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【読書メモ】『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(著:マーティン・ファクラー)

世界でも稀に見るこの組織は、英語圏では「kisha club」「kisha kurabu」と呼ばれる。あまりにも特異すぎて、翻訳語が存在しないのだ。

出典:『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF)が発表した2024年の世界各国の報道自由度ランキングで、日本は前年から2つ順位を下げて70位だった。先進7カ国(G7)で最も低くく、SNSでは「こんなに自由に政権批判できる国は珍しい」などと疑問視する声が相次いでいる。民主党政権時の2010年は12位で、14年間で急落した状況に違和感を唱える声もある。

民主党政権時代を巡っては、フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんが5日放送の読売テレビ系の討論番組「そこまで言って委員会NP」で、「民主党が政権取った以降の印象では、けっこう大臣クラスや政治家から、番組に電話がかかってきて『あのキャスター黙らせろ』『謝罪しないと困る』と言ってくる感じがあった」と暴露。「第2次安倍政権になってから全然来ない」と振り返った。

出典:「報道自由度70位に疑問の声「こんなに政権批判できるのに」 民主政権時の上位に違和感も」
(『産経新聞』2024年5月7日)

前年よりも順位を下げて70位、14年前の12位から考えると急落もいいところですが、、その割に好き放題に、特に政権与党でもある自民党に対しては罵倒クラスの報道が繰り返されているとの実態との乖離を感じますが、どうもからくりがあるようです。

報道の自由度ランキングの日本に関する詳細報告では、「メディアの状況」の項で電波利権の問題、「政治的背景」の項で記者クラブの問題、「経済的背景」の項でクロスオーナーシップ(テレビ局と新聞社による相互持ち株制と法的保護)が書かれていました。

ところが、朝日新聞は記者クラブについての部分には触れているものの、電波利権やクロスオーナーシップの問題に触れずにそれ以外の部分を報道しています。

出典:「報道の自由度ランキング2024、日本は電波利権・記者クラブ・クロスオーナーシップが問題視、朝日新聞が一部触れずに報道」
(「事実を整える」2024年5月4日)

「X(旧:Twitter)」でもフォローさせていただいている「Nathan(ねーさん)(@Nathankirinoha)」さんのブログからの引用となりますが、日本のオールドメディア群がひた隠しにする「記者クラブ、クロスオーナーシップ」がランキングを下げている要素でもないのか、との点を、事実ベースで丁寧にまとめられている内容になります。

前年より数値(Score)が下がっている「政治的指標(POLITICAL INDICATOR)」や「経済的指標(ECONOMIC INDICATOR)」あたりがそれぞれ「記者クラブ」や「クロスオーナーシップ」に該当するのかな、何点か該当する箇所を(Google翻訳付で)ピックアップしてみたところ、、

However, traditional and business interests, political pressure and gender inequalities often prevent journalists from completely fulfilling their role as watchdogs.
- しかし、伝統的な利益やビジネス上の利益、政治的圧力、男女の不平等により、ジャーナリストが監視者としての役割を完全に果たすことができないことがよくあります。(Google翻訳)

出典:「Japan」
(「REPORTERS WITHOUT BORDERS(RSF)」ホームページより抜粋)

The system of kisha clubs (reporters’ clubs), which allows only established news organisations to access press conferences and senior officials, pushes reporters toward self-censorship and constitutes blatant discrimination against freelancers and foreign reporters.
- 記者クラブ(記者クラブ)の制度は、既成の報道機関のみが記者会見や高官へのアクセスを許可しており、記者に自己検閲を促すものであり、フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別となる。(Google翻訳)

出典:「Japan」
(「REPORTERS WITHOUT BORDERS(RSF)」ホームページより抜粋)

Japan does not regulate against the cross ownership of newspapers and broadcasting groups, which has led to extreme media concentration and the growth of media groups of considerable size, sometimes with over 2,000 reporters.
- 日本では新聞と放送グループの相互所有に対する規制がないため、極度のメディア集中と、時には2,000人を超える記者を擁するかなりの規模のメディアグループの成長につながっている。(Google翻訳)

出典:「Japan」
(「REPORTERS WITHOUT BORDERS(RSF)」ホームページより抜粋)

なんてことはない、日頃「機会均等」だの「人権」だ「ジェンダー」だのと喧しくしている日本のオールドメディア自体が「既得権益、政治圧力、男女不平等」を体現してしまっているという歪なお話が浮かび上がってきているだけにしかみえないのですが、、

むしろ、他メディアから指摘を受けているとの事はある意味で広義でのメディアの自浄作用とも見てとれますが、、にもかかわらず『産経新聞』も含めて日本のオールドメディアがその点に言及していないことに、なんとも暗澹たる気分になってしまいながら思い出したのが、『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』との一冊。

著者のマーティン・ファクラーさんは、wikiベースでの経歴を拝見する限り、いわゆるリベラル左翼的な動きをされている方のようですので、個人的には思想的には真逆に位置する方と見ています。

ただ、こちらの一冊は「記者クラブ」のいびつさから始まる日本の新聞への提言として、発行された2012年当時、非常に「読ませる」内容だったのを覚えています。丁寧な切り口とまとめ方で、こういう内容であれば一読の価値があるなぁ、といった感じで。

ジャーナリストとは、基本的に権力寄りであってはならない。(中略)権力と市民の間に立ちながら当局を監視し、不正を糺していく。

出典:『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』

この基本理念こそがオールドメディアが第四の権力と呼ばれる所以と思いますが、果たしてこの原則(プリンシプル)を貫いているオールドメディアは、今の日本にどれだけ存在しているのでしょうか。

新聞にとって最も重要な財産は読者からの信頼だ

出典:『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』

例え広告主であろうと、自身の理念と異なるのであれば喰らいつく、そんな「反骨心」が、ジャーナリストには必要とされると、そして大事なのは読者だと、そう述べられています。

自らが疑問を抱き、問題を掘り起こすことはなく、何かしらの「お墨付き」が出たところで報じる。

出典:『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』

自分の言葉で考えられず、表現もできない、、サラリーマン記者である以上は仕方ないのでしょうか。専門職の矜持ではなく、ルーチンで回すだけの記事に魅力が無くなっていったのもある意味、必然だったのでしょう。

オンリーワンの記事を読みたいからこそ、読者はニューヨーク・タイムズを手に取ってくれる

出典:『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』

「オンリーワン」の記事を出せなくなっていったオールドメディアの行き着く先は、、まぁ、10年が過ぎた今現在(2014年)、この要件に応えられていない日本の既存メディアの惨憺ぶりは、言をあらためる必要もなく。

記者やカメラマンの手を借りることなく、自らがニュースの発信者としてチャンネルを開いた

出典:『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』

既存オールドメディアに寄らないそのチャンネルとして、2012年当時から見るとインターネットやブログ、各種SNSはすっかりと定着してきています。この流れは今後も変わらないだろうなぁ、、と、テレビにも新聞にも目を通さない息子を見ながら、サブスクやSNS経由でのニュースは見ているようですが、、スポーツもアマプラとかアベマが頑張ってるしなぁ。

記者クラブメディアの本当の被害者は、私たち海外メディアの記者ではない。(中略)一番の被害者は、日本の民主主義そのものだ。

出典:『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』

今現在(2024年)、読み手の信頼に根差した発信者の強みは2012年時よりも実感するケースが増えてきていますが、その大半はインターネット経由でのメディアとなります。最近だと「X(旧:Twitter)」で知って、ブログや note などで深堀していく、なんてことが多いです。

個人的には、人々が主体的に考え、判断し、行動していくのが、民主主義社会の理念の一つであり、それを実現していくために必要な知識や情報を提供する社会的基盤であるのが「ジャーナリズム」で、その実行者が「ジャーナリスト」なのだと思いますが、さて、それを実現できている方々は既存オールドメディアにはどの程度、残っておられるのでしょうか。

横並びの偏った記事が紙面を埋めることになるのだが、それでは読者に有益な情報を伝えられないばかりか、誤った認識を与えてしまう危険性すらある

出典:『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』

それだけに、恣意的に統制された、フィルタリングされた情報などただの害悪でしかないかと。オールドメディアの中の人々に上から目線で導いていただく必要などない、人々が主体的に歩んでいくための一助となればよい、「情報サービス」とはその辺りの原則を踏まえるべきと思いますが、、なんて、安倍さんが暗殺された時の「横並び」に嘆息しながら、、マーティンさん、日本のオールドメディア達の安倍さん暗殺報道に対してどのような反応をしていたのだろうか、探してみようかな。

さて2012年当時、至極まっとうなことを考えさせてくれるヒントが根拠と共に示されていて、一気に読めてしまいましたのを覚えています。ただ一点だけ奇異に映ったのが、何故か朝日新聞が繰り返している捏造問題には一言も触れようとしていなかった点でしょうか。他の大手新聞については概ね事例を挙げながら指摘しているにもかかわらず、です。

朝日新聞、ニューヨーク・タイムズ両社が提携していることもあったのか、とも思いますが、この点についてジャーナリズム精神が発揮されていなかったのを残念に感じたのを覚えています。

個人的に、ここまで丁寧な取材をされているのであれば「アサヒる朝日新聞とその不愉快な仲間たち」を知らないはずはないと思いますが、、まぁ、そのダブスタ(相手で出し入れする反骨心)っぷりは、ある意味で日本におけるリベラルを僭称する左翼の様式美でもあるので致し方なしですかね、今でも同じなのかな、図書館で何か探してみようかな、、なんて思いながら。

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