【展覧会レポート】白髪一雄 + 金山明 「プラス・マイナス 生誕100周年記念展 」
東京・青山のファーガス・マカフリー東京で、戦後日本美術における重要な動向である「具体」を代表するアーティスト白髪一雄と金山明の2人展が開催中だ。会期は12月28日まで。
白髪一雄 + 金山明 「プラス・マイナス 生誕100周年記念展 」概要
東京・青山のファーガス・マカフリー東京で、「具体」を代表するアーティスト、白髪一雄と金山明を取り上げた展覧会「プラス・マイナス 生誕100周年記念展 」が開催中だ。
具体とは、戦後日本美術を代表する前衛芸術集団のひとつだ。
1954年に吉原治良を中心に立ち上げられた「具体美術協会(具体)」という前衛的なアーティスト集団を指す。
「人のまねをするな」という吉原の指導の元、若いアーティストたちは独創的な作品を発表した。
その具体においても、重要なアーティスト白髪一雄と、金山明の良品がみられる展覧会である。
美術館ではなくギャラリーなので、展示されている作品点数は少ないが、無料でみることができる。
タイトルにもある「プラス・マイナス」は白髪一雄の提唱した概念で、白髪と金山のアートへの興味が異なっていたことから、白髪が考え出した理論だそうだ。
白髪は、アクションや感情表現に重きを置く、アメリカの抽象表現主義やフランスのアンフォルメルなどに代表される「熱い抽象」に、一方の金山は合理的で幾何学的な表現、モンドリアンに代表されるデ・ステイルや、バウハウスやピュリスムといった「冷たい抽象」に興味をもった。
そうした対極の志向をとことん突き詰めようと考えられたのが「プラス・マイナス」だという。
プレスリリースから説明を引用する。
調べてみると、「白髪一雄 オーラル・ヒストリー」というインタビュー記事が出展のようなので、こちらもあわせて読んでみると面白いと思う。
アートマーケットでも非常に評価の高い60年代の作品もみられるので、ぜひ立ち寄ってみるとよいだろう。(値段は聞かなかったが、プライマリーギャラリーで販売するとなると、億近い価格をつけているかもしれない。)
具体の作品の値段についても、面白いので、いつか書けると良いと思う。
会期は12月28日まで。
白髪一雄 + 金山明 「プラス・マイナス」展のみどころ
全体の構成
全体の構成は二部屋に分かれており、一部屋は白髪一雄の大作が、向い合せの壁に2点展示され、残る一つの壁には65年の金山明の作品が展示される。古い作品が中心の部屋だ。
もう一部屋は、80年代の作品も展示され、少し時代が下った作品が展示されている。部屋ごとにその作風の変化も楽しめるだろう。
60年代の白髪一雄作品
「地妖星模着天」は1960年の白髪一雄の作品。
足で描いたと思われる大胆な筆致で、朱色とも言えるような赤と黒が混ざり合っている。油絵の具が乾き、何十年も経た落ち着いた質感は、黒をより奥深い色にしている。
画面に寄ってみると、描かれた当時の絵の具の盛り上がりや、勢いはそのままに、年を経た油絵の具が落ち着いた色合いを見せている。
60年代の金山明作品
「Untitled」は1965年の金山明の作品。
黒い地にオレンジ、更に黒で円のようなかたちが描かれ、その上から赤の絵の具の筆致が画面全体を幾度も往復する。赤の絵の具の層は幾重にも重なり合い、下の層の色を隠している。
赤い色の筆致は何度も行き来しており、勢いに任せて描かれたものではなさそうだ。
金山はリモコンカーをもちいて、無数の線を描く手法を使ったことで知られるが、この作品もこの手法で描かれたものだろうか。
画面を近くから見ると何度も線が重ねられ層をなしていることがわかる。
金山の「Work, 1961」でも、幾度も重ねられた線が、色の塊となって迫ってくる。
激しい感情のままに描きつけたような線ではなく、何度も何度も行き来するような線が重なっている。
1980年代の白髪一雄作品
もう一方の部屋は、少し時代が下った作品が多くなる。
白髪作品は使用している画材の変化からか、作品の質感は60年代以前とは全く異なる印象をもつ。
日本の前衛の表現を見直す
具体を代表する二人のアーティストの表現の違いを、ゆっくりと鑑賞できるいい機会だ。貴重な古い作品を前に、同時代を生きた二人のアーティストが何を表現しようとしたのか立ち止まる機会になるだろう。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました!