格を売りにした "LCB" が成田空港に向かっている。成田空港内にもLCB専用のカウンターが設けられるほど、この市場は活況のようである。
特に人気のあるLCBが、東京駅八重洲口発着のものだ。私が乗ろうとした際には60人以上の利用客が並び、10分おきに出発するバスの順番を待っていた。LCBの中では安さがとびぬけており、ここから成田空港までは1時間強で1,300円。これはN'EXの半額で、なおかつ時間もそれほど変わらない。T3を利用する場合はなおさらだ。
これは余談だが、どうやら韓国ではコロナ前に「1,000円バス(注: 2020年以前このバスは1,000円だったらしい)」として知られていたらしく、実際に並んでいるのは韓国人観光客がほとんどだった。
預入荷物が1つまで(3辺で158cm以下)、東京駅・豊洲市場行きに関しては乗車予約ができないという欠点こそあるが、従来の高速バスに比べだいぶコスパのいい交通機関だ。
③ その他の方法を利用したアクセス
1. トヨタレンタカー「片道GO!」
「片道GO!」とは、遠方に乗り捨てられた車を決められた地域に指定時間内で回送することとひきかえに、安い料金で車を片道利用できるサービスである。このシステムを使うと、最安2,200円(費用別途)で、成田空港を含む東京まで利用可能だ。
まずは下記リンクから、現在借りられる車の出発店舗と車種を確認しよう。返却店舗に「トヨタモビリティサービス 返却可能店舗」とあれば、その車種は成田空港店で返却可能なものである。ぜひお試しあれ。
2. タクシー
都心(23区+武蔵野市・三鷹市)⇔成田空港は、出発1時間前までに予約することによりタクシー料金に定額運賃が適用される。これはどの会社で予約しても変わらず、発着するゾーンにより片道19,000-27,000円で運賃が変動する。ただしこれに加え(原則として)高速道路料金もかかるため、実質的にはこの価格より数千円上乗せされた代金が請求されるだろう。
参考までに載せておくと、首都高箱崎IC~新空港ICまでの高速料金は2560円である。
おわりに
いかがだっただろうか。休日の思い付きで書き始めた検討も、気づけば7,000字ぐらいに膨れ上がっていた。個人的には、なんやかんやでわからずじまいだった都心から成田空港までの最安値を体系化できたことが一番の収穫である。
もしこの記事が誰かの役に立てたのであれば僥倖だ。
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